◆毎日3時間以上サビ残、有休をとれたのは10年で2日
地方の
家族経営の機械商社に、営業事務として10年間勤めた前原達哉さん(仮名・38歳)は、昨年末に退職代行を使い、会社と縁を切った。
「従業員数は15人程度の地元の小さな会社です。毎日3時間以上残業して、残業代はゼロ。有休をとれたのは10年で2日。出退勤はカレンダーに印鑑を押すだけで、ずさんなものです。経営者は『タイムカードを入れたらおしまいだ。即、労基に潰される』と言うほどブラックな会社です」
◆退職希望者が出るたびに“見せしめ”
月給は手取りで19万円弱。子供は0歳と2歳でまだ幼い。妻に働きに出てもらい、なんとか
生活費を工面してきた。
「毎回退職希望者が出るたびに、経営者や幹部社員たちによる強引な引き留めがあるんです。会議室で4時間拘束されて、説教のような説得が続く。会議室の壁は薄く、会話は私たちのところにも筒抜けで、怒号や説教の内容が全部聞こえてくる。『辞めたいヤツはこうなるぞ』という“見せしめ”でもあったのでしょう。実際、私も退職を言い出せませんでしたし……」
◆退職代行の存在に命を救われた
執拗な退職妨害により、退職を取りやめた社員や、うつ状態になる者もいたという。必死に耐え続けた前原さんだが、ついに限界を迎えた。
「2年前から、常に無気力状態になり、
自律神経失調症と診断されました。そして決定的だったのは、去年次男が生まれたときです。我が子を一切可愛いと思えなかった。目が合って指を握られても、何も心が動かない。それが怖くて、『このままだといつか自分で命を絶つかもしれない』と、退職代行にすがりました」
「自力で会社とやりとりする気力は皆無だった」と前原さん。現在はホワイトな食品会社で黙々と働いている。
取材・文/週刊SPA!編集部
―[[退職代行する人]の主張]―