◆設計職で新卒入社したが「現実はコールセンター」
新卒で上場企業の電機メーカーに就職し、関東近郊に住む吉野和樹さん(仮名・23歳)。入社から半月もたたずに、
退職代行サービスを利用したそうだ。
「設計の専門職で入ったのに、現実はコールセンターでした。それも修理依頼の窓口で、
クレーム対応に近い。お客様は機器が動かないと仕事にならないので必死です。型番や在庫の確認に手間取っていると『なぜ自社製品のこともわからないんだ』と毎日怒鳴られる。始業開始から電話は鳴りやまず、家に帰っても電話対応する悪夢まで見るようになりました」
◆将来性のある上場企業だったが…
内定先は
コロナ禍でも着実に成長を続ける上場企業で、申し分なかった。学生時代に学んだ専門知識も生かせ、配属先も概ね希望通り。でも業務内容は「話と違った」のだ。
「会社の成長スピードに
人材確保が追いついていないんです。だから修理
保守部門だけでは対応できず、ほかの部署の人たちも電話を取らなければならない。就活時の会社説明会ではそんなことひと言も言ってくれませんでした。入社してから、自社製品や電話対応の研修もほとんどないまま、現場に放り込まれました。10年以上在籍している先輩は『
マルチタスクが身につくよ』と自嘲気味に電話の合間に図面を描いています」
◆人事部からの一言で、心が折れた
入社から10日後、吉野さんは電話が怖くなり、受話器を取れなくなった。仕事を休み、人事部に電話するも「もう少し頑張れないか」という言葉が返ってきただけ。その日の深夜、翌朝に出社するストレスに押しつぶされそうになりながら、退職代行業者に
LINEを送った。
「すぐに返信があり、
LINEのやり取りだけで、代行業者からは『もう出社しなくて大丈夫』と言われました。あとは
制服や襟章、退職届を郵送するだけで済み、会社から一切連絡はありません。今は転職活動中です。面接で退職理由を正直に話すのは不安ですが、これ以上、職歴に穴をあけたくない。一日でも早く働きたいです」
ミスマッチは双方にとって不幸でしかない。
取材・文/週刊SPA!編集部
※4月30日発売の週刊SPA!特集「[退職代行する人]の主張」より
―[[退職代行する人]の主張]―