メゾンマルジェラは4月17日、「メタタビ(MetaTABI)NFT」の一般鋳造を開始。同ブランドのアイコニックアイテムである「タビブーツ(split-toe boot)」が、ラグジュアリー顧客向けに限定特典を提供するデジタルアイテムに生まれ変わった。デジタルファッションeテイラーのザ・ファブリカント(The Fabricant)において、1500点のNFTが各616ドル(約9万5000円)、15点が各8400ドル(約130万円)で販売される。また高額NFT購入者にはメゾンマルジェラの限定モデルのハンドメイドタビブーツ、616ドルのNFT購入者にはカスタムレザーウォレットが贈呈される。
同日にマーチは、アーティストであるギルバート・ヘルナンデス氏のイラストとコラボした、生成AIを利用して開発されたフィジタルファッションコレクションを発表した。販売される960点のNFTはそれぞれ、異なる袖やポケット、フード、縁取りのある個性的なパーカーに仕上がっている。このフィジタルセットは、マーチのeコマースサイトで各460ドル(約7万1000円)で販売されている。
ラグジュアリー消費者はユニークな体験や特典を求めている
ファッションブランドがデジタルやフィジタルアイテムをローンチするというトレンドは続いており、これはユニークな体験やそのほかの特典を求めているラグジュアリー消費者の需要によって促進されている。加えて、NFTを鋳造するブロックチェーンの導入もさらに加速しそうだ。2026年までに、EUで販売される商品にはデジタル商品パスポートの取得が義務付けられている。
メゾンマルジェラのメタタビNFTを所有することで、ザ・サンドボックス(The Sandbox)やレディプレイヤーミー(Ready Player Me)などのプラットフォーム内で使える限定デジタルウェアラブルへのアクセス権が付与される。さらに同ブランドの将来のWeb3プロジェクトやAR体験、限定イベントへの優先アクセスも保証される。
「このような取り組みは、デジタルコミュニティ内での長期的なロイヤルティを促進する」と話すのは、メゾンマルジェラの会長であるステファノ・ロッソ氏だ。「最初からコミュニティへ参加するきっかけを与えることで、時の経過とともに価値と実用性を高め続けるプロジェクトに対しての帰属意識を育むことができる」。
マーチで注目されているのはNFTではなく現実アイテム
しかしマーチのフィジタルコレクションの発売において注目されているのは、NFTではなくカスタマイズされた現実のアイテムの方である。
マーチの創業者であるコルビー・マグラビ氏は「人々はデジタル資産の物理的要素を重要視している」と語る。コレクターはNFTが鋳造されるまで、自分がどんなパーカーを購入したかわからないと同氏は指摘した。
フィジタルファッションアイテムを専門に扱うマーチは3月、リバティシティベンチャーズ(Liberty City Ventures)主導によるシードラウンドで640万ドル(約10億円)の資金を調達したと発表している。
コミュニティで顧客の帰属意識とエンゲージメントを高める
今回のローンチを宣伝するためにメゾンマルジェラは4月15日にXスペース(X Spaces)でのイベントを主催。このメタタビNFTプロジェクトに関心を持つ1000人以上の熱心なリスナーが集まった。
「Web3の精神に忠実でありながら優れたファッションにも忠実である顧客とブランドとのコミュニケーションのアプローチは、コレクターらのあいだに帰属意識とエンゲージメントを生み出し、仮想体験と現実体験とのギャップを埋めるものだ」とロッソ氏は語る。
またメゾンマルジェラはDiscord(ディスコード)にも積極的に参加しており、そこには1万人のメンバーがいる。
Discordやそのほかのコミュニティエンゲージメントツールを活用することによって、ブランドは顧客についてより詳細な情報を収集することができる。たとえばメゾンマルジェラのDiscordに参加するためには、OTBグループが保有するどのブランドに興味があるか、出身地はどこかなどの質問に答えなければならない。こうしたユーザーとの交流はユーザーエクスペリエンスを形成し、デジタルコミュニティ内での帰属意識と長期的なロイヤルティを育む。
OTBはメゾンマルジェラのほかにマルニ(Marni)やディーゼル(Diesel)を所有しており、2023年の収益は19億ユーロ(20億ドル、約3085億円)を記録した。
マーチのDiscordには約250人のメンバー、そしてXには2000人以上のフォロワーがいる。同ブランドはフィジタルコレクション発売までの28日間で、この2つのプラットフォーム上で32万8000回のインプレッションを記録した。
LVMH、ラコステ(Lacoste)、クロックス(Crocs)などのブランドもこの数年で、フィジタルアイテムをローンチしている。
[原文:
Maison Margiela aims to drive loyalty with new phygital product launch]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:都築成果)