15日に開幕を迎えた東京2025デフリンピック。日本では初めての開催ということで正直あまりなじみはないのですが、デフリンピックとは国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)の主催により4年に一度行なわれる「きこえない・きこえにくい人のためのオリンピック」のことです。日本ではなじみがあまりないだけで今回で100周年を迎える歴史と伝統ある世界大会です。
きこえない・きこえにくい人のための大会ということで、大会運営においては手話による表示・コミュニケーションや、ランプ・ハンドサインなどを用いての試合進行とはなるものの、やることそのものは基本的に世のなかで広く行われている各競技と同じです。ですので、なかには不自由ない人たちのなかでもトップのパフォーマンスを見せる選手が実はデフアスリートでもあって、デフリンピックにも出場するというケースも。日本勢では9月の世界陸上男子円盤投げに出場した、日本記録保持者でもある湯上剛輝さんが代表格でしょうか。
日本・東京は東京2020オリンピック・パラリンピックを開催しまして、パラリンピックで活躍した選手はスターとなり、世間的にも選手たちを通じて障がいへの関心や理解が高まったり、社会的なインフラも整備されたりと大きな前進を生み出してきました。同じように、きこえない・きこえにくい人に対してもこのデフリンピックを通じてさまざまな前進を生み出していけるはず。そんなことを思いつつ、楽しみと学びを兼ねて観戦してきた次第です。
↓やってきました東京デフリンピック!
↓この日はテニス競技を観戦しました!
実は15日の開会式に参加したいと思って応募などもしていたのですがそちらはご縁がなく、本格的な競技開始を迎えた16日の始動とすることに。特に何もなければハンドボールとバレーボールを1ヶ所で観戦できて、しかも両方日本代表戦があるという駒沢オリンピック公園が一番のホットスポットだったかなと思いますが(※ホット過ぎて入場規制もかかったとのこと)、デフリンピックとはまったく別口でバスケBリーグのナイトゲームを観戦する予定がありまして、移動の利便性などを考えて有明で行なわれるテニス競技をチョイスした次第。
各種目の1回戦が同時並行で行なわれるということで、有明テニスの森公園全体がデフリンピックモードになっています。有明コロシアム、ショーコート、屋外コートも複数面を使って展開される競技は、一大テニス祭りといった様相。しかもこの大会は入場無料・予約も不要という自由観覧制なので、僕もショッピングモールでも歩き回るようにあちらこちらと移動しながら、いろいろな試合を見守っていきます。
↓来場時にリストバンドをもらいましたが、別にこれがチケットということではありません!
大会ロゴが入ったのぼりや、各種の案内看板、建物に貼られたバナーなど見ると、確かにこれがデフリンピックだというのはわかるのですが、何も意識せずに過ごすぶんには「いつもの何かの国際大会」と変わりません。あえて言うなら、DJ的な音楽がジャガジャガ流れていないなとか、DJ的な音声アナウンスや盛り上げ実況が少ないなとは思いますが、モニターでの視覚的な表示も少ない運営だったりするもので、「単に何もないだけ」という気もしてきます。よく知らない競技のよく知らない大会とか、結構こんな感じだったりするので、「こんなもんっちゃこんなもん」という話ではあります。
↓屋外コートの得点表示はこんな感じのヤツを、係員さんが手動で動かしてました!
↓一応モニターもあるのですが、外だと明るくてよく見えないですね!
ただそれでもいろいろ意識していると、デフリンピックらしさもうかがえます。本部テントや各試合会場では音声なしでも情報が伝わるように、手話通訳やモニターでの情報表示だったりが用意されていますし、字幕で会話ができるようにする装置なども据えられています。観衆用にも絵柄を指差すことで簡単な意思疎通ができるように作られた「ユニバーサル・チャットボード」なる冊子も無料配布されていました。
試合中も審判は声でいろいろ言ったりもしつつ、ハンドサインで選手たちに判定や試合状況を伝えています。そして観衆たちも、おそらくは自身もきこえない・きこえにくい人たちも多くいるようで、手話による応援をしていたりします。観衆同士で手話で雑談などしながら、選手がいいプレーをすればバナーを掲げたり、手話で応援や賞賛の気持ちを示したり。それは「いつもの何かの国際大会」と大きな違いがあるわけではなく、少し気が利いていれば、少し意識があれば、伝えることも受け取ることもいつもちゃんとできるんじゃないかと思える光景です。いつもの世界大会も、あと少し最初から気が利いていてもいいのにな、と思うような。
↓そのほかさまざまな意思疎通の技術がありますよ…と案内するのも手話が得意なデジタルヒューマン!
