いわば付け焼き刃のパワープレーは不発に終わった。
サンフレッチェ広島のミヒャエル・スキッベ監督は1点を追う後半33分、ACLEからの連戦によってベンチに控えていた日本代表CB荒木隼人をFW起用する“奇策”を敢行。ところが空中戦に強みを持つ荒木を活かすようなボールはほとんど配球されず、攻撃が停滞した結果、カウンターから2失点を喫する結末を迎えた。
荒木は9月12日の京都戦(△1-1)でも同点の状況で同様の前線起用を経験していたが、当時は配球に強みを持つMF中島洋太朗との交代。今回はターゲット役にもなれるFWジャーメイン良に代わっての投入とあり、ゴール前での攻勢をかけていくというムードのなかでは驚きの起用だった。
荒木によると、自らも「想定はしていなかった」という起用だった模様。試合後、スキッベ監督は「セットプレーがたくさんあったので隼人を前に入れた一つの理由」とゴール前の制空権を握ることが狙いの一つにあったことを明かしたが、ピッチ上ではビルドアップとロングボールが散発的に繰り出される状況が続いており、意図が伝わっていない様子が感じ取れた。
明確な意図で
ハイボール攻勢が行われるのであれば荒木の高さや強さが活きる局面は作れそうだが、状況判断によってロングボールのターゲット、ビルドアップのサポート、クロスに対するシュートが求められるとなると、本職FWではない選手が担うのは難しい。
荒木もこの日の役割には「京都戦も今日もボール自体は保持できている状況だったので、なかなか僕の良さは活きにくいですよね。ただ放り込むだけならストロングは出ると思うけど……」と複雑な表情。「横からのボールを狙うしかないと思っていた。上がってきたらいいなと思っていた」とクロスに対する反応に絞って役割を定めていたようだった。
今後も1週間後の11月1日にはルヴァン杯決勝、11月16日には
天皇杯準決勝とカップ戦の大一番が次々に控えるなか、得点を狙う緊急手段として採用される可能性はありそうだが、現時点では効力は未知数。荒木自身も連戦でなければ主力CBを担う立場とあり、まずは「一番は自分が前に出ないといけない状況にならないようにするのが一番ベストかなと思っています」と守備の役目に徹していく構えだ。
ただ、J1リーグ戦での優勝争いからは大きく脱落したなか、残るタイトルに向けてこの敗戦自体は教訓にしていくしかない。
「この数試合、なかなか結果も内容も良くない中、次の決勝に向けてと捉えると
ネガティブな部分もあるかもしれないけど、いま
ネガティブなものがあるからこそ、来週より良い準備ができるかなと僕自身は思っている」
そう話した荒木は2022年の
天皇杯決勝、ルヴァン杯決勝の連戦を回顧。「実際に3年前のルヴァン杯も1週間前に
天皇杯決勝に負けて、悔しい思いをして、そこから自分たちが戻ってきて優勝できた。同じように行くとは思っていないけど、改善できるところを改善してやっていきたい」。週2試合ペースの連戦が続いていた広島にとって、国外遠征を伴わない丸1週間の準備期間が設けられるのは7月下旬〜8月上旬の中断期間以来初めて。立て直すための時間は十分にある。
(取材・文 竹内達也)