--この2試合で2点取った。今大会、何点取りたい?
「僕は数字を決めてない。
雑誌で『得点王争いのダークホース』と書いていただきましたが、僕は得点王にこだわってない。目標の得点数を自分の中で決めてしまうと、そのことに固執し、全体が見られなくなってしまう。
点を取ることが僕の仕事ですが、副キャプテンとしてチームのことをするのも仕事です。自分の記録よりも、優勝できなかったら意味がない。チームが勝つために、自分が得点王を(結果として)獲れたら良いと思います」
今季の上田はフェイエノールトのエースストライカーとして18ゴールを量産し、オランダリーグの得点王争いでトップを独走している。9月、10月と続けてクラブ月間最優秀選手、10月のリーグ月間最優秀選手に選ばれ、クラブチャンネルで「嬉しいです」と満面の笑みで答えている。
しかし9年前の
大晦日と比べても、アヤセイズムは変わらない。例えば今年の夏。今シーズンの目標を尋ねると彼は「今季の目標は怪我なくプレーすること。怪我なくプレーして、1シーズン通してチームに貢献したい」と答えた。ここに目標とするゴール数や個人賞などいっさいない。得点王になることはストライカーの勲章なのに、だ。
この半年、上田はコメント通りのプレーを披露し続けた。その一例を挙げると10月5日のユトレヒト戦。2−2のまま終盤を迎えた白熱の一戦は88分、相手の選手たちが固めたゴール前を上田が技術・肉体・気持ちの三拍子揃ったプレーでこじ開け、執念の勝ち越し弾を蹴り込んだ。
そのユトレヒト戦での上田の得点シーンより私の記憶に残るのは、後半アディショナルタイムのボールキープ。コーナーフラッグ付近で相手を何人も背負った彼は、強靭なフィジカルで激しいデュエルを繰り広げ、二度も時計の針を進めることに成功した。ちょうど、このフォア・ザ・チームのアクションが「ヘット・レヒユン」と呼ばれるフェイエノールトのゴール裏
サポーターの目の前だったので、スタジアムの盛り上がりは凄かった。
今年最後の試合、トゥベンテ相手に1−1で引き分けると、センターサークル付近で上田はしばし天を仰いで悔しそうな表情を浮かべていた。リーグ2位、つまり来季のチャンピオンズリーグ出場圏内にいるとは言え、フェイエノールトは公式戦で1分け3敗の不振期。上田も少しゴールから遠ざかっている。それでもいくつかの点をつないで線にしてみると面白い。
8月16日の対エクセルシオール戦(2対1の勝利)、前半の上田はほとんどボールタッチがなかったが、それでも前線で相手のCB2枚を引き付けることによって、味方にスペースを作る戦術的役割を遂行していた。ストライカーの中には降りてボールタッチを増やしてリズムを作るタイプもいるが、上田はそれをせず先制ゴールを挙げてエースの務めを果たした。
「相手のCBと戦うことがチームのビルドアップで求められていること。なるべく高い位置を取って、中盤にスペースを作る。僕は、降りて組み立てるタイプでもないので、空けておく」(エクセルシオール戦後の上田)
10月2日の
ヨーロッパリーグ、アストン・ビラ戦で上田はコーナーキックから高打点のヘッドでゴールネットを揺らしたが、味方のファウルによって得点が認められなかった。
ロビン・ファン・ペルシ監督は今季開幕直後、「うちの選手のフィジカルデータはなかなか良い。なかにはプレミアリーグレベルの選手が何人かいる」と語ったことがある。その答え合わせを指揮官とするタイミングを逸したものの、アストン・ビラ戦の豪快ヘッド、ユトレヒト戦の後半アディショナルタイムという遅い時間帯でも衰えないデュエル強度などを振り返れば、ファン・ペルシ監督の意図した選手のひとりは上田のことでほぼ間違いないはずだ。