↓試合でも審判がハンドサインで得点を表示していたりしました!テニスなのでこれで「15-0」です!
僕も特に普段の観戦と変わることがあるわけでもなく、いつも通り拍手で応援しますが、この日は手話の「拍手」を使います。手話も日本語手話と英語手話は違うとか何ヶ国語もあるそうですが、拍手の手話は世界共通のものがあるそうで、どうせいつも拍手と独り言しかしないなら世界共通の「拍手」を覚えていけばいいじゃないかと。手話では「腕を水平に開き、顔の横あたりで広げた手の平をヒラヒラさせる」(※正しい動作は各自で確認いただくとして、イメージとしては柳沢慎吾さんのパトカーみたいな感じ)が、拍手の意味になるとのこと。いいプレーのあとには「拍手」の動きをしている人がたくさんいて、僕も新鮮な気持ちで応援の一体感をヒラヒラ堪能しました。
そんな感じで各試合場を練り歩いていきますと、センターコートである有明コロシアムと観客席付きの中規模会場であるショーコートでは、男子シングルスの1回戦が行なわれていました。スタンドには参加国の国旗なども飾られ、オリンピック・パラリンピックのことを思い返すようないい雰囲気です。客入りはもう少しというところではありますが、それでも熱心な観衆たちが試合を楽しんでいました。まぁまだ1回戦ですし、日程が進んで盛り上がっていけば、多くの観衆の前での熱い試合となることでしょう。
むしろこの日は屋外コートのほうが盛況です。この日登場の日本勢は皆さん屋外コートでの試合でしたので、観衆も基本的には屋外コートに滞留していた感じなのかなと思います。日本勢の試合が行なわれるコートには、コートを取り囲むようにグルリと人垣ができ、手話とバナーと歓声とで熱い応援が贈られています。日本勢贔屓はごく自然にありつつも、世界の選手たちを迎える喜び、おもてなしの気持ちが広がる空間だったなと思います。日本勢的には苦戦の日でしたが、互いの頑張りと勝者の強さを讃えるような笑顔と「拍手」でいっぱいでしたからね。
↓有明コロシアムで無料のテニス観戦なんて贅沢な気分!
↓ショーコートは距離も近くて見やすい!
↓日本勢が複数面で同時に試合を行なっていた屋外コートはなかなかの賑わい!
僕も多くの時間は日本勢の試合に張り付きまして、男子シングルスの今井悠翔さんの試合や、女子シングルスの杉本千明さんの試合を見守りました。惜しくも勝利はなりませんでしたが、デフリンピックが開催されて、応援する人とともにこの日を迎えられたこと、それ自体が大きな一歩だったのかなと思います。試合後、荷物を担いで帰る今井さんに労いの拍手を捧げましたところ、爽やかな笑顔でありがとうございます!と返してもらいまして、こちらの思い出にも残るような時間となりました。
↓今井悠翔さんは第1セット取るも1-2で惜敗!
↓杉本千明さんはなかなかボールが返らず0-2で敗れました!
とまぁ結果はほろ苦い部分もありましたが、テニス日本勢には全豪オープンのデフ部門を制すなど、今大会ではシングルス・ダブルスで合計3冠を目指す菰方里菜さんという有力選手もいますので、ちょっと気にしていけたらいいなと思いました。また、オリンピックにはないオリエンテーリングとかボウリングといった競技もありますので、新鮮な体験を求めていくのもいいなと思います。日本の東京で開催されるというこの希少な機会、よりよい気の利いた世のなかへの前進と、自分の未来の楽しみにつなげていけたらいいなと思います。東京2025デフリンピック、楽しんでいきましょう!
公式サイトに各会場の混雑状況が出ているので、観戦時はご参照ください!
スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム
フモフモ編集長
さまざまなジャンルのスポーツを"お茶の間"目線で語る人気のコラム