いやー、とんだ調子乗りになってしまいました。ミラノ・コルティナ五輪日本勢全体のなかでも金最有力種目のひとつに位置付けていた、スキージャンプ男子スーパーチームはまさかの6位となりました。金どころか銀も銅もなく4位でもなく惜しくも何ともないこの結果には「何らかのギャンブルとかで賭けてなくてよかったー」と思いましたよね。逆に、当てればこの金銀銅3連単はそこそこ高かったかもしれないですけど!
しかし、歴史の目撃者としてあえて言いたい、言い残しておきたい。この6位はイタリアでやっていたからこうなっただけで、本当の結果は銀だったと。あーもしかしたら銅だったかもしれないですけど、「幻の銀」は手の平のなかに確かに入っていました。あとは小林陵侑さんにしっかりと握ってもらうだけだった。日本でやる大会であれば、きっと握れた。僕はそう確信しています。
迎えた決勝の日。今大会のラージヒルの試合結果などを紐解きながら、僕は展開予想などをしておりました。各国2選手が各3回合計6回飛ぶこのスーパーチームの種目。ラージヒルの結果は合計4回のものとなりますが、日本チームの記録は全体1位でした。それにつづくのが出場2選手ともに穴がないオーストリア、そしてノルウェー、その後にポーランドといった様相。ラージヒル金のドメン・プレブツさんを擁するスロベニアも、ノーマルヒル金のフィリップ・ライムントさんを擁するドイツも、パートナーはやや安定感を欠きますので、メダル争いには絡めないかなといった感触です。
ラージヒルのスコアを単純計算すれば、日本は6メートルほどオーストリアを上回って金、メダル圏内という意味でも距離にして15メートルほどの余裕がありましたので、たぶん金が獲れるしメダルは確実と踏んでおりました。調子に乗っていたぶんも加味しますと「1ハラダくらいなら大丈夫」(※ハラダは痛恨の失敗の単位/距離にして25メートル程度)といった、敗退フラグをビンビンにおっ立てる発言さえ飛び出しました。
しかし、五輪は簡単ではありませんでした。1回目、日本は二階堂蓮さんが全体3位、小林陵侑さんが全体9位ともうひとつ伸ばせません。先行逃げ切り、1回目でトップに立って、その後グングン引き離すというイメージでいきたかったものが、わずかな差ではあるもののメダル圏内にも入れず5位となりました。トップのオーストリアとは18.9点差、距離にして10メートル弱ほど離されました。
さらに困った感じになったのが2回目。日本は二階堂蓮さんが全体4位、小林陵侑さんが全体6位と悪くはないものの、ノルウェーが好ジャンプで順位を上げ、日本は6位に下がります。トップのオーストリアとは33.5点差で距離にして17メートルほど。メダル圏内の3位とは1メートルほどの差ですので、そこはまったく問題ないのですが、オーストリアをつかまえるのはちょっと難しくなりました。この時点では、まさかこの6位がさらに壮大なやらかしだったとは思ってもいなかったわけですが…。
勝負の3回目。日本は暫定6位ということで、8チームで争うこのラウンドの1本目は3番目で飛ぶことになりました。ここで二階堂蓮さんは138.5メートルの大ジャンプ。飛形点も高く、146.8点とします。これで日本は合計682.0点として一気に2位にジャンプアップします。1位のオーストリア713.5点とは、距離にして16メートル差ほど。ただ、3位のノルウェー675.5点には距離にして3メートル少しの差をつけました。あとは小林さんがしっかり決めれば銀を確保できる、いい展開に持ち込んだのです。
しかし、最後のジャンプが始まった頃、パラリパラリと雪がチラつき始めます。そして全体3人目で飛ぶスロベニアのドメン・プレブツさんのところで競技が止まります。逆転のためにゲートを下げて加点を狙おうとしたスロベニアの要請を含めて、ゲートを3段下げることになったのです。これによってまずゲートを動かす時間が発生します。さらにその工事の間に風向きがガラッと変わったために運営側の様子見が発生しました。さらに、プレブツさんが飛んだあと、ほかの選手はゲートを3段も下げることを求めなかったもので、「ゲートを2段戻す」という折り返しの工事が発生したのです。
プレブツさんの前の選手が飛んでスコアが表示された時点から数えて、プレブツさんが飛んでスコアが出るまでにかかった時間が約7分20秒。次にドイツのライムントさんが飛んでスコアが出るまでにかかった時間が約1分30秒。その次にポーランドのトマシャクさんが飛ぶ前にはさらに雪が強くなり、アプローチの雪を吹き払う作業なども行なわれましたが吹けども吹けども追いつかず、なかなかジャンプすることができません。しばらく間隔が空いたことで、テストジャンパーが飛ぶという工程も加わり、結局トマシャクさんがジャンプしてスコアが表示されるまでに約8分50秒を要しました。
残りは3人、順調であれば5分とかからず競技は終わるはずの人数です。今飛べたのだからポンポン飛べばよさそうなものですが、トマシャクさんの記録が悪かったことで、条件が不公平であるという判断に至ったでしょうか。トマシャクさんが飛んでから約2分50秒後、中継映像では各国の選手が抱き合って喜び始める姿が映し出されました。どうやらこの時点で現場では「3回目のジャンプはキャンセル、2回目までの結果で競技終了」と告げられていた模様。プレブツさんのゲート工事が始まったところから数えて約20分30秒、日本は2回目までの結果をもって6位となることが決まったのです。
↓「1ハラダしても金」などと調子に乗っていたら遅効性のハラダで6位になりました!
