2025年7月30日、
ロシアのカムチャッカ半島付近でマグニチュード8.8の巨大
地震が発生し、日本でも太平洋側を中心とした広範囲に
津波が押し寄せました。この際に発生した巨大
津波を
人工衛星が偶然にも捉えており、その詳細な姿が明らかになりました。
SWOT Satellite Altimetry Observations and Source Model for the Tsunami from the 2025 M 8.8 Kamchatka Earthquake | The Seismic Record | GeoScienceWorld
https://pubs.geoscienceworld.org/ssa/tsr/article/5/4/341/718867/SWOT-Satellite-Altimetry-Observations-and-Source

Satellite captures the first detailed look at a massive tsunami - Earth.com
https://www.earth.com/news/satellite-captures-the-first-detailed-look-at-a-giant-tsunami/
2022年、
NASAと
フランス国立
宇宙研究センターが共同で、SWOT(Surface Water and Ocean Topography)という地球観測用の
人工衛星を打ち上げました。SWOTは地球の表層水の高度を調査するための
人工衛星であり、地表面にレーダ
パルスを送信し、反射して戻ってきた信号を2つのアンテナを同時に用いて三角測量を行うことで、海面と表面水位を測定することが可能です。
そして2025年、カムチャッカ半島付近で巨大
地震が起きて太平洋全域に
津波を引き起こした際、たまたまSWOTが上空を通過していたため、巨大
津波の詳細な姿を捉えることができたそうです。これまでは、海底の温度と圧力の変化を記録するブイ型のシステム・DART(Deep-ocean Assessment and Reporting of Tsunamis)が外洋の監視装置として最適でした。しかし、DARTは感度が高い一方で設置数に限りがあり、単一地点の時系列データしか提供できないという限界がありました。
これに対しSWOTは、1回の通過で幅約120kmもの海面高を測量するため、
科学者が
津波の形状変化を空間的にも経時的にも捉えることが可能です。論文の筆頭著者であり、
アイスランド大学の物理海洋学者であるアンヘル・ルイス=アングル准教授は、「SWOTデータは新しい
メガネのようなものだと考えています。以前は、DARTを使って
津波を観測できたのは広大な海の特定の地点だけでした。これまでにも他の衛星はありましたが、最良のシナリオでも
津波を横切る細い線しか捉えられませんでした。しかし、SWOTを使えば、最大約120kmもの幅を捉えることができ、これまでにない高解像度の海面データを得ることができます」と述べています。

従来の考えでは、海盆全体に広がる大規模な
津波は、まるで浅瀬の波のように非分散性の振る舞いを見せるとされていました。
津波の波長は海の深さをはるかに超えるため、個々の波に分散することなく、浅瀬の波のように波形を変えることなく遠くまで広がるという考えです。
しかし、今回SWOTが捉えた波形画像は、海盆を横切る単一の整然とした波頭ではなく、数百kmにわたって拡散・散乱するエネルギーの複雑な網目状パターンを示していました。これは、従来の機器ではほとんど捉えられていなかった詳細だとされています。
以下の画像は、SWOT観測による海面高度を示したもの。この画像からは、
津波が分散しているらしいことがうかがえるとのこと。

研究チームが
津波の分散効果を組み込んだ数値
モデルを実行したところ、シミュレートされた波動場は「非分散性の
津波」を想定して実行した場合よりも、SWOTが観測したパターンとはるかによく一致したと報告されています。この結果からは、
津波はこれまで考えられてきたように非分散性のものではなく実際には分散しており、陸地に近づくにつれて波のエネルギーが再パッケージ化されていることが示唆されています。
ルイス=アングル氏は、「この観測結果が
津波モデル作成者に与える主な影響は、これまで実行してきた
モデルに何かが欠けているという点です。この余分な変動は、主波が海岸に近づく際、後続波によって変調を受ける可能性があることを示している可能性があります。この過剰な分散エネルギーを定量化し、これまで考慮されていなかった影響があるかどうかを評価する必要があります」と述べました。