【市川博史さん(仮名・37歳)食品メーカー】
些細なことで怒りを抑え切れずに、店員を執拗に叱りつける
クレーマー。これは依存の一種かもしれない。大手食品メーカーに勤める市川博史さんは、
クレームを止められなくなった経緯についてこう語る。
「3年前、立ち食いそば屋で、器にビニールの破片が入っていました。100%落ち度は店にある。全部食べ終えてから、無料にしてもらおうと、バイトのおばちゃんに
クレームをつけました。でも店員から平謝りされただけで、そば代は無料にはならなかった。
人生初の
クレームは、正当な怒りの対価はもらえず、ただただむなしいだけでした」
しかし、これで「理由があれば怒ってもいいんだ」と思うようになり、
クレームをつけるハードルは一気に下がる。
◆学生同士の微笑ましい一幕でも…
「某
カレーチェーンで、私の隣に学生バイトの友達が座っていて、そのバイトは友達に『好きなものトッピングするから教えて』と誇らしげでした。その店は特定の日にトッピング無料券を配っていて、コツコツ集めていた私は思わず『不公平だろう!』と怒鳴りました。店員は謝るだけで、私のトッピングは無料になりませんでした」
学生同士の微笑ましい一幕でも、市川さんは“正義の制裁”を加えないと気が済まない。
◆
クレームをつける理由は?
クレームをつけるのは、「正当な理由で人に怒りをぶつける興奮状態が忘れられないから」という。そのため怒りの沸点はどんどん低くなっていき、今では「
クレームの機会」を自ら探しているらしい。
「あるとき、
納豆を覆う半透明のフィルムの端が焦げていて、メーカーに
クレームを入れました。再発防止を
約束してくれたのに、ほどなくして、またもフィルムが焦げていた。2度目は許されません。きつく叱ってやりましたよ。これまで以上に慇懃な
謝罪の手紙は誇らしく、賞状みたいに
部屋に飾っています。3度目を期待し、
納豆を食べるときは、必ずフィルムを隅々までチェックしてしまいます」
SNSに
クレームを書き込もうかと考えているという市川さん。
「踏みとどまっていますが、いつまで耐えられるのか」
怒りという興奮状態に依存している市川さん。解放される日は来るのだろうか。
取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/杉原洋平
―[蔓延する[
依存症]の恐怖]―