この度、その書籍化作品
『栗山英樹がトップ経営者から引き出した 逆境を突破するための金言』が発売となりました。
今回は発売を記念し、本書第一章「
世界一を目指せ」より、
株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長・柳井 正さんへのインタビューを一部公開します。
『栗山英樹がトップ経営者から引き出した 逆境を突破するための金言』書影
2023年WBCで日本を世界一に導いた栗山英樹と、衣料品業界世界一を見据えるユニクロ創業者、柳井 正。二人が「世界一を目指せ」をテーマに語り尽くした。柳井がテレビ番組で長時間の対談に臨むのは異例のこと。90分に及ぶ真剣勝負の末に見えてきたものとは。そして「金言」とは──
柳井 正 株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長。23歳のときに父が経営していた山口県の紳士服店に入社。経験を積む中で、紳士服の枠を飛び越え新しいカジュアルウエアの店を作りたいと思うようになり、35歳のとき広島にユニクロ1号店をオープンした。42歳のとき社名をファーストリテイリングに変更。店舗数を3年で3倍以上の100にするという大胆な目標を掲げる。そして3年後宣言どおり目標を達成し会社を上場させた。
株式会社ファーストリテイリング
ユニクロ、GU、セオリーなどの衣料品ブランドを世界中に展開。
売上高はZARA、H&Mに次ぐ世界第3位。
・設立:1949年(メンズショップ小郡商事)
・社員数:60454名(連結)
・企業理念:服を変え、常識を変え、世界を変えていく
大きな挑戦への心構えとは
栗山 ここまでの経営で、苦しいところ大変なところ、いろんなことがあったと思うんですが、本当にゾッとするぐらいこれは怖かったという経験もあったんじゃないでしょうか。
柳井 一番ゾッとしたのは店舗を3年間で毎年30店舗ずつ作って100店舗にして上場しようとした時期ですね。銀行にその話をしたら、ちょうどバブルが崩壊した時期だったので、もうこの辺で成長はやめて安定のほうを生かすべきなんじゃないかってその銀行の支店長が言うんですよ。いや、冗談じゃないですよと。それでその銀行とけんかになりました。
栗山 でも……失礼ながら無謀ですよね。それでも柳井さんとしては筋が通った話だと思っているわけですよね。僕がその立場だったら結構不安になるように思います。そういうときはどういうふうに考えるんですか?
柳井 難しい目標ではありますけど、でもね、それをやらないと3年で上場するなんてできないでしょ。もちろん不安ですよ。でも主力銀行がダメでもそのときのうちの現状をよく調べてくれたら僕はどこの銀行でも応援してくれるっていうふうにそのときは思ってました。
栗山 なるほど。ということは一見無謀に見えますけど柳井さんの中ではしっかりした挑戦だったということですね。
柳井 自分で準備して挑戦する。たとえそれで失敗しても、もう一回考えてほかの銀行に当たるなり、どういう方法でやっていくのかっていうのを考えたら解決策はあるんじゃないですか。
栗山 僕はWBCのとき、決勝戦でそれぞれのピッチャーに1イニングずつ投げさせたんですよね。帰国したらまわりから、あんな怖いことよくやるねって言われたんですけど……。僕の中ではあれが一番確率が高かったんですよ。球数が少ない分、あとのことを何にも考えないで目いっぱいいける部分に勝算がありました。まわりからは無謀に見えていても確実にいけるという根拠が自分の中にある。やっぱり何かを決断するときってそういうことがあるんだなって思いました。
柳井 反対に僕も聞きたいんですけどね、ダルビッシュも出して大谷君が最後トラウトに三振させて。漫画でもありえないような展開でしたよね。ああいうストーリーをどうやって思いついたんですか? それとも最初から考えていたんですか?
