◆“飛ぶ”しかなくなる
ホストたちの事情
7年前に
歌舞伎町の
ホストクラブに勤務していたリクさん(仮名・30代)に話を聞いた。
「その後は不動産屋や広告代理店の営業など、“喋り”を武器にするケースが多いです。ただ、それはあくまでもマトモな店で普通に“引退”できた
ホストの話です。“飛んだ”
ホストで人目につく仕事に就ける人はほとんどいません」
“飛ぶ”とは、水商売用語で店に無断で辞めることを指す。
「悪質
ホスト問題」は当然、店の問題でもある。女性客だけでなく、働く
ホストにとっても悪質。そんな店に勤めたゆえに、
ホストは辞めるのに苦労して「飛ぶしかなくなる」と話す。
「うちは
SNSや雑誌などメディア向けの露出が多い店でした。そのため、店側が広告を打ち出してくれなければ初回のお客さんから指名すら入らない。でも、実際はメディアで売り出す
ホストに対して“広告費”という名目で
借金を背負わせている。よく見かける『ウン億円プレイヤー』も、実は
ホストが自腹を切っていたり、店から
借金を背負っていたりすることが多いです」
最初はオーナーの方針に従っていたというリクさん。しかし、店への
借金は一向に減らなかった。
「いくら
SNSに出てもミーハーな客は増えるだけで売り上げはぜんぜん伸びませんでした。客数が多ければ、一人ひとりに付ける時間は短くなるので、ヘルプが回らずお客さんが怒って帰ることもありました。店への
借金も減らないし、精神的に病んでしまったんです」
◆逃れるために本名を変更
とはいえ、いくら体調不良でも店を休むことは許されない。指名客は店に来るし、同僚のヘルプ
ホストに迷惑がかかる。しかもリクさんは、店が用意した寮に入っていた。寮ではリクさんのほかに売れっ子
ホストが3人、同居していた。
しかも、リクさんは
借金を抱えているため、退店することは許されない。入店時の履歴書で実家の住所もバレている。そこでリクさんがとった方法とは……。
「ちょうどその頃、彼女ができたんです。彼女の実家が地方で稼業をしていることを知ったんです。こんなチャンスはないと思い、彼女と話し合って計画的に子供を作りました。当時、20代前半だったので普通に結婚するのでは彼女の親から認められない。そこで子供を作り、彼女の実家に婿養子として入ったんです」
当然、店側はリクさんが彼女の実家に嫁いだとは知る由もない。こうしてリクさんは本名(苗字)を変え、悪質な
ホストクラブから逃れた。もちろん、実家に連絡がきたが、リクさんの親には「行方不明」ということにしてもらった。幸い、実家まで
借金の取り立てに来ることはなかったという。
◆「いま思えば、ハメられた」
リクさんのように、悪質な
ホストクラブに入店してしまい、飛ぶしか選択肢がない
ホストは少なくないのだが、ハヤトさん(仮名・20代)もそのひとりだ。
「僕が働いていた
ホストクラブは、ペナルティが多い店でした。遅刻、当日欠勤以外にも毎週ある強制同伴やイベントなど、事あるごとに罰金を取られました。当時、大学生で授業もあったので遅刻も多く、給料はほとんどありませんでした」