スノーボード日本勢がまたもやってくれました。
ミラノ・コルティナ五輪大会15日目、順延などもあってこの日にダブルで行なわれた男女のスロープスタイルにて、男子の長谷川帝勝さんが銀、そして女子の深田茉莉さんと
村瀬心椛さんが金・銅のワンスリー。一日で日本に金銀銅がワンセット揃うというめでたき日となりました。おめでとうございます!
そんなよき日を少しボンヤリした気持ちで過ごすのももったいないのですが、これで4年が終わってしまったのかと心が止まるような気分になりました。この大会、心のなかでいくつか祈っていたことがありました。梨沙羅さんにメダルを、できれば混合団体のメダルを獲ってほしいな、みたいなことを。そのひとつとして、この
スノーボードの女子ビッグエアとスロープスタイルに出場した岩渕麗楽さんにメダルを獲ってほしいと祈っていたのです。そして、それは叶わなかったんだなと思ったのです。
平昌五輪ではビッグエアで予選3位からの決勝4位。北京五輪ではスロープスタイルで予選14位から決勝5位。そしてビッグエアでは予選3位からの決勝4位。北京のビッグエア決勝は予選で左手を骨折したなかでのランでしたが、1本目・2本目美しいランで暫定2位となる瞬間もありました。ただ、その直後にミラノ・コルティナでもメダリストとなった
村瀬心椛さんとゾイ・サドフスキシノットさんに連続でかわされました。メダルを狙うには1本目・2本目と同じ技ではおそらく難しく、もっと高得点を狙える技、しかも左手は満足に使えない、そんな条件で繰り出されたのがあの記憶に残る
トリプルアンダーフリップでした。惜しくも転倒となった岩渕さんに駆け寄る仲間たちの姿、それは北京五輪を代表する美しい場面のひとつでした。感動的でした。本人にとってどうであるかは、さておき。
最終的に北京で金となったアンナ・ガッサーさんがこのトリックに対して「私の順位が下がっても構わない、着地してほしいと思いました」と敬意を表したのを見ながら、そんなあたたかい世界を皆が美しいと讃えるのを見ながら、ご本人が「最高の誉め言葉です」と笑顔を見せるのを見ながら、僕の心は古く汚れているのか、キラキラした気持ちが何だか錆びついていくようで、そうはいっても、と思ったのでした。記憶より先に記録に残りたいのが人情じゃないのかしら、とか。銅の位置から金を狙った挑戦なら笑顔で終えられるかもだけどさ、とか。そして、もう一度五輪に挑戦するのなら、今度こそはどんな形でもメダルを獲って、報われてほしいと思ったのです。暖かい家のなかから、特に何の手助けをするわけでもないのに、いっちょ前に。
その後、岩渕さんは北京で決め切れなかった
トリプルアンダーフリップを別の試合で見事に決め、X GAMESで優勝し、世界選手権でもメダルを獲得し、世界に名だたるキャリアを築きました。五輪のメダルがあろうがなかろうが素晴らしい選手として名を残すキャリアに見えました。でも、どうしてもどうしても、なのでしょう。この五輪に向けて、岩渕さんは通っていた大学を休学し、練習場所の近くに
引っ越し、積み重なる怪我や痛みを乗り越えながらここに懸けてきていました。金メダルが欲しいという大きな夢と、メダルを獲れていたら今はやっていないかもしれないと漏らす無念と、両方を滲ませながらここまできていました。選手なら誰しもがそうなのかもしれませんが、何だか肩入れするような気持ちになってしまいました。三度目の正直でいいじゃないか、と。10位や20位ならこんなこと言わないけれど4位・5位・4位だよ、と。報われさせてやってよ、と。
迎えたビッグエア決勝の日。それはもう眩しくて鮮烈でした。
1本目、岩渕さんは82.75点という高い得点を出し、メダル圏内の3位としました。満点に近い、いい展開でした。もう1本、別の回転で高得点を出せばいい。チャンス2回で1本決めればいい。メダルに挑むに足る地ならしができました。しかし、2本目フロントサイド1440に挑むも決まらず。3本目、同じフロントサイド1440に挑むも腹ばいで転倒。メダルを獲るためには89点ほどが必要ということで、攻めるしかない状況でしたが、決められませんでした。今大会はジャンプ台が少し小さくスピードが出にくいといった話があり、日本代表でも特に小柄な岩渕さんは難しさを感じる環境であったよう。地ならしまではできたけれど、またも挑戦は実らなかった。
これがたったひとりの日本代表であれば、と思いました。試合自体はとてもいい試合で、1本目を見事に決めたのちにメダルに向かって必要な大技に2度挑んだのですから、あとはもう決めるだけでした。決められませんでしたが、それは自分のチカラによるもので、出し切れなかったとか無念が残るとかそういう性質のものではないだろう、そう思いました。叶わなかったけど勝利へのプランはやり切ったのですから、少しの納得もあるだろうと。でも、たったひとりの日本代表ではなかったわけで。すぐそばには金メダリストがいたわけで。銀も銅ももちろんいますけど、同じ国から金メダリストが出て、そこにみんなのお祝いと喜びと注目が向かっていくわけでしょう。それを妬むも恨むもできるわけもなく、ただただこの4年も届かなかったな、またこの形だなと、と受け入れるしかないんだろうな…などと我が身に置き換えながら想像すると、「肩入れしてしまったな…」と僕もうなだれるわけです。眩しくて。鮮烈で。その対比で。
