◆異例の店舗が1年未満で閉店、おドろきの結末?
「ドミセ
渋谷道玄坂通ドードー店」は、ドンキの親会社であるパン・パシフィック・インターナショナルHD(PPIH)が、2017年5月に閉店した旧ドンキ
渋谷店跡地一帯を再開発するかたちで2023年8月に開業した高級商業施設「
道玄坂通」の核店舗として開店したものであった。
ドミセではコンセプトに「おドろき専門店」を掲げ、ドンキの自社PB商品「情熱価格」を中心に、担当者の反省文・言い訳を掲示するアウトレットコーナー「ドすべり」やランキング形式で商品を月替りで発信するコーナー「ドップ10」、量り売りコーナー「ド試し」などユニークなフロアを展開。
看板商品「焼き芋」を同社史上最大となる8種類取揃えるなど、ドンキと情熱価格のブランドショールームとしての役割を担っていた。
◆差別化が困難だった?
ドミセは開店からわずか3か月後となる2023年11月にリニューアルを実施。
渋谷という立地特性を活かした深夜営業の開始や訪日
外国人観光客によるインバウンド需要の回復を受けた土産・旅行関連商材の取扱い拡大を打ち出すなど、時流を意識した方針転換を図った。一方、ドンキが“進化型旗艦店”と位置づける「MEGA
ドン・キホーテ渋谷本店」がドミセの至近距離、道を挟んで対面に営業するなど自社競合が生じていた。
ドンキ自身も報道発表において「
渋谷本店でもPB商品は販売しており、かつ、多くのメーカー品も取り揃えている」「
渋谷という街でお買い物をされるお客様の足が
渋谷本店で留まる状況」といった課題を挙げており、インバウンド需要に特化した業態としても、情熱価格に特化した業態としても差別化が困難だったことが明らかとなっている。
◆来店客から「やっぱり…」との声も
道玄坂通はドンキの親会社が手掛けるものの、 IHGホテル&リゾーツ運営受託によるライフスタイルブティックホテル「ホテルインディゴ東京
渋谷」を始め、米国シアトル創業・日本初上陸のハンバーガーショップ「Lil Woody’s」やイタリア王室御用達ジェラートショップ「Giolitti」、東京恵比寿創業のスペシャリティコーヒーショップ「猿田彦珈琲」といった国内外の著名ブランドが中心であり、ドンキ系企業も旧ユニー系弁当惣菜大手のカネ美食品によるデパ地下向け洋風惣菜新業態「eashion fun SHIBUYA」や稲荷寿司新業態「こしらへ」が入居するなど、ドンキが従来訴求してきた“驚安”とは一線を画す空間であった。
道玄坂通の開発事業に幹線道路沿いの数棟が参加しなかった関係もあり、建物は歪な形状となったが、それを逆手にとった24時間通行可能な館内通路や高感度なブランド誘致が功を奏し、入居する飲食店に限ればいずれも活況を呈していた。同年1月に惜しまれつつ閉店した「東急百貨店
渋谷・本店」に近いこともあり、
渋谷を本拠とする東急グループが新たに開発した施設と言われれば信じてしまう客も一定数はいるだろう。
一方、
道玄坂通の核となるドミセ自身の客入りは芳しくなく、閉店案内に気付いた来店客から「やっぱり……」との声も聞かれるなど、相乗効果があるとは到底おもえないような状況だった。そもそもなぜ、ドンキは
道玄坂通という高級商業施設に自社PB中心のドミセを出店するという判断に至ったのだろうか?