栗山 それこそ逆算だったんです。世界一になるっていう逆算からすると、その前の準々決勝、準決勝をとらないと決勝にいけないので、そこまででピッチャーをある程度使いきる感じだったものですから、最後は全員でいこうと。
柳井 全員頑張ったよね。全員の力が出たじゃないですか。僕があれを見てすごいなと思ったのは、一人一人選手の個性を生かしながら、それぞれの一番いいところが出ていると感じたんですよね。なんで全員の力が出たんですか?
栗山 僕の感覚ですけども、選手たち自身が、柳井さんがさっき言われたような、絶対に世界一になりたいという思いをみんなが持ってくれていて、俺個人のことはいいから何でもしますよという雰囲気になったんですよ。
部下の指導に必要なこととは
栗山 僕らも選手たちに、挑戦しろ、限界は自分で決めるなと言うんですが、それでいいんでしょうか。
柳井 無謀なくらいの挑戦をするようにしないといけないんですけど、現実も見ないといけないんですよ。現実を見て、お前の実力こうだからいまはそんなこと考えてそんなことやっても無駄だよっていうふうに監督やコーチが言わないといけないんじゃないですかね。
栗山 なるほど。ということは、例えば若い社員の皆さんが無茶苦茶なことを「これやりたいんですけど」と言ったら……。
柳井 そんなのダメよ。ハハハハ……! やっぱり自分っていうものを知らないとできないでしょ。ほとんどの人が自分を知る必要を知らないんです。自分は何者でどこに行くのか。自分っていうのはどういう人間で、どういうところが長所でどういうところが短所で、どうしたらみんなとうまくやっていけるのか……。チームのリーダーであれば、どうやったらチームのメンバーがついてきてくれるのか。あるいはチームの一員をどうやったらうまく活かしていけるのか。そういうことが必要なんじゃないんですかね。
栗山 ということは例えば、選手が急に三冠王をとりたいって言っても「いや、まずこれからやりましょう」ということですね。
柳井 三冠王をとりたいっていう意欲はいいんじゃないですか?
栗山 そうなんです。それを消したくないっていう思いもあります。
柳井 それは消したらダメですよ。とりたいと思うだけでもすごいじゃないですか。とれる要素があるからそういうことを言うんですよね。あなたはいまこれができてるけど、これはできてないですね、だったらこれを伸ばしてこういうふうにやったらどうですかっていうことを言ってあげたらいいんじゃないですかね。その人自身も自分のことを知らないし、僕自身もその人のことを知らない。だから、あなたはどういう人間ですかという問いに対して自分で説明できるようにならないと……。みんな自分のことを知らないんです。それじゃ世界で戦っていけないんですよ。
金言…「しっかりとした挑戦には解決策が必ずある」「自分を知る必要を伝える」
インタビュー風景より
栗山英樹(くりやま・ひでき) 北海道日本ハムファイターズCBO。1961年、東京都生まれ。東京学芸大学を経て、84年にドラフト外でヤクルトスワローズに入団。89年にゴールデングラブ賞を獲得。90年に引退し、解説者、スポーツジャーナリスト、白鷗大学教授などを務める。2011年11月に北海道日本ハムファイターズの監督に就任し、監督1年目でリーグ制覇。16年に2度目のリーグ制覇と日本一に輝き、正力松太郎賞を受賞。21年11月に日本ハムファイターズ監督を退任し、12月に野球日本代表監督に就任。23年3月にWBC優勝、5月に日本代表監督を退任。
◆本書はNHK「栗山英樹 ザ・トップインタビュー」より
「ファーストリテイリング会長兼社長 柳井正」(2024年1月4日放送)
「伊藤忠商事会長 岡藤正広」(2024年1月5日放送)
「日本製鉄 橋本英二会長」(2024年8月24日放送)
「日本航空社長 鳥取三津子」(2024年8月31日放送)
「楽天グループ社長 三木谷浩史」(2025年2月15日放送)
「サンリオエンターテイメント社長 小巻亜矢」(2025年2月22日放送)
の内容を再構成したものです。なお、各種データは取材当時のものです。