焼き時間と温度を4回変えながら仕上げるパイ包み焼き、バラを敷き詰めたデセールなど、フランスの伝統と日本の旬食材を掛け合わせた一皿ひと皿に、シェフの熱い想いが詰まっています。編集部の荒武がレポート。

白を基調とした空間で、シェフの世界観へと誘われる
西麻布交差点のそばに位置するフレンチの名店「Takumi」。店内に足を踏み入れると、大理石を基調としたシックな店内が広がっています。上質でシンプルな空間デザインだからこそ、美しい料理が引き立つのかもしれません。
ピンとはられた清潔感あふれるテーブルクロスの上には、シェフからの手紙と詳しいメニューが置かれているのも特徴的。「フランスで修業中、美術館によく足を運びました。絵画に詳しくなくても、解説パネルを読むと時代やテーマがわかり、その世界観に自然と入り込める。料理も同じように、詳しく書いたメニューを通じて思いやこだわりを伝えることで、味覚だけでなく知的好奇心まで満たされると思うのです」と、オーナーシェフの大槻卓伺さん。
料理への理解や期待感が増し、コースをいただくのがますます楽しみに。

とろけるような生しらすが絶品。シェフからのおくちはじめ
コースの初めに登場するのは、シェフからのおくちはじめ。会話のきっかけにと、時間が許す限りシェフが料理をサーブしてくださいます。今日のメニューは「しらす、ズッキーニのソースと白いんげん豆」。季節感にこだわりながら、食前酒との相性を大切にしているのだそう。
静岡県産のしらすは、生と釜揚げの2種類を使用。特に、生しらすはとろけるような口当たり。その下には、ズッキーニのソース、なめらかな白いんげん豆のペーストが。ほどよい塩気が重なっていき、
オリーブオイルが全体をまとめ上げています。

華やかなキャビアのアミューズ・ブッシュが2種類登場
2種のアミューズ・ブッシュ「キャビアを温製と冷製の2種仕立てで」は、ゴールドのプレートに盛り付けられていて華やかな雰囲気。
一口サイズの「キャビアとエシャロット パルメザンチーズ風味の
フレンチトースト」は、手で摘んでいただきます。チーズの塩気がふんわりと染み込んだ
フレンチトーストで、キャビアのつぶつぶ感がアクセントに。
ふたつ目は「キャビアのジュレ寄せ 完熟アボカドとライムのタルト」。カリッとした米粉の器に、ライムを効かせたジュレをのせています。夏を思わせる、爽やかなテイストのアミューズです。
紅茶の余韻が心地いい。
ミルキーな味わいの仔牛ロースト
続いて、2種類の前菜が運ばれてきました。
一皿目は「仔牛のロース肉 軽い燻製 ―
紅茶の
新茶と新玉葱、ブラータチーズ」です。まずはダイレクトに、仔牛のおいしさを堪能します。軽く燻製されたお肉は、コクがあって深みのある味わい。続いて、
紅茶と新玉ねぎのソースで味わってみると、玉ねぎの強い甘みがお肉のおいしさをさらに引き立てます。お皿の縁には、パウダー状にしたファーストフラッシュの茶葉も。ふわっと淡い
紅茶の余韻が広がって、エレガントな後味に。ラストは、フレッシュチーズとともにいただきます。肉の
ミルキーさが加速し、格別の相性でした。
「リードヴォーのタルティーヌ ―野生種のアスパラとハーブの
マヨネーズ」は、成牛になると消えてしまう、仔牛特有の部位・リードヴォーを香ばしくソテーにした一品。しっかりとした弾力のお肉を、ワイルドなアスパラと
マヨネーズがまとめています。

牛コンソメのソースを目の前で。フォアグラのソテー
「フォアグラのソテー 牛コンソメのソース 蕎麦粉のニョッキと蕎麦の実 ミョウガとジャガイモのピューレ」。こちらの前菜は、シェフが目の前でソースをかけてくれるので、特別感がありますよね。
とろみのあるソースは、牛のコンソメを使用していて、フォアグラに負けないくらいの存在感。シャキッとした茗荷と、旨みが強くサクッと仕上げたフォアグラとの組み合わせにも脱帽です。
蕎麦粉のニョッキは、弾力があってプリッとした歯応え。蕎麦粉10割だからこその強い
香りに圧倒されます。日本とフランスのよさを掛け合わせた、大槻シェフならではの一品でした。

手間暇をかけて仕上げる、天然真鯛のパイ包み焼き
本日の魚料理は、「天然真鯛とホタテのムースのパイ包み焼き はっさく風味のバターソース 季節のお豆たち」。フレンチの伝統料理であるパイ包み焼きをシェフなりに解釈した唯一無二の一皿です。
鹿児島県産の天然真鯛を、優しいホタテのムースをまとわせ、ほうれん草、パイ生地で包みこんでいます。パイのザクッとした食感と、ふわっと柔らかな鯛のコントラストがなんとも幸せ。仕上がるまでに、パイは200度、魚は46度…と、4回も温度や時間を変えているそうで、そのこだわりを実感できる最高のおいしさ。
バターソースには、はっさくの果実粒入り。一緒に味わうと、柑橘の甘酸っぱさが引き立って、夏らしい軽やかな味わい。添えられた空豆の塩気もパイの合間にぴったりです。

新生姜クリームで味の変化も。フランス産ハトの炭火焼き
肉料理は、「フランス産ハトの炭火焼き ホワイトアスパラと白レバーのムース 新ショウガの
サラダとクリーム マデラ酒のソース」です。フランス産のハト肉をいただけるなんて珍しい。
胸肉ともも肉を炭火で焼き上げ、旨みをしっかり閉じ込めています。マデラ酒の甘さと混じり合い、いつまでも食べていたく
なるほどのおいしさ。もも肉は力強いジューシーな旨味があり、赤身の胸肉はくどさがまったくありません。最後までおいしく食べられるよう計算がされていて、そこにピリッとした辛さの新生姜のクリームが驚きと変化を与えてくれます。
添えられた白いアスパラガスの中には、こっくりとした白レバーのムース。そのままでもおいしいのですが、新生姜のムースといただくとスッキリとした味わいに。
たった一皿でさまざまな味の体験ができる逸品でした。