そして、スロープスタイルの決勝。ビッグエアより難しい挑戦になるかもしれませんが、「決めれば」の期待はもちろんあります。予選は4位で通過しました。メダルにはここからもう一段上げる必要があったけれど、3本のランで1本採用ですから、たった一発でいい。この4年のなかで最後に一発、会心のランが出ればいい。そう思った矢先の1本目、岩渕さんは最初のセクションのレールに乗るときにボードを当ててしまい、不十分な形でレールに乗ったことで、レールを下りるときに転倒してしまったのです。転倒すればこのランはメダルに届くものにはなりません。勝負の大技で転倒したのであればまだしも、最初のレールで転倒させるだなんて。何を意図した試練なのかと神様に苛立ちました。
2本目、途中レールから早く落ちる場面などもありつつ、アンダーフリップやスイッチバックロデオなど縦回転もまじえる個性的なランで悪くない滑りです。最後の大きなジャンプ台、岩渕さんの選んだトリックはフロントサイドのダブルアンダーフリップでした。北京の軌道に似たアンダーフリップでした。しかし、このジャンプ台では飛距離・高さが出せず、着地できずに転倒。最後の3本目も同じ構成を狙っていきますが、今度はロデオの着地が半回転ズレてしまい、以降のトリックにつなげることができなくなりました。これでもうメダルに至る高得点は望めないと察したか、終盤は出し尽くすこともなく穏やかにゴールへと向かうような滑りに。2本目より得点こそ伸ばしますが、滑り終えた時点で8位。どうしてもどうしてものメダルには届かないことが決まりました。一緒に出場した日本勢は素晴らしいランで暫定1位と2位につけ、最終的に金と銅に至るという途方もない眩しさのなかで、僕はそれに浮かれまくる気持ちにもなれず、また「肩入れしてしまったな…」とうなだれたのです。
試合後の岩渕さんの
インタビュー、「気持ち的にはやり切れた」「キャリアについては少し考える部分はある」「この経験は今後に向かっていいものになっていく」「努力が報われるだけじゃないなっていうのを改めて痛感できたオリンピックだった」といった言葉たちには、少し思うところもありそうな感触でしたが、終始笑顔で受け答えし、3大会連続入賞について触れられたときには大きくふき出すような笑いもこぼれました。三大会連続入賞に触れていいのか僕が聞き手なら迷いそうな場面でしたが、触れて、笑顔を見せて、「また頑張ります」で締めてくれたのは、何よりだったと思います。
この日は男女スロープスタイルで金銀銅ということで、メダリストは慌ただしくお祝い行脚などに励むのだろうと思います。夜もあまり寝られないまま、早朝から各局で見事に決まった着地などを振り返るのだろうと思います。ビッグエアではメダルに至らなかった人もここで新たにメダルを手にするような展開で、喜びの輪もさらに広がるのだろうと思います。それが眩しく、華やかで、帰国後の会見なども
スノーボード勢がセットで動くんだろうなぁなどと思うと、何度目かになる「肩入れしてしまったな…」がやってくるのです。
もう止めよう、4位に肩入れするの止めよう。
獲る人はいきなり獲るし、1回目で獲るじゃないか。
4位とメダルは結構差があって、惜しいはそんなに惜しくないんだ。
頭ではそんなことを考えるのですが、またこうやって4位とか5位とかの人に肩入れしてしまうのだろうと思います。そういう性分なのだろうと思います。そうやって見る五輪は、ほとんどの場合において不都合で苦しいのですが、それが好きなんだろうと思いました。次回はこんなに眩しい日がない大会だといいなと思いつつ、きっとまた同じように「肩入れしてしまったな…」とうなだれるのでしょう。まぁ、そんな観衆もいるということで、肩入れされる側には縁起が悪く、肩入れされない側もそれはそれで気分が悪いかもしれませんが、また僕の性分で肩入れさせてもらえればと思います。どうしてもどうしてものもう一度があったら、また岩渕さんに肩入れしていると思いますので、その際はどうぞよろしくお願いいたします。一関じゃないですが広義の同郷だったりもしますので。
↓日本勢ワン・スリー!五輪の舞台で3人入賞!眩しい結果でした!
4位から8位にも何かメダル型の
お土産ないですかね!
色付きガラス製とかでいいんで、リボンだけ同じやつあげるようにしませんか!
帰りを迎えるほうはわりと色なんて気にしてないんで!
時計とかピンバッジだと気分が出ないのでメダル型のお土産がいいです!
スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム
フモフモ編集長
さまざまなジャンルのスポーツを"お茶の間"目線で語る人気のコラム