◆上場企業は無理にでも「女性管理職」を増やすべき
日本の上場企業のトップマネジメント(経営層)は今、プレッシャーを感じているはずです。上場企業には自社の有価証券報告書に「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」「男女間賃金差異」の指標を開示することが求められています。
これらの企業に投資する企業や投資家は業績だけでなく、人的資本経営にまで目を向けるようになっているのです。海外からの投資を大胆に受けいれるためには、たとえば現在のように「女性管理職比率」が1〜2割が続く状態では難しいでしょう。欧米の企業社会は4〜5割が多くを占めます。
日本の「女性管理職比率」の低さを見て驚き、その企業の経営やマネジメントのあり方に疑問や不安を感じることが多いと思います。これでは、国際市場での日本企業の地位はますます下がっていきかねません。
グローバル化が進む以上、少なくとも上場企業は無理くりにでも、ここ数年で「女性管理職比率」などをある程度のところにまで上げていかなければいけない。ところが、ここ数十年、多くは女性を管理職や役員にするような採用や育成を積極的にはしていないのです。
◆いかに公平な社会をつくるべきか
そこで社外取締役に女性と登用するケースが増えてきました。何とか、比率を上げたいのかもしれません。キャリアや実績がすばらしい方がいる一方で、なぜ、こういう人が社外取締役なのかな、と疑問に思う人もいます。社内に今すぐに役員にできる女性が少ないと経営層は判断しているのかもしれませんね。それであるならば、残念に思います。
「女性管理職比率」を数年で上げていこうとすると、昇格が遅れたり、不本意な扱いを受けたりする男性が増えるかもしれません。今後、きっと増えてくると思います。その不満もわからないでもないのですが、世界で認められる公平な社会をつくるためにどうするかと真剣に考えていただきたい。男性だから、女性だからという考えは早くなくしていきたいです。
アメリカでは女性に限らず、有色人種、中高年、障がい者などを何らかの形で守る法律がたくさんあるのです。一方で、40歳以下の白人男性を守る法律が少ないと指摘する人がいます。確かにその世代の白人男性はある意味でハンディといえるのかもしれませんが、生まれた時から優位な立場や環境にいる人は多いのです。
知人である40歳以下の白人男性たちはそれを認め、女性や有色人種、中高年、障がい者を含め、いかに公平な社会をつくるべきかを語ります。私は日本の男性もそうであってほしい、と願っています。グローバル化とは英語を話すことだけでなく、そのような人たちがたくさんいる社会や文化を知り、そこで生きていくことでもあるのです。
◆点数をシュレッダーに…問題視される採用の裏側
私が人事コンサルティングの現場や知人のコンサルタントから聞き、疑問に思うことを述べます。正社員数が50人程のベンチャー企業の新卒採用で、書類選考や適性検査、筆記試験、数回の面接の合計得点で内定者4人を決めました。内定を出す寸前では得点の高い順番では、1〜3番までは女性で、4番目が男性だったようです。ところが、役員や人事部は「女性は辞めやすい」として男性3人、女性1人にしたのです。つまり、1番の女性を内定にし、ほかの2人の女性は不採用、4番の男性のほかに5、6番を内定にしたのです。