なぜ試合は中止されたのか。そのとき現地では何が起きていたのかーー。マネージャーの三迫ジム会長の三迫貴志氏、そして寺地本人から話を伺った。
◆計量クリア後の「突然のキャンセル」…真相は?
ーー先日行われるはずだったサウジアラビアでの統一戦。現地入りし、調整も万全だったと聞きます。まさかの試合中止が決まったのはいつだったのでしょうか。
三迫貴志:サウジアラビアに到着してからも調整は順調で、気候も良く、全てが良い流れでした。時差もマイナス6時間なのでアメリカに比べれば楽ですし、減量も上手くいっていた。 運営を手伝っている日本人スタッフから連絡が入ったのは、試合前日の22時過ぎです。「中止です」といきなり言われて、最初は状況が理解できませんでした。ロビーに飛んでいって日本人スタッフに食い下がったのですが、「相手選手が勝手に病院に行ってしまった。コミッションの決定だ」と。どうにもなりませんでした。
寺地拳四朗:僕は部屋でくつろいでいたんですが、23時頃にトレーナーから電話があって、「すぐロビーに来てくれ」と。声が深刻そうだったので、「俺、ドーピングとか何かやらかしたんかな?」と一瞬不安になりつつ慌てて下に行ったら、スタッフ全員がこの世の終わりのような顔をしていて……。「試合がなくなった」と言われた時は頭が真っ白で……。怒りとか悔しさというより、「ここまで来てリング上がらへんの? 計量までしてるのに?」という不思議な感覚で。ただただモヤモヤしましたね。
三迫貴志:全員が一斉にため息をついていましたね。あの空気は恐ろしかった。何とも言えない沈黙が続いて。
◆「4団体統一」に繋がるはずだったが…
ーー突然の中止で、精神的に相当なダメージがあったと思います。今回の試合は、単なるタイトルマッチ以上の「大きな意味」を持つ一戦だったと聞いています。その中で、拳四朗選手を突き動かしていた原動力は何だったのか、改めて教えてください。
三迫貴志:今回の試合は、単なる「3階級制覇」以上の意味がありましたからね。 このIBFのベルトを取れば、同じ階級の3団体統一王者であるジェシー・ロドリゲスとの4団体統一戦が見えてくる。バムは今やスーパースター候補ですから、彼と戦いたいというのが拳四朗の念願でした。世界的権威のある専門誌『リングマガジン』もこの試合を評価してくれていましたし、期待感は最高潮でしたよ。
寺地拳四朗:そうですね。次が見えていたので、モチベーションは管理するまでもなく勝手に上がっていました。練習もハマっていたし、「いい流れで戦える」という確信があった。だからこそ、あんな形で終わってしまったのが、余計にモヤモヤするんですよね。
◆消えないモヤモヤはリングで晴らしたい
三迫貴志:確かに後味は悪いですが、次に試合が決まれば、ファンもお客さんも一番期待する「決着戦」になります。恨みじゃないですけど、ドラマが生まれたことで「今度こそ白黒つけてやる」という盛り上がりはあると思います。
寺地拳四朗:試合で倒してチャラにするしかない。どこでやるにせよ、次は絶対に逃がさないという気持ちでリングに上がるつもりです。