独身だった頃の麻衣は、子持ちの同僚に対して
ネガティブな感情を抱いたことは一度もなかった。むしろ、「大変そうだな」「子どもの体調不良は仕方ないこと」と心から思っていた。いつもバタバタと早退していく先輩を見て、申し訳なさそうにしている姿に、むしろ心を痛めていた。
だが、
SNSの世界は違った。そこでは、子育てをしながら働くことは「特権」のように扱われ、その恩恵を受ける者は「様」付けで皮肉られる。
「私も、そんな風に思われるのかな……」
画面の向こうの「冷たい社会」と、視野が狭まる孤独な闘い
SNSにショックを受けた麻衣は、吐き気がするほど「復帰したくない…」と思うようになった。
子どもを生み、日々懸命に育てている身なのに、なぜこんなにも肩身が狭いのだろう。保育園に入れた途端、最初の数ヶ月は驚くほど休むことになるのは目に見えている。そのたびに、誰かに皺寄せがいき、その皺寄せを受けた人が、心の中で自分を「子持ち様」と罵るのかもしれない。
復職後、もし自分が早退するたびに、誰かが内心で舌打ちをしているとしたら?想像するだけで胸が苦しくなる。SNSの投稿は、社会全体が子持ちに冷たいという現実を、声高に叫んでいるように感じられた。
とはいえ、夫の給料だけでは生活に余裕がない。自分が働かなければ、子どもたちに我慢をさせてしまう。そんな経済的な現実と、心の不安が綱引きをしていた。復帰へのカウントダウンが進むたび、麻衣は孤独感に苛まれ、自分の視野が狭まっていることを自覚しながらも、その負の連鎖から抜け出せなかった―――。
負の連鎖から抜け出せない。経済的な現実と自己肯定感の綱引き
この第1話では、主人公・麻衣の復帰前の心理的な葛藤が描かれています。SNSで流布される「子持ち様」という言葉は、彼女が抱く「職場で迷惑をかけるのではないか」という漠然とした不安を具現化させ、彼女を強く追い詰めています。
かつては子持ちに理解を示していた麻衣の視点が、自身が当事者になることで一変する様子は、立場の変化がもたらす心の揺れを表しています。彼女が抱く不安は、個人の問題ではなく、職場や社会全体の構造的な課題を反映していると言えるでしょう。
記事作成: kanako_mamari
(配信元: ママリ)