高橋一生と電撃結婚の飯豊まりえ、生の舞台で全身から発していたパワーとは?渡辺謙と結婚前の女優も同じものが
高橋一生と電撃結婚の飯豊まりえ、生の舞台で全身から発していたパワーとは?渡辺謙と結婚前の女優も同じものが
-
『岸辺露伴は動かない』シリーズ(NHK)の高橋一生と飯豊まりえの結婚も然(しか)り。新作『密猟海岸』が放送された直後だったうえ、出来がよく、さらなる続編も期待されるものだったからこそ、ふたりの結婚報告はいっそう祝福された気がする。
17歳差だそうだが、高橋には、いい意味でのピーター・パン的な年齢不詳な印象があるので、差があまり気にならない。
高橋と飯豊にとって運命のドラマとなった『岸辺露伴』シリーズでは、偏屈な漫画家・岸辺露伴(高橋)、物怖じしない編集者・泉京香(飯豊)のコンビが息ぴったりで、荒木飛呂彦による原作のイメージを損なうことなく、ふたりとも愛された。むしろバディとして愛されたといってもいいのではないか。
もちろん主役の高橋あってこそ、ではあるが、『岸辺露伴』シリーズは飯豊まりえがいたからこそ、作品としての完成度が上がったといっても過言ではないように思う。
漫画がかなりぶっ飛んでいるにもかかわらず、高橋と飯豊はいい感じにポップに仕上げている。とりわけ泉は、その言動からともすればうざいキャラになりそうなところ、そうならない。飯豊がほんの少し引き算して、品を保っている。彼女の本質なのか技術なのかはわからないが、どちらにしても才能だ。
結婚報告の、高橋のコメント“品性を持って歩みを進める彼女の純粋な陽の力に、幾度となく救われて参りました”が彼女の本質をずばり突いている。さすが。
◆飯豊、新作ではうまい引き算の演技
モデル出身の飯豊は、派手な衣裳の着こなしも見事で、違和感がない。映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(23年)では黒い革の超ミニのワンピの上に真っ白のふわふわしたボリュームのあるロングコートという、着こなし難易度が高そうな代物を軽やかに着て、みごとにさばいていた。
まるで平安時代の女性が十二単をさばくように。全身黒の露伴と白の泉の並びがよく似合っていた(どちらもロングコート)。
『密猟海岸』で印象的だったのは、料理を食べたら涙が止まらなくなって大量の涙を目から溢れさせる(ただし目は手で隠している)というシュールなシーン。漫画ならともかく、生身の人間が演じると、コミカルになりすぎそうなものなのに、それもまたうまく引き算して演じていた。
◆飯豊は公演中の舞台での演技が輝いていた
この数年、飯豊まりえの俳優としての力量がじわじわと顕在化している。現在、『ハムレットQ1』(PARCO劇場)で彼女が演じているオフィーリアはある種の到達点かもしれない。泣かずにはいられない身の上の悲劇のヒロイン・オフィーリア。その演技がとても輝いていて、筆者は胸を打たれ、見入ってしまった。
映像での飯豊まりえは主演ドラマ『何曜日に生まれたの』(テレビ朝日系)も、こもり人からじょじょに脱していく役を情感豊かに演じていて素敵だったし、着々と表現力をあげているのは感じていた。が、経験の浅い舞台でもこれほどとは。
吉田羊演じるハムレット(女性が男性のハムレットを演じる趣向になっている)と恋仲であったオフィーリアが、彼の心変わりによって「尼寺へ行け!」となじられる有名な場面は胸を打った。
ハムレットはとある事情によりメンタルをやられた振りをしてオフィーリアと苦渋の別れをするのだが、事情を知らないオフィーリアのショックは大きい。ふたりのそれぞれの辛さが泣けてくる。これまで何作も『ハムレット』を見てきた筆者だが、この場面で泣いたことはなかったのに、不覚にも泣いてしまった。
飯豊は名優・吉田羊にひけをとらない演技をしていた。たぶん、お互いがお互いを引き立たせ合う、繊細で思慮深い演技によるものであろう。その後、悲しみのあまり精神に異常をきたすシーンも、飯豊の声の魅力が際立った。
-
© livedoor
x