◆揺れるカラビナが女子高生の“顔”をかすめて
松本まゆさん(仮名・40代)が目撃したのは、朝の
通勤ラッシュでの出来事だった。
「月曜日の朝で、電車内は最悪の混雑でした」
目の前に立つ30代ほどの男性は、大きなリュックを背負ったまま。問題は、そのリュックについた“金属製の大きなカラビナ”だった。
電車の揺れに合わせてぶらんぶらんと揺れ、その先端が後ろに立つ女子高生の顔すれすれを何度もかすめていた。
「身長150センチくらいの、華奢な子でした。逃げ場がない状態で、ただ耐えているように見えました」
見ているだけで痛々しい光景だったが、松本さんは声を上げられなかった。
「トラブルに巻き込まれたくない気持ちが勝ってしまいました」
そのときだった。
「おい、リュック前に抱けや! 後ろの子に当たっとるやろ!」
40代ほどの男性が声を張り上げたのだ。しかし、リュックの男性は完全に無視。電車内には気まずい空気が流れた。
◆ホームでまさかの転倒
次の駅でドアが開き、乗客が一斉にホームへ流れ、リュックの男性も押し出されるように外へ出た。
「やっと終わると思いました」
しかし、その男性は再びリュックを背負ったまま、電車に乗り込もうとしたという。
「なにやっとんねん!」
先ほどの男性が立ちはだかり、押し合いの喧嘩に発展。周囲が息をのむ中、男性はリュックを下ろし、拳を振り上げた。
その瞬間、足をもつれさせて派手に転倒。その拍子に、自身のリュックについていた“カラビナ”がみぞおちに当たったそうだ。
「うっ……」
うずくまる男性のもとに駅員が駆けつけると、周囲から事情を説明する人が現れた。
「ウソのような展開でしたけど、因果応報ってこういうことを言うのかなって、不謹慎ですが思ってしまいました」
電車では個人の
マナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。