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タイトルを知らずに本が届くサブスク〜本×出会いをロマンチックに
東京・新宿区の「ミヅマアートギャラリー」。現代アートが飾られている館内で、じっと本を読んでいる人たちがいる。アートな空間で
読書をしてみようという一風変わった
イベントだ。リリースから3日で予約が埋まるほどの人気になっている。

この
イベントを仕掛けた「ミッションロマンチック」代表・森本萌乃(35)は「月に30冊は読みます。本だけは飽きることがないんです。飽き性なのに、読めば読むほど、本は遠い。『もっともっとあるはずだ』と思ったら本当にあるので、本屋で良かった」と言う。
森本が「本屋」と呼ぶ仕事は「チャプターズ」と名付けた会員制のオンライン書店。月額2530円のサブスクサービスで、月に1度、チャプターズが薦める3冊の本から会員が選んだ1冊が自宅に届くというもの。

会員に薦める3冊の基準は「冒頭100ページで没頭できる作品であることと、文庫本であること。文庫は出版社が『長きにわたって愛される本』ということで出すので」(森本)と言う。
薦めるのは森本とスタッフの脇田七海が読んで没頭できた文庫本。ただし、会員に薦める本に関してそのタイトルや著者はあえて伝えない。選んでもらう段階ではタイトルを伏せ、内容が書かれた推薦文だけで読んでみたい1冊を決めてもらう。
このやり方に会員は「選書されている本は面白いし読みやすいし、人に選んでもらうのが楽しい」「自分では選ばない本が候補に挙がるのが面白い」と言う。
熱心なファンがつくほどサービスは好評で、2021年の開始から4年で利用者はのべ8000人を超えた。
実はこのサービスの最大の特徴は別にある。それは「チャプターズ」が取り持つ男女のマッチングサービスだ。
同じ本を読んだ会員同士で感想をオンラインで語り合う。読んだばかりの本の感想だから会話も弾むが、最初は相手の顔が見えていない。しばらくすると首から下だけが映り、さらに時間が経つと顔が見える。トークタイムの20分の中で徐々に顔が見えてくる仕掛け。もちろん相手も同じ状態だ。

あっという間に過ぎてしまうというトークタイムを終えると、連絡先を交換したいかどうかを「イエス、ノー」で申告。両者「イエス」なら、その後もやり取りができる。
参加した男性会員は「本好きという(相手との)親和性があるので、比較的話すのに困らない。顔が見えなくて同じ本の感想を言い合う、そこに集中できるのが面白い」と言う。
本棚から同じ本を取ろうとした男女が出会う。そんなロマンチックなシーンが会社のロゴになっている。
「映画でよくある、本棚で手と手が重なって『お茶でも』みたいな。私も
人生で1回ぐらいそんな経験をしたいと思ってつくりました」(森本)

東京・新宿区にある「ミッションロマンチック」のオフィスにはカフェも併設されている。最近ではここを拠点のひとつにさまざまな
読書イベントを開催。リアルな
出会いの場としても提供している。
「チャプターズ」を通じて
出会い、
結婚したカップルも。これまで報告があっただけでも6組がゴールインしているという。
突然の解雇で一文なしに〜資金調達で40連敗も
森本は大学を卒業後、第一志望だった電通に入社するが、4年で退職する。その後、2回転職したが、コロナ禍に職を失った。
当時、副業として選書サービスを始めていた森本はこれ一本でやっていこうと決断。「できることは何でもやろうと思いました」と言う。
しかし、やる気だけではどうにもならない現実が。初期
投資による
借金が1000万円。資金調達に奔走したが、40社に断られた。
「40社のうち最後のほうは、泣かないようにするのに必死でした。生活費は数千円、数万円で、あと3カ月お金が振り込まれなかったら倒産しちゃう、と」(森本)
それでもこの事業を諦めなかった森本を支えたのは「『本で人と出会うっていい』を疑ったことがない。諦めなかったのは誰よりも『チャプタ―ズ』を信じていたから」と言う。
本からロマンチックな
出会いを生み出してみたい。そんな一心で資金集めを乗り切り、大量の本を読んでは、これだという作品を探し出してきた。
「本は本当に利益が薄いんです。選書という全く違う概念で『本を薦める』ことで利益がポンとつく。新しい利益構造なので、これが広まれば出版や書店業界でも本を読む人が増えることにつながると信じて、地道にやっています」(森本)
最近はネットのサブスクサービスだけでなく、対面での個人向け選書サービスも行っている。
「選書は連想ゲームみたい。ミュージカルが好きなら華やかなものが好きで、華やかだったら海外文学とか」(森本)
対面選書サービスは地方でも展開。全国から依頼が来ているという。その人に合った本を選ぶ。森本は選書という行為に新たな価値を生み出そうとしているのだ。
「本は絶対なくならないと思います。
読書って楽しいから。でも選書という選択肢はまだない。それをどれだけつくれるかをやっていかないといけないと思います」(森本)
創業135年こだわりのかまぼこ〜「魚を食べているよう」
福岡市の百貨店「ソラリアプラザ」で催されていた九州の特産品を集めた物産展。その一角で笑顔を振りまき、アピールしているのが食品メーカー「吉開の
かまぼこ」社長・林田茉優(28)だ。
売っていたのは「古式
かまぼこ」と名付けられた商品だけ。1本918円と、スーパーの
かまぼこよりかなり高めだ。試食した客は「魚の味がする」と口をそろえる。

