その一方、先を見据えて
人材の採用を強化していたが、サービスの成長に追いつかなくなってしまい、人員縮小を余儀なくされた時期も経験したという。
「このままやっていても儲からない」
事業のコスト構造自体を抜本的に変えないと、いつまで経っても黒字化は見えてこないことに気づいたのだ。
そこで「冷凍倉庫の内製化」と「従量制送料への切り替え」を行い、収益性の改善に取り組んだ。
「最初は冷凍倉庫を借りてきて、スキーウェアを着用しながらピッキング作業を行い、発送作業までを全て自分たちでまかなっていました。マイナス20℃という極寒の中での肉体労働は相当キツかったですね。
倉庫内ではラーメンの商品ごとに番号を振って管理しているんですが、『どこに何がある』というのを記憶しなくてはいけなかったのも大変でした。ただ、この経験があったからこそ、委託倉庫のパートナーと組んで物流を仕組み化する際はスムーズに行うことができました」
また、一定の金額以上の購入からは送料無料にするのではなく、商品を買えば買うほど送料が高くなる従量課金へ変更した理由については、次のように説明する。
「その当時はおそらく、宅麺.com以外に従量制送料を取り入れるECサイトはほとんどありませんでした。ですが、冷凍品の配送コストは高く、既存のままでは収益性が見込めないので、思い切って従量制にしたところ、少しずつ収益性が改善され、毎年15%ずつほど売り上げが伸長するようになりました」
また、野間口さんは「販売数を増やそうと安売りせずに、『行列店のラーメンを自宅で調理して食べられる』という価値に見合った適正価格の設定にこだわった」と語る。
時代とともに販売価格を見直し、段階的に
値上げを実施したことで、クレーマーが減った代わりに客質が高まったそうだ。
こうした企業努力が功を奏し、立ち上げから5年で黒字化に成功した。
◆コロナ禍は“ジェットコースター”のような怒涛の日々だった
コロナ禍に入ってからは、巣篭もり消費の増加によって、宅麺.comのニーズも急激に高まった。
コロナ禍以降、会員数は3倍に増え、急成長を遂げたわけだが、「正直何が起きているかわからないような混沌とした状態が続いていた」と野間口さんは振り返る。
「2020年に起きたコロナウイルスによる巣篭もり消費の爆発的な需要は、あまり具体的には想像できませんでした。本当にいつの間にか1日の売り上げが一気に伸びていって。
緊急事態宣言下では、飲食店が営業できなかったこともあり、ラーメンを食べたいお客様や宅麺.comで商品を販売したいラーメン店が殺到する状況でした。
さらに、
テレビや
メディアへの露出もかなり増えたことで認知度も上がるなど、1万食の在庫を入れても1時間も経たずに完売するくらいの勢いがずっと続きましたね」
野間口さんは「毎日、朝から晩までジェットコースターに乗っているような感覚だった」と表現する。
まさに巣篭もり消費のビッグウェーブがどれだけすごかったのかを物語っていると言えるのではないだろうか。
◆足掛け10年以上かけて口説くことも。営業の“執念”は今でも変わらない
現在、宅麺.comは全国に300店舗以上の有名ラーメン店がパートナー店舗として加盟しており、今でも新規開拓を継続しているそうだ。
首都圏を中心に、美味しいラーメンがあると知れば、地方でも駆けつける。このスタイルは15年間変わっていない。
野間口さんも大のラーメン好きで、毎日ラーメンを食べているとか。
「営業のために、目星をつけたラーメン店に足を運び、食べた後に名刺を渡すこともありますし、既存のパートナー店舗の店主と関係性をキープするためにお店へ顔を出す場合もあります。知名度や話題性のあるラーメン店はひと通り行くように心がけていますね」