増量
キャンペーンを実施しているコンビニは
ローソンに限らない。セブンイレブンは2024年5月8日から1週間限定で「感謝祭 お値段そのまま人気商品増量フェア」を実施。
サンドイッチを一組増やしたり、コールスロー
サラダのコーンを従来比の2倍にしたりなど様々な商品が増量された。また、
ファミリーマートでも2022年8月に「お値段そのまま!! 40%増量作戦」を行っており、2023年8月にも同様の企画を開催。2年連続で同時期に開催していることを鑑みると、今年も実施して恒例行事化していくのかもしれない。
◆「コンビニの
サンドイッチを買えるのはお金持ち」
増量
キャンペーンは毎回盛況だからこそ、コンビニ各社はこぞって開催しているのだろう。消費者目線で言えば、価格は変わらずに増量してくれることはお得以外の何物でもない。だからこそ売り切れが続出しているのかもしれない。とはいえ、増量
キャンペーン中に多くの消費者が対象商品を購入している背景は、正確には“お得”ではなく“贅沢”が大きいように思う。
コンビニ食といえば2022年に公開された映画『ベイビーわるきゅーれ』で印象的なシーンがあった。杉本ちさと(高石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)が勤務先のメイド喫茶で休憩中に食事をとっていると、コンビニで買った
サンドイッチをビニール袋から出したちさとに、同僚の姫子(福島雪菜)が「
サンドイッチ買ってるやん? すご、お金持ちなんやね」と驚愕。ちさとが「これコンビニのやつですよ」と返すと、姫子は「いや、コンビニの
サンドイッチ買えるってお金持ちでしょ」と続けた。
◆350円のコンビニ
サラダを手に取り、棚に戻す
また、今年4月から放送中の連続ドラマ『燕は戻ってこない』(NHK総合)でも、“コンビニ飯=贅沢”と思わせるシーンがある。
1話で手取り14万円の非正規労働者・大石理紀(石橋静河)は、奨学金の返済に追われる同僚・河辺照代(伊藤万理華)から「昼、
外食しよ」と誘われる。ただ、足を運んだのはコンビニのイートインスペース。店内で買ったカップラーメンにお湯を入れる理紀に照代は「たまには
外食もいいよね」と話しかけ、これに理紀も「本当。贅沢しないとね」と返答。
さらには、2人はコンビニ内で陳列されている350円の
サラダや298円の
サンドイッチを手に取った後、切なそうに棚に戻すシーンもある。彼女たちにとって、いかにコンビニ飯が気軽に手を出せる商品ではないのかが伺えた。
◆“コンビニ飯=贅沢品”という人が増えているのでは
どちらも単なるフィクションの話じゃないか、と思う人もいるかしれない。しかし、ひと昔前のドラマや映画では、上京する我が子を心配した親が「コンビニ弁当ばかり食べていないかい?」と電話越しに尋ねるシーンが珍しくなかった。コンビニ飯は気軽に手が出せる商品だったからこそ、こういったセリフがよく使われていたのだろう。ただ、時代は変わり前出の姫子や理紀のように“コンビニ飯=贅沢品”と考えている人は増えているのではないか。
日本の実質賃金は30年近くほぼ横ばい。にもかかわらず、税金や社会保険料は上がっており、経済的に困窮している人は少なくない。増量
キャンペーンが実施されないとコンビニ飯に手が伸ばせなくなった人が増加したからこそ、人気を集める企画になった可能性は低くない。
<文/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、
社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki