【関連画像】アニメ『ムーンライズ』迫力の名シーンをチェック!――『ムーンライズ』の企画はどのように誕生したんでしょうか?
肥塚 自分とWIT STUDIO社長の和田(丈嗣)との雑談から始まった企画となります。子供の頃からSFやスペースオぺラが好きだった僕が、当時世間で盛り上がっていた『スター・ウォーズ』の続三部作を話題にしつつ「あんな作品やりたいですよね」と気軽に話していたところ、「実際やってみませんか」と提案してくれました。その後にSFならこの人ということで和田が冲方先生に声をかけて企画が始動しました。
――どんな作品にしたいと考えていましたか?
肥塚 冲方先生のハードな世界観や設定を、僕が好きな爽快感ある少年漫画的な文法に落とし込んだら、どんな化学反応が起きるんだろうという考えが最初にありました。そのとき思い浮かんだのが、田中芳樹先生の作品をコミカライズした藤崎竜先生の『
銀河英雄伝説』と
荒川弘先生の『アルスラーン戦記』だったんです。大好きだった素晴らしい小説を、誰もがとっつきやすく、より一層キャラクター性を盛っていくことで、より見やすく楽しい作品に仕上げていく。そんな両先生のアプローチの仕方が『ムーンライズ』にはピッタリ合うと思いましたし、WIT STUDIOが目指すアニメーション作りに
フィットすると考え提案しました。
――キャラクター原案を
荒川弘さんが担当されているのは、そんな流れがあったのですか?
肥塚 それもありますが、キャラクターデザインの山田歩さんや作画スタッフが「描いていてアガる描き手は誰か!」ということを話し合って、最初に名前が挙がったのが荒川先生だったんです。そこでお声掛けさせていただいたところ、ありがたいことに参加していただけることになりました。
――河村プロデューサーは、どのような形で、この作品に参加されているのでしょうか?
河村 この『ムーンライズ』はNetflixによる世界独占配信作品ということで、制作スタイルが
テレビシリーズのフォーマットとは大きく違っていたんです。そこでノウハウを持った人が必要だとなりまして、3年前にWIT STUDIOが制作してNetflixで配信された「
ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」で制作デスクをやっていた僕にプロデューサーとして声がかかった感じです。あとは肥塚さんや山田さんとは『
進撃の巨人』で一緒に仕事をしている関係性があったのも理由のひとつではありました。
コロナ開けの現場にあふれた熱気とパワー
――肥塚監督は脚本も担当されていますが、ご自身で書くと決めたのはなぜですか?
肥塚 先生の描くハードSFな世界観と膨大な設定を映像化するには、情報を整理した上で必要なものを厳選し、それ以外を削ぎ落とす作業が必要になりました。場合によっては、原作にいたキャラクターも残念なことに削ったりすることもありましたので、そういった作業を人に委ねたときに、自分が作品世界に入り込めなくなる恐れがあったんです。あえて脚本については自分で書かせいただくことにしました。
――冲方先生からは、どんなアドバイスがありましたか?
肥塚 現場では全18話を劇場三部作のような構成で、シーズン1が1話から6話、シーズン2が7話から13話、シーズン3が14話から最終話となる18話までと考えていました。冲方さんからはシーズン毎に「こうすると、もっとキャラが立つ」とか「このようにした方が、テーマがもっと浮き彫りになるのでは?」といったアドバイスをいただきました。
――WIT STUDIOだからこそ出来た、本作でのポイントについてお聞かせください。
肥塚 3Dプリンターの発展系の技術「エングレイブを軸にしたアクション」というのがキーワードとしてありましたので、「どうやったらアニメ映えして、かつ月面下で独創的な戦闘アクションを生み出すことができるのか」というのが、ひとつの大きな命題となりました。実はアクションについては冲方さんの小説よりも、かなり盛っていたりするんです。そこで『
進撃の巨人』で立体機動装置のアクションを開発した中心メンバーの江原康之さんにアクションシーンの根っこを作ってもらいまして、それをベースに河村君が集めてくれたスタッフ陣と話しながら各話のアクションシーンを練り込んでいくことになりました。
――制作現場の雰囲気は、どんな様子でしたか?
