NASAのアルテミス計画では2026年初旬に有人月周回飛行を行う「アルテミス2号」、2027年に有人月面着陸を行う「アルテミス3号」の打ち上げを予定しています。
中国も同様に2030年までに有人月面着陸の計画を進めており、その進展が
NASA内部で
宇宙計画の競争意識を強めていると
アメリカ電子学会(IEEE)が出版するIEEE Spectrumが報じています。
China Moon Mission: Aiming for 2030 Lunar Landing - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/china-moon-mission-mengzhou-artemis
中国有人
宇宙機関(
CMSA)は初期の目標を「
宇宙飛行士を
宇宙に送ること」と定め、
宇宙ステーション「天宮」の運用に成功した後、月周回飛行や月面着陸の実現に向けた計画を進めています。IEEEによると、
CMSAは「2030年までに
宇宙飛行士を月面に着陸させる」という目標を打ち出しており、この計画を一貫した長年の
宇宙政策の一部としているため、1960年代に行われた月面着陸競争のような
アメリカとの競争関係を否定しているそうです。
しかし、
NASAの長官であるジャレッド・アイザックマン氏は2025年12月に開催された公聴会で「我々は、
宇宙という高みを含む複数の領域において、
アメリカに挑戦する意志と手段を持つライバルと、熾烈な競争を繰り広げています。今は猶予する時ではなく、行動を起こす時です。なぜなら、もし我々が遅れをとれば、つまり過ちを犯せば、二度と追いつけなくなり、その結果地球上の勢力バランスが変わってしまう可能性があるからです」と競争を意識していると述べました。
また、アイザックマン氏はXの投稿でも「
NASAは
宇宙における
アメリカのリーダーシップを確保し、私たちは壮大な取り組みを支える多くの商業および国際的なパートナーを有している幸運に感謝します。
アメリカは
NASAを必要としています。世界は
NASAを必要としています」と
NASAが
宇宙開発でリーダーシップを取っていく重要性を強調しています。
また、
中国の
宇宙開発について多くの著作があるジョンズ・ホプキンス大学のナムラタ・ゴスワミ教授は「我々が
宇宙開発競争をしていることに異論を唱える人は、
中国ではいないでしょう。
中国は
宇宙大国としての
中国を誇示する活動に従事している可能性があり、どこかに先駆けて到達することに非常に真剣なのです」と
中国も競争を意識していると指摘しました。
中国の月探査機は「孟舟」と呼ばれる多目的有人
宇宙船をベースとしており、 6人から7人の
宇宙飛行士を収容できますが、実際に地球から低月軌道へのミッションで搭乗できるのは3人程度とも分析されています。
CMSAが公開した情報によると、孟舟には円すい形の乗員区画があり、後部には電力・推進システムを搭載したサービスモジュールが配置されています。孟舟は2025年8月に発射燃焼試験を完了した新型の大型
ロケット「長征10号」によって打ち上げられる予定です。以下は、
中国メディアの新華社が公開した長征10号の静的燃焼試験の様子。

孟舟は月着陸船「蘭越」を打ち上げた後に月へ向かい、月の周回軌道上で2機はドッキングします。2人の
宇宙飛行士が蘭越に乗り換えて月面に着陸し、孟舟は帰還のため軌道上で待機する計画です。
中国当局は「蘭越の試験は2024年に開始された」と述べており、孟舟は2026年に、蘭越号は2027年に初の無人飛行を行う予定と明かしています。最初の共同試験ミッションは2028年から2029年に予定されており、2030年には実際の月着陸ミッションが計画されています。
計画では
中国の有人月面着陸はアルテミス計画より後になっています。しかしゴスワミ氏によると、アルテミス計画が
アメリカ内で繰り返し計画のやり直しや中断、大統領が交代する度に変更を余儀なくされてきた「議論の産物」であるのに対し、
中国の月面着陸計画は1992年に
中国共産党が初めて支援した「プロジェクト921」と呼ばれる計画からほぼ一貫している活動の発展形であるそうです。
IEEEの取材に答えた匿名の
NASAの元上級管理職は「ここ数十年、
中国の
宇宙計画を見守ってきた友人がたくさんいます。
中国の
宇宙計画の特徴は、何かの日程を発表したら、大抵はそれを守るというところにあります」と語りました。
一部の
NASAのベテラン職員は、
アポロ計画の成功は当時のソ連との競争が大きかったとした上で、「
中国の迅速かつ遅れのない
宇宙計画は、
NASAをより機敏にするための後押しになっているかもしれない」と述べています。アイザックマン氏は「
中国」と明言せずに「強力な競争相手」と表現していますが、「
宇宙における技術的、
科学的、あるいは経済的優位性を維持できなかった場合の影響を考えると、不安でなりません。そして、時間は刻々と過ぎています」と競争に勝利する重要性を強調しています。