実家に着くと、母はそう言いながら朝ごはんを並べていました。
食卓に並んでいたのは赤飯でした。
誕生日に何が食べたいか聞かれると、必ず「赤飯」と答えていた頃を思い出します。
実家を離れて暮らしていた私は、月に二回は帰省する約束をしていて、意識して時間を作り、家へ戻っていました。
仕事の都合で、朝ごはんを食べずに向かう日もあります。
それでも実家に帰れば、食事の心配をすることはありませんでした。
いつもの光景
玄関を開けると、炊飯器の音や、湯気の立つ台所の気配が目に入ります。
私が実家に着く時間を見計らって、母は台所に立っていました。
「帰りに持って帰ったらいいわい」
そう言って、折詰にして渡されることもあります。
「思うように動けんなったんよ」
母はそう愚痴をこぼします。
それでも帰省のたび、何かしら用意して待っていてくれたのです。
その様子を見ても、私は深く考えることはありませんでした。
ただ「ありがたいな」と思う程度で、その時間を特別なものだとは感じていなかったのです。