その後、二階堂さんにインタビューなどしておりますと、競技終了の決定が下されたと思しきタイミングから5分ほどすると雪が小降りになり始め、小林さんがインタビューを受ける頃にはすっかり晴れたではありませんか。小林さんからも「この通り、5分強待ってれば出来た状況なので」「その判断が何故できなかったのかわかんないですし」「悔しいです」という振り返りとなりましたが、まったくその通りです。あと5分、あと5分も待っていれば状況は好転していました。
現地の状況や判断は詳報などを待とうと思いますが、きっといろいろあるのでしょう。競技開始時刻が現地時間の19時で、競技終了の決定が下されたのが21時頃。山の上のジャンプ台に観衆が集っていることを考えると、交通網や安全面など配慮すれば無限には待てないというのは理解はできます。テレビ中継の枠が限られているという身もふたもない事情もあるでしょう。あと5分・10分という話はありますが、ポーランドのトマシャクさんを不利な条件で飛ばせてしまったことで、条件が好転したとて競技再開という決断もしづらかったのかもしれません。それならスッキリ2回目までで打ち切ろうと。
もしこれが長野五輪であれば、映画化されるほどの粘りと熱意でもって「絶対に最後までやり切る!」と1時間でも2時間でも運営も粘ったのでしょうが、ここはイタリアです。イタリアの代表にメダルの可能性は事実上なく、長野のように粘る理由もありません。長野だって昼の競技だったから粘れただけで、夜の白馬であればあれほど粘れはしなかったでしょう。「プレブツがゲート工事せんでポンポン飛べば終わってた」と言いたい気持ちはありつつも、まぁ致し方ないでしょう。自然と戦う競技にはこういう事態はつきものなのですから、1回目からしっかり上位につけないといけなかった。日本以外の下馬評有力候補はしっかり上位につけてメダルを獲っているわけで、日本が「弱かった」と言うよりありません。
ただひとつ、あえてひとつ付け加えると、この試合実は本来の予定よりも11分遅延していました。本来は3回目のジャンプを現地時間の20時20分から始める予定だったのですが、当初16チームで争う予定が参加チームが17に増加したことで、競技スケジュールが繰り延べられたのです。五輪予選時点での参加予定チームと実際の参加チームを見比べると、その増えた1チームは…中国でした。だからどうだって話ではありませんが、その11分があれば全員飛び終わっていたのではないか、そんなことを思うとより一層「幻の銀」の幻具合がアップしてくるなと思うのです。世界にスキージャンプが拡大していくことを喜びつつ、「であればもうちょっと早く始めませんか」と思う出来事なのでした。
ま、長野五輪では相当粘らせてもらいましたのでね。
そのぶんだと思って大人しく引き下がるほかないでしょう。
次、もし日本でやるときは、勝てそうなときはトコトン粘りますんで、よろしくお願いします!
長野のときは「日本以外全員帰りたそう」くらいの悪天候でしたものね!
スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム
フモフモ編集長
さまざまなジャンルのスポーツを"お茶の間"目線で語る人気のコラム