いよいよやってきたミラノ・コルティナ五輪。冷たくて熱い17日間の冬の祭典の始まりです。前回の北京大会はコロナ禍まっただなかの開催だったことで、歓声とともに迎える冬の五輪は8年ぶりのこととなります。その懐かしさ、熱さ、興奮。「日本は普段冬スポーツ見ないから…」「世界距離別選手権とかもゴールシーンしか見ないし…」「客がいようがいまいが映るのは山なんでしょ…」みたいな身もふたもない意見もあるかもしれませんが、現実は一旦横に置きまして(!)、帰ってきた歓声を喜びたいと思います。
今回は史上初の広域開催ということで、大会名にもあるようにメイン会場がミラノとコルティナ・ダンペッツォという直線距離で250キロ離れた2都市に分かれており、聖火台も2都市にそれぞれ設置されるのだとか。コルティナ・ダンペッツォは1956年に冬季五輪が開催された都市で、猪谷千春さんがスキー男子回転で日本人初の冬季五輪メダルを獲得した地ですが、そうした由緒正しき冬スポーツ都市とファッションの中心地として世界に轟く大都市ミラノとの分散は、大会や選手にとって楽しさの拡大となるのか、あるいは単に面倒なだけなのか、新たな世界観を見守っていきたいと思います。
いずれにせよ、五輪・パラリンピックが国家規模のプロジェクトとなるなかで、「都市」にこだわった開催をすることの限界を認め、転換点となる大会になるのだろうと思います。「日本だって東京から1000キロ離れた札幌でマラソンとかやりましたけど?」という「現実を理想で覆い隠す」みたいな所作を改めていく、ある意味で令和的な大会なのだろうと思います。日本にはまだ時期尚早な話ですが、いつか遠い未来に再び五輪・パラリンピックの招致を考える際には東京大阪五輪・パラリンピック(夏季)、東京札幌五輪・パラリンピックとか言って「事実上日本五輪」なんて建付けになるのかもしれませんね。
そんななかで迎えた6日(日本時間7日)の開会式。日本では朝の4時始まりということで、起きて見るのも寝て見るのも絶妙に辛い時間帯となりましたが、開会式ということで頑張って目を見開きながら見守ります。開会式はサッカーのACミランやインテルミラノがホームスタジアムとして使用するスタディア・ジュゼッペ・メアッツァ…いわゆるサン・シーロで行なわれるとのこと。さすがイタリア、いいスタジアムをお持ちですね。
絵画のようなイタリアの都市と山岳、食文化やカフェ、フェラーリ、ファッション…などなどカウントダウン自慢映像で幕を開けた開会式。「ARMONIA(調和、ハーモニー)」がテーマとのことですが、「これがイタリアだ!」がハーモニーとなって世界にお披露目されていきます。メイン会場のフィールドには彫刻・石像を模したオブジェと、天使たちに扮したパフォーマーが現れると、パフォーマーがアントニオ・カノーヴァの彫刻を自身の身体で再現するような振り付けも。さらにイタリア発祥の言葉だという「パパラッチ」を模したカメラマンと追いかけられる俳優さんや、イタリアオペラ三大巨匠着ぐるみ的なパフォーマー、文学・建築・ファッション・音楽などなどを象徴するパフォーマーがこれでもかこれでもかと登場し、「これぞイタリアですなぁ」が舞台を彩っていきます。
華やかなオープニングを終えると、事前に告知されていたマライア・キャリーさんのパフォーマンスへ。日本ではビールが飲みたくなる「ボラーレ」の歌としておなじみのカンツォーネ「青く塗られた青の中で」をイタリア語で披露します。幕間の映像演出でもさらりとバレンティーノ・ロッシさんが路面電車の運転手として登場してきたりと、見せたいものがたくさんあるようで大変華やかで賑やかです。
↓どの大会もそうですが基本的にずっと「これがイタリアだ!」がつづきます!
↓そのなかで招聘されたマライア・キャリーさんは、さすが世界のマライアといったところ!
↓「バイクは危ないから電車がオススメ…」などとは言ってません!
いわゆる式典部分は分散開催の大会らしく各都市を結んで行なわれているようで、イタリア国歌の斉唱も各都市でそれぞれ行なわれ、中継でも複数の都市での斉唱の映像をつなげてひとつにしています。このつながり・調和を新しい素晴らしいと感じるか、面倒そう大変そうと感じるか、このあたりに未来を生きるための心構えなどもあるのかもしれません。
「都市」と「山岳」をモチーフにしたダンスパフォーマンス、オリンピックシンボルの登場を経て、選手の入場行進へ。こちらもメイン会場であるサン・シーロだけでなく各都市で行進が行なわれるとのこと。92の国と地域からなる約2900人の選手団が各地で行進を行ない、その映像を小刻みにつないでいくというスタイルは斬新です。「私はメイン会場がいいです」「メイン会場じゃないところで行進しても何のことやら」「選手団1名とかの場合はさすがにメイン会場に行っていいんですよね…?」などと言い出す選手はもちろんひとりもいません。いるはずがない!
↓入場行進というか大筋で屋外パレードになりました!
