近年の研究でたとえ適量でも飲酒は健康を害することが知られていますが、50歳以上の結婚または同居しているカップルを対象にした研究では、「飲酒習慣が似ているカップル」はそうでないカップルよりも長生きするという傾向が明らかになりました。
Alcohol Use and Mortality Among Older Couples in the United States: Evidence of Individual and Partner Effects | The Gerontologist | Oxford Academic
https://academic.oup.com/gerontologist/article-abstract/64/2/gnad101/7230161
Couples with similar drinking habits may live longer | University of Michigan News
https://news.umich.edu/couples-with-similar-drinking-habits-may-live-longer/
Couples with ‘drinking partnership’ may live longer | BPS
https://www.bps.org.uk/research-digest/couples-drinking-partnership-may-live-longer
1998年の論文で初めて提唱された「飲酒パートナーシップ」という概念は、夫婦の飲酒習慣が
夫婦関係に影響を与えている可能性があるというものです。これまでの研究では、どちらか一方が相手より大量に多く飲酒する夫婦では対立や苦痛が増加し、飲酒習慣が似ている夫婦では対立が減り結婚生活が長くなるといった傾向が示唆されています。
しかし、夫婦間の飲酒パターンが健康に及ぼす影響については十分に研究されていませんでした。そこで、ミシガン大学の研究者であるキラ・バーディット氏が率いる研究チームは、夫婦や同居するカップルの飲酒習慣が死亡率と関連しているのかどうかを調査しました。
研究には、ミシガン大学の社会調査研究所が実施するHealth and Retirement study(HRS:健康と退職に関する調査)のデータが用いられました。HRSでは
アメリカの50歳以上の成人を対象として、医療・住宅・資産・雇用・障害といったテーマで2年ごとに約2万人にインタビューを行っています。
研究チームの分析には、1996〜2016年の間に少なくとも3回HRSのインタビューに答えた既婚または同居状態のカップル4656組(9312人)が含まれました。これらの被験者は過去3カ月間にアルコールを飲んだかどうか、飲んだ場合は週に何日、何杯程度飲んだのかといった質問に回答し、研究チームは被験者が死亡したかどうかも調べました。
分析の結果、過去3カ月間に飲酒をしたと回答した割合は、夫あるいは男性で60%近く、妻あるいは女性で50%弱に達していました。また、カップルの飲酒習慣と死亡率を調べたところ、「過去3カ月間に2人とも飲酒したカップル」の死亡リスクは、「2人とも飲酒しなかったカップル」や「どちらか1人だけが飲酒したカップル」よりも低いことが判明しました。
バーディット氏は、「興味深いことに、過去3カ月間に2人とも飲酒したと回答したカップルは、どちらも飲酒していないと回答したカップルや、一方が飲酒してもう一方が飲酒しないという不一致のパターンを持つカップルよりも、長生きすることがわかりました」と述べています。
また、カップルの死亡率は2人の飲酒量が多すぎたりゼロだったりする場合よりも、軽度または適度な飲酒量の方が低くなったとのことです。
今回の研究結果を見ると、「パートナーともっと一緒に飲酒した方が健康にいい」と考えてしまいそうになります。しかし、どういう理由で飲酒習慣の一致が死亡率の低下と関連しているのかは不明であるため、バーディット氏は短絡的な結論に飛びつかないように注意を促しています。
研究チームは、カップル間の飲酒習慣が一致することは、お互いのライフスタイルや親密さ、関係の満足度といった要因を反映している可能性があると指摘。バーディット氏は、「その他の研究でも、一緒に飲酒するカップルは関係の質が高い傾向があることがわかっています。それは、同時に
お酒を飲むことがパートナーとの親密さを高めるからかもしれません」と述べています。
バーディット氏は、カップルの飲酒習慣が健康に及ぼす影響をより正確に理解するには、さらに飲酒やパートナーとの関連について詳しく調査する必要があると主張しました。