先制直後の追加点が勝敗を大きく分けた。後半17分に先制点を奪った
鹿島アントラーズは同20分、DF小川諒也の右CKからMF知念慶がヘディング弾。そのわずか2分後には1点を返されるピンチもあったが、この1点リードを守り切って勝ち点3を掴み、9年ぶりの優勝に大きく前進した。
さすが本職FWという完璧なヘディングシュートだった。「諒也から質の高いボールが来て、マーカーとの駆け引きも勝ったのでドンピシャで合わせられた」(知念)。ゴールの直後にはド派手なガッツポーズで喜びを表現。その背景には4年ぶり勝利への渇望に加え、故郷から観戦に訪れていた
家族の存在があったという。
「沖縄が親が来ていたのでめっちゃ嬉しかった。年に1回くらいしか親は来ないので、そういう試合で決められたのが良かった」。愛知学院大進学とともに親元を離れた後もサッカーキャリアを支えてくれた
家族に、これまで「フロンターレの時に1回だけ」だったというゴールという最高の
プレゼントを贈った。
チームとしても価値の大きな1点だった。「1点じゃああいう失点シーンのような事故みたいなことも起こりうるので、2点目を取れたのは大きかったし、セットプレーは自分たちの強みでもあるので今季終盤でも出せたのは大きかった」。直近3試合連続で引き分けが続いていたなか、確実に勝ち切るための決勝弾となった。
この勝利により、鹿島は2位との勝ち点差1を保ったまま首位で残り2試合へ。川崎F時代にも師事していた鬼木達監督のもと、新体制1年目での王座に近づいている。2017年、川崎Fで初優勝を経験していた知念も現在のチームに手応えを感じている。
「鬼さん1年目で、当時も鬼さん1年目で。鬼さんが来るとチームの雰囲気がタイトルを取るチームの雰囲気になるなと個人的に思っている。いまはタイトルを取れるようなチームの雰囲気が練習からあるので、あと2試合勝って決めたい」
“タイトルを取れるチームの雰囲気”というのは、鬼木監督の「常に安心させてくれない」姿勢から来ているという。
「上を目指すことを常に言われるし、どんなにいい試合をした後でももっとできると厳しく言われる。選手たちももっともっとという欲が出てきて、もっとやれるという雰囲気みたいなものが常にチームはある」
知念自身も今季、その雰囲気と正面から向き合ってきた。昨季はランコ・ポポヴィッチ監督のもと、ボ
ランチ挑戦1年目にしてJ1リーグ戦33試合に先発出場していたが、今季は旧知の鬼木監督のもとで出番が激減。日本代表経験者の
柴崎岳と
三竿健斗に加えて23歳の舩橋佑の台頭もあって前半戦の先発出場は5試合にとどまり、途中出場での出番が中心だった。
それでも後半戦は途中出場の際でもプレータイムが伸び、先発も出場停止試合を除く直近10試合で5試合を記録。徐々に信頼を掴み始めている。
「鬼さんは常に成長を求めてくる方なので、自分自身去年はずっと試合に出て、いいシーズンを過ごせていたけど、鬼さんは『もっとできる』と練習から厳しく指導していただいている。そこでもがいている時期もあったけど、今は求められていることをしながら自分の持ち味を出すという良い状態になれていると思う」(知念)
その過程ではボ
ランチとしての成長も、鬼木監督が求める役割の整理も進んでいる。「まだボ
ランチを始めて2年目で伸び代もまだあると思うし、でも去年と比べればできることはかなり増えたと思う。頭の整理もシーズンを経るごとにできるようになったと思う。自分の持ち味を失わないように新しいことにトライできている期間だと思う」。その結果、直近の先発3試合で2得点と数字もついてくるようになった。
そうして手応えを重ねながら迎える残り2試合。知念にとっては川崎F時代に叶わなかった“主力としての優勝”という目標への挑戦ともなる。「フロンターレの時は僕は優勝を経験したけど主力ではなかったので、この状況は新鮮な気持ちもある。今日勝ったことでもっと雰囲気も良くなると思うし、3週間空くけどまたチームとしてリセットして次に向かえれば」。苦境を乗り越えてひと回り大きくなった30歳が常勝軍団に9年ぶりのリーグタイトルをもたらす。
(取材・文 竹内達也)