脳腫瘍は強い頭痛や吐き気、
運動マヒや
言語障害といった症状を呈する命に関わる
病気ですが、その兆候となる症状には単なるストレスや睡眠不足などと間違われやすいものが多いことがわかっています。
ロンドン大学クイーン・メアリーのウルフソン人口研究所で博士研究員を務める
ローラ・スタンデン氏らが、見過ごされがちな「脳腫瘍の7つの兆候」について解説しています。
The seven symptoms that can delay brain tumour diagnosis - and why early detection matters
https://theconversation.com/the-seven-symptoms-that-can-delay-brain-tumour-diagnosis-and-why-early-detection-matters-266215

スタンデン氏らが研究の一環として脳腫瘍患者らと話をしたところ、患者自身もかかりつけ医も早期の症状を軽視することが多く、それが診断の遅れにつながるケースもあったことがわかりました。実際、脳腫瘍の症状には疲労やストレス、片頭痛、
更年期障害などと似ているものもあり、ある患者は2〜3カ月も症状を無視していたそうです。
スタンデン氏らが話をした患者らが報告した「軽視してしまった脳腫瘍の兆候」は以下の通り。なお、これらの症状が1つ以上あるからといって、必ずしも脳腫瘍があるわけではありません。
◆1:言葉が見つからない
脳腫瘍患者の中には特定の言葉を思い浮かべたり、まとまった文章を作ったり、会話にスムーズに参加したりするのが困難になったと感じていた人もいました。ある患者はこの状態を「奇妙で普段と違う」と思ったものの、気に留めることはありませんでした。また別の患者は、何かがおかしいと感じつつもその経験を話すこと自体ができなかったため、文章に書き記していたとのこと。言葉が思い浮かばない原因には疲労やストレス、不安なども考えられますが、問題が長期間持続したり突然現れたりした場合は、医師の診察を受けた方がいいかもしれません。
◆2:ブレインフォグ
何人かの患者は集中力や思考力の低下、記憶力の低下といったブレインフォグと呼ばれる症状を訴えていました。ある患者はブレインフォグを経験してかかりつけ医の予約を取ったものの、予約時間には「自分がなぜ予約したのか」を忘れてしまい、結果的に脳腫瘍が見過ごされてしまったとのことです。
スタンデン氏は、「ブレインフォグは更年期や睡眠不足、ストレスなどさまざまな要因によって引き起こされる可能性があります。ある患者の
家族は、『症状が現れた時、みんな
更年期障害だろうと答えていました』と回想していました。しかし、ブレインフォグが
言語障害や
視覚障害といった他の神経学的変化を伴う場合、注意が必要です」と説明しました。

◆3:体のしびれやチクチクする感覚
一部の患者はしびれやチクチクする感覚が体中に広がったと報告しており、2人の患者は「体の片側だけ」に症状が出たとのこと。これらは、脳腫瘍が脳の感覚野や
運動制御野を侵した場合に起こる症状です。しびれなどの原因には神経の圧迫や血行不良、片頭痛といったものも考えられるものの、症状が現れたのが突然だったり、体の片側だけに症状が出たりする場合は医師の診察を受ける必要があります。
◆4:
視覚障害視覚の変化も脳腫瘍の初期症状のひとつで、患者からは「
テレビを見ている時に線が二重に見えた」「マグカップがすべて楕円(だえん)形に見えたので、怪しいマグカップが大量に送られてきたのかと尋ねたら、周囲の人々から『何を言ってるんだ?』と聞かれた」といった証言が挙がっています。
こうした視覚の変化は眼精疲労や片頭痛などが原因となっている場合もありますが、それが突然起こったり異常性が高かったりする場合や、頭痛・めまい・発話困難・体の片側の脱力感やしびれといった他の症状を併発している場合、医師に
相談するべきです。

◆5:字が汚くなる
ある患者は「ある時、字が書けなくなったんです。会議中にメモを取っていたんですが、字がひどく汚くなってしまいました」と語っています。これは手と目の協調
運動能力が低下したことによるもので、単なる疲労や注意散漫が原因の場合もありますが、脳腫瘍が細かい動作を調整する脳の
運動制御野に影響を及ぼしている兆候でもあるとのこと。
◆6:
性格の変化
行動や気分の変化は目に見えないものの、自覚できるほどはっきりと現れる場合があります。ある患者はスタンデン氏らに対し、「特に何も考えていませんでした。ただ、仕事にうんざりして
早期退職したかったんです」と述べており、こうした
性格の変化は燃え尽き症候群のせいだろうと考えていたそうです。ライフステージの変化やストレスによって
性格が変わるのは自然なことですが、特に他の症状を併発していたり、その変化が突然または顕著だったりする場合は、脳腫瘍が原因となっている可能性もあります。
◆7:頭痛
頭痛はよくある症状であるため、多くの場合はそれほど心配する必要はありません。しかし、脳腫瘍だった患者が経験する頭痛は絶え間ない痛みが続くものであり、時には1週間以上も頭痛が続く場合もあったそうです。

スタンデン氏らは、「脳腫瘍の症状は多様で、日常的な症状と重なることが多いため診断は困難です。ここに挙げた症状はほとんどの場合、がんとは無関係です。しかし、異常な変化が同時に現れたり、予想よりも長く続いたりする場合は無視すべきではありません」と述べ、違和感があったら医師の診察を受けるべきだとアドバイスしました。