高市早苗首相の電撃解散で衆議院議員総選挙が始まり、先日、朝日新聞の報道によれば「300議席超をうかがう勢い」だという。支持率に頼る短期決戦では、与党が三分の二を取れるかどうかが今後の政治の分かれ目になる。憲政史研究家の倉山満氏は「高市首相の支持率と公明党の組織力の戦いだ。ネトウヨと創価学会、いずれが勝利するか」と指摘し、その後の展望を分析する。(以下、倉山氏による寄稿)。
◆選挙は勝った者が正しい
ここ数年、予想に意味が無い大型選挙が続いている。一昨年の石破茂前首相が勝利した自民党総裁選と自民党が大敗した衆議院選挙。記憶に新しい昨年の、自民党が大敗した参議院選挙と高市早苗首相が勝利した自民党総裁選。メディアやSNSの、前日の予想にすら意味がなかった。
今回の高市首相の解散、完全に支持率頼みだ。確かに、この支持率だと解散したくなる気持ちはわかるが、なぜこの時期に、がわからない。高市支持者でも、よほどの“信者”以外は弁護できない。ただ、戦が始まったからには、その戦の正義だけを説いても意味が無い。選挙は勝った者が正しい。正義や大義を説くことも、一つの選挙戦術にすぎなくなる。
そっちが不意打ちなら、こっちは野合とばかりに、野党第一党の立憲民主党と、与党を出て行った公明党が、新党を結成。中道改革連合として結集した。代表も幹事長も政調会長も、両党から共同で出すとの、急ごしらえ。首班指名候補は野田佳彦共同代表になるらしい。
◆「高市」と「野田」どちらを首相に選ぶかの選挙
基本的な構図は、自民対中道である。要するに、首相が記者会見で述べたように、「高市早苗と野田佳彦の、どちらを首相に選ぶかの選挙」だ。およそマトモな感覚の日本人ならば、高市首相のやりかたに多少の疑問があったとしても、「再び野田首相」など選べない。ただし、それは平常の場合。今回は短期決戦で、構図が単純ではない。
実は今回の選挙、単純な足し算と引き算だと、自民党に有利な要素はほとんどない。
まず、約30年間の友党関係にあった、公明の票が無くなるだけでなく、反対党の立憲に行く格好だ。公明党票は各選挙区に1〜2万票と言われるので、基礎票が1万票減る覚悟で臨まねばならない。その上で、参政党と国民民主党が多くの選挙区で候補者を立ててきているので、保守票が削られる。特に参政党は182の選挙区で候補者を立てているし、国民民主も102の選挙区で擁立している。さらに、連立与党の日本維新の会とも選挙区調整を行っていないので、85の選挙区で競合する。
以上のマイナスを、高市首相の人気で補えるか。浮動票からかき集めてくるしかない。
◆立憲を落とせば、組織が瓦解しかねない
一方の中道の、旧立憲陣営は、各選挙区に5千票強と言われる共産党の票はなくなる。しかし、公明党の票が入り、上回る。
単純計算で、前回の選挙で2〜4万票差の選挙区なら、逆転が可能だ。しかし、旧立憲の陣営は「本当に票を入れてくれるのか」と疑心暗鬼のようだ。支持率も今のところ、上がっていない。また討論会での、野田共同代表の失言も痛々しい。こんな有様だから、結局のところ、中道は議席を減らすのではとの見方もある。
一方で、旧公明党と支持母体の創価学会の士気は高い。少なくとも上層部は。
中道の比例上位には公明党。28人。現有の24人から上乗せ確実である。仮に中道が大敗しても、「公明党としては微増だから勝ち」と外野は言う。
だが彼らの組織益を考えてみよ。ここで立憲を落とせば、組織が瓦解しかねない。必死になる理由があるのだ。
◆ネトウヨと創価学会、いずれが勝利するか