フリートフィートの小売事業担当バイスプレジデントであるマット・ワーダー氏は、現在ある200以上の店舗の拡大を計画する際、よく使われている人気ランニングルートを示す人気ランニングアプリ「ストラバ(Strava)」でヒートマップを表示するのだと語る。
「当社は、ランナーが走っているところやルートの近くに店舗を配置したいと考えている。実際にストラバを見ており、その情報は非常に役立っている」。
ワーダー氏は、ロサンゼルスで6月3〜5日に開催されたフューチャーストアズ(Future Stores)コンファレンスの講演者の1人だった。多くのブランドが集い、新しいロケーションの計画や店内デザイン、市場機会の理解に関する戦略などのテーマで、小売店の規模拡大について話し会った。しかし、多くのD2Cブランドにとっては、実店舗の数を拡大するには、顧客がすでにどこで購入しているか、自社製品にどこで関与しているかを
慎重に検討する必要がある。
モダンリテールは、このイベントにおいて小売のエキスパート数人に小売店舗拡大への取り組みについて話を聞いた。
どの市場に注力するか
ファインジュエリーブランドのメジュリ(Mejuri)のグローバル小売担当シニアバイスプレジデント、コートニー・ホーキンス氏は、同ブランドが店舗を拡大する際に直面している課題の1つには特定のどの市場に注力するかを選択する点があると語った。「進出したい場所は少なくはない。だが、ブランドを構築するために順序的にもっともうまく進められる方法を考えなければならない。また、進出したい場所に利用できる不動産はあるのかも考える」。
そのステップの後に適切な場所を選択するということは、人々がすでに買い物をしている場所や通り過ぎる可能性のある場所を調べることを意味する。メジュリのようなeコマースブランドの場合、ロケーションの選択戦略として特定の市場での収益や成長などのeコマースの販売データを考慮することがしばしばある。ホーキンス氏は、同社にはライフスタイルセンターや高級ショッピングモールが適切だと言う。(アメリカのメインストリートのような街角タイプの)屋外ショッピングエリアも適している。メジュリには現在33店舗があり、直近ではデンバーのチェリークリーク ショッピングセンター(Cherry Creek Shopping Center)、ニュージャージー州のザ モール アット ショートヒルズ(The Mall at Short Hills)、パロアルトのスタンフォード ショッピングセンター(Stanford Shopping Center)などにグランドオープンしている。次のオープンは、非公開会社が所有するオレンジカウンティのサウスコーストプラザ(South Coast Plaza)に予定されている。
マットレスブランドのサートバ(Saatva)の不動産担当バイスプレジデント、チャド・ランディーン氏は、人気市場に参入するにはある程度の忍耐、つまり柔軟性が必要だと語る。競争は熾烈であり、家主の中には賃貸契約を結ぶ前にそのブランドについて知っておきたいと思う人もいるだろう。サートバがシアトルのショッピングスポットであるユニバーシティビレッジへの出店を考えたとき、そこには空きスペースがなかった。だが、通りの向かい側に、しかも家賃が安い場所を見つけることができたという。
「ブランド構築の初期段階では、注目されるのが好ましい」と同氏は言う。
小売コンサルタント会社のキングスメン プロジェクツ(Kingsmen Projects)のバイスプレジデントであるスティーブン・ヘクマン氏は、実店舗への進出を狙うD2Cブランドは、国内で最大の人気を誇る25〜50の物件を検討することが多いかもしれないと述べた。そのような大型物件はニューヨーク州ユニオンデールのルーズベルトフィールド(Roosevelt Field)やオーランドのフロリダモール(Florida Mall)のように、主な大都市やショッピング街にあることが多い。「そのような場所に進出すれば、ある程度のビジネスは保証される」からだと同氏は言う。
しかし、そのような場所ではスペースは非常に貴重であり、参入競争が激しい可能性がある。ヘクマン氏は、2021年にメンズアパレルブランドのサイコバニー(Psycho Bunny)がオレンジカウンティのサウスコーストプラザへの進出を目指していたときに協働した。すぐに賃貸契約を結ぶ代わりに、トラフィックと収益を生み出す可能性があることを示すために、一時的なポップアップを立ち上げることにした。そして、2022年上半期までにはサイコバニーはこのカリフォルニアのリテール複合施設に常設の店舗を構えたのだった。
その地区での競合を調べる
プロパティでの共同テナントを調べることは、拡大を目指すブランドにとってもう1つの重要な指標である。スワロフスキー(Swarovski)の元流通・不動産開発担当バイスプレジデントのヨッヘン・シュミット氏は、スワロフスキーは「手頃な価格のラグジュアリー」市場の独占を狙うなかで、その地区でのジュエリー競合他社はどこかを考えると語った。「それは、そのストリートでどのようなタイプの顧客が買い物をしているかを示してくれる」。
シュミット氏は、市場を決定したあと、賃貸契約を確保するためのスワロフスキーの戦略は事業を展開する国によって異なると語る。北米では空きスペースがあり、家主は契約条件について話し合うことに前向きだという。同氏によると、これは、スワロフスキーが成功を収めている大規模なライフスタイルセンターに特に当てはまるという。一方、一部のアジア市場、特に中国では契約の一環としてブランドが最低リース料と収益の一部を支払う場合がある。「成果がないと追い出される。成果を出せば愛される」。
シュミット氏によると、スワロフスキーが必要とされる販売量に達しなかった場合もいくつかあったという。中国のある小売拠点でサマーコレクションの反響が芳しくなく、撤退を決めたケースもあった。また、地元ブランドとの競争もあるという。しかし、中国では最先端のショッピングモールの開発が続いており、参入できるブランドにとっては「最高の」チャンスがあると同氏は語った。
「これは世界中でほぼ同じだ。適切な製品と、その製品への適切なマーケティングキャンペーンがあれば、消費者に対して効果がある」。
[原文:How brands like Swarovski & Fleet Feet are using data to expand their store fleets]
Melissa Daniels(翻訳:ぬえよしこ、編集:戸田美子)