福岡・みやま市の製造現場は築130年以上という工場。「吉開の
かまぼこ」は1890年創業の老舗で、林田は4代目になる。
「エソという魚を100%使って、昔ながらの製法で作っています」(林田)
エソは練り物の原料としては最高級とされる魚。長崎の水産加工業者に特注し、すり身で仕入れている。つなぎは一切なし。エソのすり身と昆布だし、みりん、天然の塩だけで自然派の
かまぼこを作り上げている。
その分、手間もかかる。一般的な
かまぼこはつなぎの卵などで弾力を出しているが、「吉開の
かまぼこ」は一度40度で寝かせることで魚の成分であるタンパク質を凝固させ、プリプリな食感を実現しているという。
こだわりが詰まった「古式
かまぼこ」は先代の吉開喜代次が8年かけて開発した。体調を崩し、一時は廃業状態に陥っていたが、林田が後継者に。3年間の技術指導を受け、製造を再開させた。

現在、林田を含めスタッフは3人だけ。「全員未経験です。工場長も素人」(林田)だ。
その工場長・田中慶太もまだ30歳。「以前はプログラミングをしていて、ひょんなことから『手伝ってみないか』と言われ、いつの間にか工場長」と言う。
素人集団だけに失敗も多い。昔ながらの製法は、特に品質の維持が難しいという。
「水の量か、寝かせる時間か、練る時の温度か。どれが原因なのか、日々試行錯誤というのはあります」(林田)
悪戦苦闘しながら改革も行ってきた。モニターに映し出されたのは製造に関する湿度や温度などの4年間のデータ。先代がノートに残していた記録も含め、全てクラウド上に保管しスタッフで共有し、有効活用している。

「この技術を未来につないでいく上で基準を設けることができれば。初めてつくる人でもこれを守れば最低限のクオリティーを出せる基準を明確にすることが大事なのかなと思っています」(林田)
林田は商品の売り方も変えた。祝い事の贈答品として打ち出し、上品なパッケージのギフトボックスを開発。
かまぼこのパッケージやロゴも一新した。

オンラインでの販売も始め、今やその売り上げは全体の約7割を占めるまでになったという。
職人の技を守りたい!〜スーパー素人の老舗復活秘話
実は林田は、
かまぼこ店と縁もゆかりもなかった。福岡大学時代、後継者問題に興味を持ったきっかけは、ある町工場に関するニュースだった。
「ゼミの先生が『日本のものづくりはすごいんだ。中でも岡野工業という会社がある』と話して、何となく『すごいな』と思っていたら、1週間後に『岡野工業が廃業』というニュースが出たんです」(林田)
世界トップクラスの技術力で髪の毛より細い注射針などを開発した岡野工業だが、突如廃業。林田は、宝のような技術が突然途絶えてしまうことにショックを受けたという。
その経験からほどなく、地元・福岡県内でも同じような問題が起こっていることを知る。その企業が「吉開の
かまぼこ」だった。
先代の体調が悪化し2018年に休業。「いずれは廃業する」と言われていた。いても立ってもいられず、林田は吉開に会いに行く。
「いわゆる本物を追求している。私には“第2の岡野工業”と言っていいぐらいの衝撃があって、そういうところを応援したいと思って、気がついたら吉開さんの手を握って『復活に向けて手伝わせてください』と言っていたんです。そうしたら吉開さんも急に現れた
大学生の手を握り返して『ぜひお願いします』と言ってくださって」(林田)

130年続く
かまぼこ店を復活させたい。その一心で先代を説得し、事業承継してくれる会社を探し始める。
そんな中で出会ったのが当時システム会社の社長だった瀬戸口将貴さん。「地元・福岡に貢献したい」という思いから、畑違いの「吉開の
かまぼこ」の買収を決めてくれた。
「やっぱり誰か任せられる人を見つけるしかないと思い、いろいろ考えると林田さんしかいないとなって、すぐ電話しました」(瀬戸口さん)
突然、社長をやってみないかと言われ、林田は悩みに悩んだという。
「経営もやったことがない、
かまぼこをつくった知識や経験もない。スーパー素人なので吉開さんに
相談をしました。『このままだと社長になるかもしれない。正直どう思いますか?』と聞いたら、大きな声で『それよかやんね』と言われたんです」(林田)
技術や経営手腕より熱い思いを持つ人が周りを動かしていくと諭され、林田は社長を引き受け、3年間、技術指導を受けた。
新しい販路を開拓しようと飲食店に自ら飛び込み営業も。購入を決めた「蕎楽亭」店主・長谷川健二さんは「やっぱり人柄じゃないですか。『買ってください』と言うのではない。単純に『これはいいものだから』と言う、それだけですよ」と言う。
いいものだから守りたい。林田はその思いに
人生を賭けている。
「せっかく復活したこの商品を、日本全国の多くの方に知ってもらうために、足を使いながら販路を広げていく。その先に、海外にも日本の伝統食である
かまぼこを広げていくことに挑戦していきたいと思っています」(林田)
※価格は放送時の金額です。
〜村上龍の編集後記〜
二人とも若く、よく喋ったが、話は論理的だった。森本さんは、映画『
耳をすませば』からビジネスのヒントを得たらしい。映画を見て走り書きしたメモが原型になっている。林田さんは、あとを継いだとき、「
かまぼこ」の魅力をどういう風に
言語化するか考え、それを軸にロゴマークを作った。「いい後継者がいたら、わたしは辞めるかも」と言うので、「そういう人は意外に辞めない、案外続ける」とわたしが言うと、楽しそうに笑った。二人はスタートしたばかりだが、焦りなどは感じられない。むしろ落ち着きがあった。
<出演者略歴>
森本萌乃(もりもと・もえの)1990年、東京都生まれ。2013年、中央大学法学部卒業後、電通に入社。2019年、MISSION ROMANTIC創業。2020年、Chapters開業。
林田茉優(はやしだ・まゆ)1997年、福岡県生まれ。2020年、福岡大学経済学部卒業後、物流会社に入社。2021年、吉開の
かまぼこ代表取締役社長就任。
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