お酒に含まれるアルコールはリラックスや気分の高揚といった効果をもたらし、気晴らしにはもってこいですが、飲み過ぎると肝臓にダメージが蓄積されます。新たな研究では、慢性的なアルコールの摂取が「腸内細菌による肝臓への攻撃」を助長してしまうという悪循環の存在が明らかとなりました。
mACh
R4 suppresses liver disease via
GAP-induced antimicrobial immunity | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-025-09395-z

mACh
R4 Boosts Liver Health Through
GAP Immunity
https://scienmag.com/machr4-boosts-liver-health-through-gap-immunity/
Vicious Cycle Revealed: How Alcohol Helps Gut Bacteria Attack Your Liver : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/vicious-cycle-revealed-how-alcohol-helps-gut-bacteria-attack-your-liver
アルコール摂取に関連する肝疾患は世界的な公衆衛生上の課題であり、慢性的なアルコール摂取中に腸内細菌が肝臓に移行して炎症を引き起こすこともわかっています。しかし、腸と肝臓における複雑な相互作用については部分的にしか解明されていません。
カリフォルニア大学
サンディエゴ校の研究チームが主導した研究では、ヒトの肝臓から採取した生検とアルコール関連疾患のマウス
モデルを対象に、慢性的なアルコール摂取が引き起こす影響が調査されました。
その結果、慢性的なアルコール摂取が小腸における「mACh
R4」という細胞シグナル伝達タンパク質の産生を阻害し、「goblet cell-associated antigen passages(
GAP:杯細胞関連抗原通過経路)」という現象を阻害することが判明しました。
GAPは粘液分泌性の単細胞腺である杯細胞が消化管内の物質を取り込み、外側にある抗原提示細胞に引き渡す現象のことです。
GAPの形成は免疫系に対して「腸管から本来存在しない部位へ移動した微生物への反応」を誘導する上で重要です。
GAPがなければ、腸から逃げ出した腸内細菌が肝臓などの臓器へ侵入しやすくなり、アルコールに関連する損傷を悪化させる危険性があります。
今回の研究では、アルコール摂取によるmACh
R4の産生阻害および
GAPの阻害が、双方向の現象であることも確認されました。研究チームがmACh
R4の機能を回復させると
GAPが再び形成され、結果的に腸内細菌に対する免疫系の反応も回復し、肝臓への炎症性損傷が減少したと報告されています。

mACh
R4の機能回復は、mACh
R4を直接活性化する薬剤を使用するか、最終的に同じ効果をもたらす関連経路を標的とすることで実行できます。もちろん、アルコール摂取量の削減が最も直接的な健康効果をもたらしますが、これは必ずしも簡単ではないとのこと。
また、mACh
R4は腸内細菌による肝臓への攻撃だけでなく、アルコール使用障害においても重要な役割を果たしている可能性があります。mACh
R4は習慣や依存を制御する脳の領域で重要な役割を果たしているものの、アルコール使用障害患者の脳ではmACH
R4の発現レベルが低いことが知られています。
すでに脳内のmACh
R4濃度を高める薬は
統合失調症の臨床試験でテストされており、最終的にはこれらの薬剤がアルコール使用障害の治療薬としても研究される可能性があるとのことです。