まずは、国も問題視する行列問題。それをおたがいさまな“やさしさ”で解決する技術が、トイレ混雑抑止サービス「AirKnock」だ。入室をセンサーが察知し、個室の混雑状態や滞在時間を設置されたタブレットで可視化する。長時間利用といっても理由はいろいろ。体調不良で長時間こもらざるを得ない人もいる。退出を強制するのではなく「トイレの空き情報」を伝えることで、次の人の存在に思いを馳せさせる。
「開発には利用する方が、快く次の人に譲る気持ちになれることを大切にしました。開かずの扉の前で今か、今かと冷や汗をかきながら待った経験は、多くの人にあるはず。その切迫感を知っているからこそ、みなさん、アクションに移してくれるのだと思います」(株式会社バカン・金子譲治さん)
◆プライベート空間をAIの“目”が見守る
トイレは公共の場にあっても、完全なプライベート空間であるため、人の目が届かないからこそ事件や事故の現場となりうる。そのリスクをいち早く察知するシステムも登場している。トイレ内異常検知システム「Xeye(エックスアイ)」だ。天井に設置したセンサーが「人」であることを認識すると、まずは骨格の動きを捉える。AIによる行動解析で、「人が倒れている」「長時間の居座り」「破壊行為」などを判定し、即座に通知する仕組みだ。
「骨を透視するわけではなく、頭、肩、膝、足首など24の関節ポイントをつなぎ、姿勢推定
アルゴリズムで行動パターンを解析しています。記録されるのはいわば“棒人間”の動きだけ。
プライバシーが守られるのでトイレの個室にも設置できるのです」(三協エアテック・古橋憲治さん)。
開発には、排泄の動作に加え「コートを掛ける」「清掃を行う」といったトイレでの通常行動も学習。そのうえで、転倒や暴力行為などの異常行動を大量に学ばせ、正常/異常の識別精度を高めている。
「導入いただいたある施設では、破壊行為があった際に出入り口の
防犯カメラ映像とXeyeのデータを照合して犯人特定につながりました」
抑止効果も期待できるほか、急病の早期発見のために導入をする
高齢者施設や工場もあるそうで、『Xeye』がトイレにもたらしたのは安心感、そのものなのかもしれない。
◆少子高齢化はトイレにも。ロボット開発できれいを維持
中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)は、どこよりもいち早くトイレ美化に挑んできた企業だ。
サービスエリアは、長時間移動の疲労やストレスを癒す場所。トイレも単なる排泄の場ではなく、心身のオアシスであるべき---。同社は民営化以降、こうした考えのもと、トイレ環境の質の向上に力を注ぎ、清掃管理に対しても次世代技術の開発や導入が進んでいるという。
例えば、「スマートSAマネジメントシステム」は、トイレの利用状況に加え、
トイレットペーパーや水石鹸、除菌クリーナーの残量、さらには臭気や温湿度、CO2までセンサーで検知。利用状況はリアルタイムで共有され、最適かつ効率的な補充タイミングを導き出す。
そして、目下独自開発中なのが、「狭小部清掃ロボット」だ。設定時間になると充電ステーションから出動し、男子トイレの小便器下やその床を自動清掃する。そう、的を外したおしっこや勢いよく飛んだ飛沫で汚れたあの、箇所である。
「男子トイレの小便器の下は狭く、『エリアキャスト』と呼ぶ清掃スタッフが床にしゃがみ手鏡を使って手で
掃除をしています。キャストの高齢化は進んでいますし、将来的には雇用の確保も難しくなる。そうした課題感から開発が始まりました」(NEXCO中日本・吉谷直人さん)