【動画】腫瘍を狙い撃ち《進化する放射線治療》日立「オクスレイ」の全貌放射線治療の最前線“週末2回照射”で癌に勝つ!?

宮城・多賀城市で不動産業を営む木川田明弘さん(72)は、2025年4月、初期の前立腺癌が見つかった。木川田さんは、この7年間で食道癌と咽頭癌も経験。働きながら闘病生活を続けている。
この日、木川田さんは、癌治療で高い実績を誇る「東北大学病院」(宮城・仙台市)へ。
外来がお休みの土曜日に行われる「週末放射線治療」を受けることに。
この病院では、前立腺癌の放射線治療は20回が標準。しかし、この治療ならたった2回で済むため、働いていたり遠くに住んでいたりする患者も受けやすい。

2回の照射で前立腺癌の治療を可能にしたのが、スウェーデン、エレクタ社製の放射線治療装置。この装置にはMRIが内蔵されており、腫瘍の大きさや位置をその場で確認しながら照射できる。
「この治療装置は、正確にピンポイントに放射線を打てる。周囲の臓器への影響をあまり気にしなくて良くなったので、1回で強い放射線を打つことができるようになった。放射線治療は、AIを含めたデジタルの発展の恩恵を受ける。20数年でここまで変わるのかというぐらい進化を遂げた」(東北大学病院 放射線治療科 教授 神宮啓一医師)。

治療は1回約1時間で、2回の照射で済むため、従来の治療より40万円ほど安くなるメリットも。現在この病院では、初期の前立腺癌にだけ使われている。治療を受けた木川田さんは、「(4日後)ゴルフに出ようかな。今から練習しても大丈夫そう」と笑った。
欧米では癌患者の50%以上が放射線治療を選ぶのに対し、日本は約25%に留まっている。
日立が挑む“悲願の国産復活”新たな放射線治療装置

2025年4月に横浜市で開催された最新医療機器の展示会。国内外のメーカーが参加し、自社製品をアピールするが、会場でひと際目を引くブースを構えていたのが「日立ハイテク」だ。
最大の売りは、高精度放射線治療装置「OXRAY(オクスレイ)」。この分野から日本メーカーが相次いで撤退するなか、7年ぶりのメード・イン・ジャパンだ。

日本が生んだ最新鋭の医療装置、オクスレイの特徴の一つが「動体追尾」機能。呼吸などで常に位置が動く癌を追い続けて、狙い撃ちする。さらにもう一つ、大きな武器が。
「ぐるっと回っていろいろなところからビームを打つ、同時にリング全体がひねるように動くことができる。2軸で回転できるのが特徴。腫瘍に対して治療の放射線を集中させられる」(日立ハイテク 主任技師 吉田光宏さん)。

従来の装置は、リングの内側を照射口が回転するだけだったが、オクスレイはそれに加えて、土台部分も回転。2軸回転と動体追尾機能を同時に持ち、さまざまな角度から癌を狙い撃ちできるのはオクスレイだけだ。

一方で、オクスレイは回転する土台が大きく、放射線治療室の床下を掘り下げるなど改装が必要になることも。そのため導入には、数億円以上かかる。
現在オクスレイが導入されている病院は、全国に12カ所。ほとんどが3大都市圏に集中している。

2025年7月、「宇治徳洲会病院」(京都・宇治市)でも、オクスレイを使った乳癌の治療が始まっていた。放射線治療を受ける患者で、一番数が多いのが乳癌。手術後、体内に残った目に見えない癌細胞に放射線を照射し、治療する。
治療を指揮するのは、京都大学名誉教授 放射線治療センター長の平岡眞寛医師だ。
「従来の治療だと、心臓や肺にも(放射線が)当たる容積が大きい。健康な乳房まで放射線が当たるリスクがあった。オクスレイの技術なら、部分を限定して照射できる。心血管に対する照射を避け、健康な乳房への照射を避けることが可能になった。非常に大きな進歩だと思う」。

オクスレイは、「京都大学医学部附属病院」と「日立ハイテク」との共同開発によって生まれた。
2025年8月下旬。この日は、両者による2カ月に1度の定例会議で、日立ハイテクの吉田さんは、放射線治療科 教授 溝脇尚志医師から現場の声を聞く。
すると一人の医師から、動体追尾に欠かせないマーカーが認識しにくくなるとの報告が。
マーカーとは、体内に埋め込む小さな金属片のこと。マーカーを腫瘍近くに埋め込み、それを目印にすることで動体追尾照射が可能になるが、特に肺にできた腫瘍に照射する際、マーカーが認識しづらいケースが生じていた。
医師は「不連続に飛ぶので、連続性を考えたアルゴリズムになったら、もっと良くなる」とアドバイスする。

日立ハイテクの研究開発施設(千葉・柏市)では、京大からの指摘を受け、吉田さんを中心に対応策が練られていた。この日は、人の呼吸をダミーで再現し、動体追尾の実験を行うことに。日本の医療安全保障の面でも重要な国産装置の実力は…。
患者の人生を守れるのか…「味覚」を残す咽頭癌治療

2025年9月下旬。オクスレイによる放射線治療を受けるため、イラストレーターの空川架空さん(40)が、がん研東病院に入院した。空川さんは2024年8月、39歳の時に中咽頭癌が見つかったが、この病院の放射線治療科を選んだのには、明確な理由があった。
「手術で喉を切るのは絶対にやりたくない。手術しないですませたい」。
中咽頭癌の標準的な治療の一つは、35回の放射線照射と抗がん剤の併用。オクスレイによる中咽頭癌の治療は、空川さんが世界初だ。
治療前、まずは動いて照射ポイントがずれないよう、あらかじめ型を取った器具で首から上を固定。その後は、1回約5分間、放射線が腫瘍を狙って照射。放射線が当たっている間、どのような感覚があるのか。
「感覚的には何も感じなくて、ただ時間がたつのを待つ感じ」(空川さん)。

オクスレイによる的確な癌への照射には、大きなメリットがある。
「大きくがばっと取る、大きく放射線を当てることによって癌が治る可能性は高いが、そうやって治してしまうと、後の生活で“味が分からない、唾液が出ない、話がしづらい”と、いろいろな生活の不具合が出てしまう。オクスレイを使った最新鋭の放射線治療を施すことで、その後の人生を最大限守ることができる」(全田貞幹医師)。
空川さんのオクスレイによる治療。その先に待っていたものとは――。
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