◆検索すれば所属を調べられ、職場では下手な振る舞いができない
「自分の氏名をGoogleで検索すると顔写真も所属も出てきますし、診療中は患者さんからのクレームにも気を張り続けています。『見られている』意識は常にあり、職場では下手な振る舞いができません」
こう打ち明けるのは、医師の植田隼人さん(仮名・20代後半)だ。大学病院での後期研修を経て、現在は都内の市立病院に勤務する植田さん。約1年前、彼女と別れたことを機に
結婚を考えるようになり、医師に特化した
マッチングアプリ「iCoi」に登録した。放っておけば女性から好意を寄せられそうな医師が、なぜ自らアプリ?と思うかもしれない。「モテないからですよ」と、植田さんは自嘲する。
「中高一貫の男子校出身、見た目も芋っぽい『理系男子』なので、恋愛市場ではキラキラした男性に勝てないと思ったのもありますが、これからの医師はAIに仕事を奪われないよう、自己研鑽を積み上げる必要がある。だからこそ、視座の高い同業者に
出会いたい気持ちもありました」
過酷な現場を共に乗り越えた男女が惹かれ合うーー医療ドラマでは定番のストーリーだが、現場では求められないジレンマがあるようだ。
結婚相談所ではなくアプリを選んだのには、金銭的な事情も関わっているという。
「特に大学病院の場合、世間一般が思うより年収ははるかに低い。自分が所属していた病院の場合、若手医師の月収は25万円程度。下っ端のうちは昇給もボーナスもなく、残業代は申請しても教授にはねられる『定額働かせ放題プラン』でした。
結婚相談所に登録した場合、初期費用だけで30万円近くかかるところもあり、大学病院勤務の収入では難しいと断念しました」
婚活カウンセラーの代わりに駆使したのは、月額利用料約3000円のChatGPTだったという。
「
婚活アプリに掲載する自己紹介文は、商品の宣伝文句に等しい。ただ自分一人で文句を考えるのは気恥ずかしかったので、ChatGPTにカウンセリングをしてもらっていました」
ChatGPTによる献身的なサポートの結果、アプリ上では計8人と女性とマッチングし、現在はそのうち一人の女性医師と交際中だという。もはや医師といえど、自身から営業をかけない限りは異性とも出会えない時代なのだろうか。
◆今時の若手医師は恋愛に不得手!?
「『医師であればモテる』といった考えは、確かにもう古いかもしれません。僕の場合は
婚活がうまくいかず、一時は
結婚を諦めようかとすら思いましたから」
そう話すのは、大学病院勤務の内科医・南俊太さん(仮名・30代前半)。色白で、内気な印象を受ける南さんは約2年前、親の薦めで
婚活をスタートした。’25年末、
結婚相談所で出会った女性看護師とどうにか婚約にこぎつけたものの、道のりは艱難辛苦だった。
「初めに登録していた医師専門の会員制相談所では、ほかの相談所の女性と半年間の交際を経てプロポーズまで進みました。それが返事を保留されたかと思ったら、その女性が所属していた相談所を突然退会してしまって……。呆然とするうち、1年余りが過ぎました。
結婚相談所を変えてお見合いを再開してもなかなか交際には至らず、焦りが募りました」