近年は量子コンピューターの開発が積極的に進められており、いくつかの実験的製品が発表されている。これまでのところ暗号解読に利用できるような製品は発表されていないが、そう遠くない将来に登場すると予想されている。そこで、現在解読できない機密データをすべて保管しておき、将来登場するであろう量子コンピュータを使用して解読する「store now decrypt later(今保存して後で解読)」と呼ばれる攻撃手法が注目されており、この攻撃から機密情報をどのようにして保護するかが課題となっている。
Googleはこの課題への答えの一つとして、2023年8月に耐量子性のある「ハイブリッドポスト量子暗号TLS鍵交換」の導入を発表した(参考:「Chromium Blog: Protecting Chrome Traffic with Hybrid Kyber KEM」)。「ハイブリッドポスト量子暗号TLS鍵交換」はChromeバージョン116以降に組み込まれた機能で、TLS接続に使用する共通鍵を確立する手法とされる。具体的には楕円曲線暗号アルゴリズム「X25519」および耐量子鍵カプセル化方式「Kyber768」を組み合わせ、TLS接続の大部分を暗号化するセッションキーを作成する。