実は瀬戸内海で進行しているのは、ムラサキウニが海藻を食い荒らすことで藻場が消失し、魚介類の生息環境が失われる「磯焼け」という現象。天然のワカメやコンブなどが海に生えなくなってしまい、従来の海洋資源が乏しくなってきています。

これを解決しようと立ち上がったのが、多度津高校海洋生産科(大坂吉毅 教諭)と、
香川県を中心に和食店を展開する遊食房屋。「
讃岐うどん製造の過程で発生する"ゆでこぼし"や"余剰うどん"を冷凍保存し、ムラサキウニの餌として再利用できないか」というアイデアで2023年にプロジェクトがスタートしました。
庵治漁業協同組合の協力も得て、駆除対象だったムラサキウニを「
讃岐うどん雲丹」として陸上養殖を開始したのが2024年4月。多度津高校の高校生が給餌管理を担当し、うどんだけでなくイリコやコンブなど様々な材料で比較し、結果的に廃棄うどんを冷凍保存し、ウニの餌として再利用する独自手法を確立しました。

給餌の様子
「一番苦労したのは、与える餌によって味がどう変わるかを確かめる実験でした。イリコを加えると少し苦みや渋みが出たり、昆布では雲丹がうまく消化できなかったりと、いろいろな組み合わせを試しました。最終的に、うどんだけを与えた雲丹が一番甘くて、柔らかい味わいになったときは本当にうれしかったです。自分たちの研究の成果が“商品”として形になるのを見て、とても誇らしく思います」

高校生・卒業生たち
その後味や品質の試験などを繰り返し、ウニの成長速度・色味・甘みなど、商品化へのデータを蓄積しついに今日に至りました。これにより海洋環境保全と、食品廃棄物の再活用につながり、藻場再生と資源循環の両立を目指すことができます。
「讃岐うどん雲丹は、これまで生徒と一緒に取り組んできた研究の中でも、最も成果の大きいプロジェクトの一つです。香川の新しい特産品という枠を超えて、磯焼け対策(ブルーカーボン)や漁場の回復、食品ロス削減といった、地球規模の課題を多角的に捉え、“海と食の循環”を実現できた好例だと感じています」
とは多度津高校 海洋生産科の大坂吉毅教諭。実際の「
讃岐うどん雲丹」は、従来の海藻育ちよりも早く成長し、白くクリーミーな味わいが特徴となったそうです。遊食房屋では「
讃岐うどん雲丹 お刺身」として提供しており、その素材の味を楽しむことができます。

「讃岐うどん雲丹は、香川の食文化と海の恵みがひとつにつながる“循環の食材”。多度津高校の先生や生徒さん、庵治漁協、行政の皆さんなど、多くの方々の協力によって実現したものです。地域みんなで育てたこの『讃岐うどん雲丹』が、香川を代表する新しいブランドとなり、ゆくゆくは全国の皆さんにも味わっていただけるようにしていきたいと思います」(遊食房屋 細川明宏マネージャー)

今後、2026年夏頃には新養殖場の開設を準備しており、2027年には東京築地・豊洲市場での全国販売や、ふるさと納税での販売も計画に入っているそうです。「
讃岐うどん雲丹」を食べることが、海の保全につながる…そんな光景が全国に広がるのも近い将来かもしれません。