中国では2026年1月1日から
コンドームや経口避妊薬、避妊器具を含む避妊具への課税が導入されました。避妊具への課税は低出生率の改善を狙った政策ですが、
中国の人口動態を研究する社会学者は「ほとんど効果がない」と述べています。
China’s new condom tax will prove no effective barrier to country’s declining fertility rate
https://theconversation.com/chinas-new-condom-tax-will-prove-no-effective-barrier-to-countrys-declining-fertility-rate-273333
中国では、一人の女性が一生の間に出産する子どもの人数を産出した指標である合計特殊出生率が「1.0付近」であり世界で最も低い水準となっています。2025年10月には
中国当局が低迷する出生率を改善するための取り組みとして「3歳以下の子ども1人につき約3600元(約8万円)以上を支給する国家保育プログラム」が実施されましたが、依然として死亡者数が出生者数を上回っていました。
出生率改善政策の一環として、2026年1月1日からは避妊具に13%の売上税を課す新しい課税制度が施行されました。しかし、テキサスA&M大学の社会学教授であるダドリー・L・ポストン・ジュニア氏によると、避妊具への課税は合計特殊出生率にわずかな影響を与える可能性があるのみで、ほとんど効果がないと考えられるとのこと。

その理由としてはまず課税による負担額があります。
中国において
コンドーム1
箱は約50元(約1100円)で、経口避妊薬の1カ月分の料金は平均130元(約3000円)です。13%の課税があったとしても、
コンドーム1
箱あたり5元(約113円)〜10元(約227円)ほど高くなるだけで、必需品の購入を避けるほどの負担にはなりません。BBCの取材に回答した
中国東部の河南省に住むダニエル・ルオ氏は「地下鉄の運賃が数元(数十円)値上がりしたとしても乗る習慣を変えられないように、
コンドームが年間数百元(数千円)程度増額したところで、
値上げを心配するほどではありません。私には子どもが一人いますが、もう子どもは欲しくありません」と語りました。
また、
中国と同様に出産促進政策を導入している国がうまくいっていないこともポストン・ジュニア氏は指摘しています。
シンガポールでは数十年にわたって有給出産休暇や育児補助金、一時金支給といった制度を通じて出生率向上のための方策を講じてきましたが、
シンガポールの出生率は2025年時点で「1.2」と世界最低水準にあります。2012年には
シンガポール政府がキャンディメーカーのメントスと提携して
シンガポール国民の愛国心をあおるプロジェクト「国民の夜」が実施されましたが、出生数の増加にはつながりませんでした。以下は「国民の夜」の
キャンペーンムービー。
Mentos National Night -
YouTube出生率「0.7」と世界で最も低い水準にある
韓国は、少なくとも20年間にわたり経済的なインセンティブを提供して出生率の改善に取り組んでいます。しかし、
韓国の出生率は2006年の「1.1」から2017年には「1.0」、2019年には「0.9」、2024年には「0.7」へと低下し続けており、金銭的なインセンティブは出生率の改善につながりにくいとポストン・ジュニア氏は述べています。
中国では1979年から2014年まで「
一人っ子政策」が実施され、1960年代初頭に「7.0」を超えていた出生率は2015年には「1.5」にまで低下しました。また、近代化によって女性の教育と就労の機会が向上したことで、多くの女性が出産を遅らせたことも出生率低下の要因となっています。加えて、
生活費と教育費の高騰も
中国の夫婦が多くの子どもを望まない理由となっています。これらの具体的な出生率低下の原因に対し、避妊具への課税は直接的な改善策となっていません。

考慮するべきもう1つの要素として、人口統計学者が「低出生率のワナ」と呼ぶものがあります。低出生率のワナとは、国の合計特殊出生率が下がると子どもを持つことへの意識や価値観が変わり、そこから合計特殊出生率を改善させるのは難しいとする仮説です。過去に人口統計学者が提唱した際に「この値を下回ると低出生率のワナにより改善が難しくなる」とされた合計特殊出生率の基準は「1.5」または「1.4」であり、現在の
中国はそれをはるかに下回っているため、そこから引き上げることは非常に困難である可能性があります。
ポストン・ジュニア氏は「以上の理由から、
中国の政策が出生率の上昇に何らかの影響を与える可能性は極めて低いと考えられます。また、長年
中国の人口動態を研究してきた経験からも、避妊薬の価格をわずかに引き上げても、ほとんど効果がないと考えています」と結論を述べました。