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さらに2023年の景品表示法改正で、100万円以下の罰金を科す「直罰規定」が設けられたことも大きい。
「これまでの景品表示法では、措置命令に従わない場合にしか刑事罰を科せませんでした。しかし、改正法は遅くとも2024年11月17日までには施行されますので、それ以降は措置命令を経ずにいきなり刑罰を科せるようになります。景品表示法は広告主を対象とした法律ですが、直罰規定ができたことで、悪質な調査会社なども『共犯』として、理屈上は一緒に処罰できるようになります」
木村弁護士によると、景品表示法は故意ではなく、知らないうちに違反してしまうことが多い法律だという。そのため、これまでは違反した場合の効果も弱いものだった。
しかし、2013年に起きたホテルのメニュー偽装問題などを契機として、課徴金制度が導入され、条件を満たせば、措置命令を出されたときに、問題広告を掲載していた期間の売上の3%を納めなくてはならなくなった。
消費者庁が、No.1表示に関して措置命令を頻発するようになったことで、広告主企業にとっては、課徴金のリスクや問題のある企業としてさらされる可能性が出てきたことになる。さらに、今後は刑事罰を科される可能性も加わる。
「広告主にとって、広告会社や調査会社主体での広告制作はリスクが高まる。任せっぱなしになるのではなく、たとえば調査をするなら、何を調査するのか、どんな表現をしたいのかを明確にしてから依頼すべきでしょう」
一方で微妙な問題も残りそうだ。前出の男性経営者は次のように語る。
「新聞に広告を載せようと思ったんですが、広告代理店から『No.1表示』にNGが出ました。有名な雑貨店の化粧品部門で売上No.1になったことを盛り込んだところ、『コロナ以前の結果は古いのでやめてくれ』と」
不当な「No.1表示」が問題になった結果、「No.1表示」全体の審査が厳しくなっている可能性もあるようだ。
男性は「売上1位は事実なのに、なぜダメなのか」と憤る。たしかに新しいとは言い難いが、大勢の消費者から支持されたのは事実。実績がない商品と比べれば、優位性を示すデータで消費者の参考にもなりそうだ。
他方で、もしも1位の期間が1日だけだったら、当時とトレンドが大きく変わっていたら、無名の小規模小売店だったら--と代入値を変えれば、たとえ事実だとしても「No.1」をうたうには不適切なようにも感じられる。
「No.1表示」について問題提起したJMRAは、こうした微妙な問題を「それは事実かもしれないが、『市場の真実と言えるか?』問題」と表現。今年度中にガイドラインなどを発表する予定だという。
【取材協力弁護士】木村 智博(きむら・ともひろ)弁護士消費者庁表示対策課課長補佐として、景品表示法関連の業務に従事。訟務検事を経て弁護士に復帰した後は、消費者問題などに取り組む傍ら、特定適格消費者団体「埼玉消費者被害をなくす会」の検討委員も務めている。事務所名:木村・東谷法律事務所事務所URL:http://www.kh-law-office.com/