肥塚 制作開始の時期がちょうどコロナの自粛が開け始めた頃だったんです。そんなこともあって、それまでのストレスを発散させるような熱気とパワーが現場には溢れていたので、スタートからすごい勢いを感じながら制作を進めていくことができました。特に新たに参加してくれた若手クリエイターたちについては、新人時代にコロナ禍で先輩たちとコミュニケーションがとれなかったフラストレーションをこの作品で発散しているような雰囲気がありました(笑)。そんな昂ぶった空気感はアフレコ現場も同じで。別録り期間がようやく終了した時期でもありましたので、スタジオ内に集まった役者の皆さんも掛け合いができるのが楽しかったのか、すごく熱を入れて演じてくださっていました。
――アフレコは長期にわたったそうですが?
河村 1話から最終話までだと、約二年かかっています。どうしてもオリジナルアニメということもあって、キャストの皆さんも作品世界に入り込むことが難しいだろうというのがありました。なので、第1話については絶対に色をつけた完パケの状態でアフレコをスタートさせたいと考えていたんです。1話の色が付いたタイミングから収録を徐々に始めていったこともあって、結果的に収録期間が長くなってしまった感じですね。
――制作は順調に進みましたか?
河村 オリジナルの部分もあり、四苦八苦はしていたと思うんですけど(笑)。制作期間については1話の作画に入ってから18話が完パケするまで2年11ヶ月が経っています。なかなか難しくて進まない部分もありましたが、スタッフが一丸となって真面目にコツコツ、一歩ずつ丁寧に、丁寧に積み上げていったので。時間はかかってしまいましたが、自信が持てるフィルムを作っていただくことができました。
役者としてのオファーがメインだったアイナ・ジ・エンドさん
――特に注意したポイントなどありますか?
肥塚 やっぱりジャックとフィルがキーになる作品なので、ふたりのバランスには気を遣いました。序盤はなかなか掛け合うことがないんですが、いずれ掛け合うことになるわけで、そこに向けてそれぞれの立場で、どのように
人生を歩ませるか。その上でジャックとリース、ジャックとマリーの関係をどう描いていくか、ものすごくデリケートなので、特段注意しました。それに加えキャストの皆さんが作品に入り込んで、各々の役になりきり最高の演技をしてくださいました。それは本当にありがたかったです。
――マリー役を演じたアイナ・ジ・エンドさんの起用は、どのように決まったのでしょか?
肥塚 アイナさんには主題歌も歌っていただいていますが、マリー役のキャストとして出演をお願いしたのが最初になります。マリーというキャラクターについて、僕は
声優畑じゃない人が演じた方がいいと考えていたんです。そこで違う文化圏の方を起用したいと音響監督の三間(雅文)さんに
相談させていただいたところ、それなら「アイナ・ジ・エンド一択だよ」と推薦されまして(笑)。意外な人選だったんですが、いろいろ話を聞かせていただいた上で、アイナさんにオファーを出させていただきました。主題歌については、作品が作られていく過程で「ぜひ可能ならば主題歌を」とご
相談させていただきました。
――アイナさんの歌う主題歌「大丈夫」について、要望など伝えましたか?
河村 「こういうふうなテイストで」というのは伝えず、作詞も作曲もアイナさんにお任せすることになりました。当時は、まだ映像が全然出来上がってない状態だったこともあって、世界観を理解する資料が少ない中での楽曲制作は、すごく大変だったと思うんです。それでもジャックとフィルの関係性を深く読み込んで、「大丈夫」という素晴らしい曲を作ってくださいました。これには感謝の言葉しかないですね。
――ふたりがオススメする見どころと、視聴者の皆さんへのメッセージをお願いします。
肥塚 もちろんいろいろ見どころはありますが、個人的に観てほしいところは、やっぱり人間ドラマとアクションです。特にアクションはWIT STUDIOの最大戦力を投下しましたし、そんなオススメの映像に川粼(龍)さんに作ってもらった音楽がピッタリとマッチしています。自信をもって皆さんの元にお届けできる作品になりましたので、ぜひ観てください。よろしくお願いします。
河村 WIT STUDIOが久しぶりに制作するオリジナル作品ということで、皆さんの期待するWITらしさというものがすごく詰まった作品になっています。それと同時に新しく挑戦している部分もそこかしこにあり、一瞬たりとも目が離せないような素晴らしい映像となりました。全18話を勢いのまま一気に観てもいいですし、毎日コツコツでも構いませんので、自分のペースで最後まで楽しんでいただけたなら嬉しいです。