注目の日本選手団はイタリア表記順で34番目の登場。サン・シーロではスピードスケートの森重航さんが旗手をつとめる大選手団が姿を見せたほか、広域各会場で選手たちが姿を見せ、大会への期待感も高まります。前回大会ではモーグルの堀島行真さんらが入場行進でバク転をして「怪我したらどうすんだ」「マジでやめろ」「閉会式でやれ」などのザワつきを集めていましたが、今大会は見える範囲ではいたっておとなしい入場となりました。日本の小旗とイタリアの小旗を持ち込んで両方振っていたのは日本らしくてよかったなと思います。なお、今回はブラジル選手団が側転からのバク宙を披露しており、地球の裏側に堀島イズムが受け継がれたようでうれしく思います(←違うか)。
日本選手団の各都市での入場を見ると「ここはスケート」「ここはアルペン」など競技会場に応じた選手たちが集っており、このような広域開催がスタンダードになっていくなかでは、そもそも選手全員がメインスタジアムに集ってという発想自体も変えていく時節なのかなと思ったりもします。オールドタイプな気持ちとしてはやはりメイン会場に行きたいような気分もあるのですが、そもそも選手たちは「後半の日程なので現地入りしてません」「調整があるので開会式はパスしました」など式典部分には意外に縁遠かったりするもの。それが広域開催で、滞在地の近くでパレードだけやる、となればむしろ「そこだけ行こうか」なんてこともあり得るのかなと。スキージャンプのメンバーとともに行進に参加していた原田雅彦さんも直後の電話取材でこうした形式をポジティブに捉えていましたし、むしろ選手ファーストなのかなと思いましたよね。これも新時代、なのでしょう。
↓イタリアの小旗を持ってくるあたりが日本らしいですね!
しばしの行進を経て、最後のイタリアの入場にはそれまでの歓声を遥かに上回る超歓声が起き、ついに選手たちが集結。過去の大会に思いを馳せつつ時代時代の冬スポーツファッションを見せるダンスパフォーマンスや、イタリアのジェスチャー文化を見せるパフォーマンス(が〜まるちょば彷彿)を経て、いよいよセレモニーはクライマックスへと向かっていきます。
大会組織委員会マラゴ会長の10分に及ぶ熱いスピーチ、競泳の金メダリストであり初の女性会長でもあるIOCコベントリー会長の10分に及ぶ熱いスピーチ、イタリアのマッタレッラ大統領による10秒ほどの開会宣言を経て聖火入場。これまでの聖火の歩みを振り返りながら、「誰も寝てはならぬ」(※日本勢は眠い)が響くサン・シーロに現れた聖火を携えてきたのは、ACミランのフランコ・バレージさんとインテルミラノのジュゼッペ・ベルゴミさんです。サン・シーロならではの象徴的なふたりから聖火をリレーすると、点灯するのかと思いきや、再び聖火はスタジアムの外へ。お披露目だけで、聖火はここから聖火台へと向かうようです。
その聖火の移動ののち、スタジアムでは当地で知られる反戦について詠んだ詩が朗読され、それにあわせたパフォーマンスが演じられます。パフォーマーたちはやがて平和の象徴ハトを象った隊列を成し、平和への祈りが捧げられました。思えば前回北京大会では、五輪・パラリンピック中の休戦期間にロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。改めて強い非難の気持ちが沸き起こるようです。
↓今回のハトはこんな感じで現れました!
前広島市長・秋葉忠利さんも参加したオリンピック旗の入場&掲揚そしてオリンピック賛歌の斉唱は、これも都市を超えて行なわれ「ARMONIA」の精神が示されました。選手宣誓やさらなるパフォーマンスなどののち、中継は切り替わってミラノとコルティナそれぞれの市街地にいる聖火のもとへ。沿道の人々の前をまるで聖火リレーのようにして聖火が運ばれ(聖火リレーそのものなんだけど)、平和の門などにある聖火台のもとへ。最後はイタリアの冬スポーツと言えばこの人を置いては語れないアルペンスキーのレジェンド、アルベルト・トンバさんらが最終点火を果たし、調和の大会が幕を開けました。式典を通じて貫かれる平和への思いとイタリアへの誇り、それが文化芸術を軸として、そして歴史と科学のなかに生きるものとして巧みに表現される、素敵な開会式だったのではないかと思います。
↓最終点火者クイズにしては簡単すぎましたかね!全員当てろって言われると難しいですが!
そんなことで本格的に始まりましたミラノ・コルティナ五輪。今さらながら2006年に同じイタリアで開催されたトリノ五輪では荒川静香さんの金メダルなどもライブで見ておりましたので我ながらよくこの時間帯の大会を頑張ったものだなと思いますが、楽しさが体力を超えていくようなことを期待しながら見守っていきたいと思います。東京五輪あたりでは日本勢のすべてのメダルを生で見たい!みたいな内的目標もありましたが、ちょっとその辺は体力と給料獲得作業と可能な範囲で相談しつつ、健康的に楽しんでいこうと思います!
2025年度は世界陸上に全力で行き過ぎて、大連休がしづらい状況です!
スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム
フモフモ編集長
さまざまなジャンルのスポーツを"お茶の間"目線で語る人気のコラム