ドリンクバーやビール、焼酎、ウイスキー、ワインなども一緒に飲み放題の「さとバル」も大半の店舗で導入している。自らが取りに行くのは大変だが、自分好みのドリンクに仕上げられるのは嬉しい。また一品メニュー、
デザートメニューも充実しているほか、
ソフトクリームもセルフでお代わり自由で、子供に人気だ。2022年9月からは新しい食べ放題メニュー「さと式焼肉」が全店で販売開始されており、いよいよ焼肉にまで加え、バリエーション豊かな食べ放題プランが店の特徴である。
◆原価と人件費はどの程度に抑えるべきか?
和食さとには、何度も店舗調査に行ったり、家族でもよく行ったものである。人間の胃袋には限界があり、これだけバリエーション豊かなサイドメニューも食べ放題となると、いずれギブアップして肉の追加量が減り、原価高騰に歯止めがかけられる。
飲食店では、60%以内に抑制することが重要になっているFLコスト(原価+人件費)がある。肉をスライサーで切り、重ねられる皿に何段も盛置きし、追加注文が入るとすぐに提供するなどなるべく効率化させたい。肉とサイドメニューを作るのは、調理スタッフの手間や負担が違うからだ。
原価率をうまく低減させても、その分、人件費がかかっては利益が出ない。食材の共通化や半加工品をうまく活用し、メニュー数を増やして魅力度を向上させながら、原価と人件費を低下させているようだ。うまく人間の心理も使って、徐々に肉からサイドメニューに誘導するようにPOPを活用していたから、さすがである。
そもそもターゲット層の年齢が高めの顧客に対して、和食をメインとした多品種少量の定食や御膳を落ち着いた雰囲気で食べるといったコンセプトのお店が、なぜ若者やヤングファミリーが好みそうな、しゃぶしゃぶ食べ放題を始めたのか。その目的と狙いは、平日ディナー帯の活性化ではないだろうかと思う。
◆ターゲット層の年齢が高めの店がなぜ?
外食市場が29兆円(1997年)をピークに拡大しても、どの店も平日のディナー帯の閑散状態の打破が課題だった。外食では、平日のランチ時間帯や土日に需要が一気集中するのはキャパの有効活用策からも改善が急務だった。
焼肉チェーン店の中には、平日のディナー時間帯は全品半額という集客策を講じた店もあった。確かに土日の週末に客が集中するという曜日指数の偏在に、客の分散化対策をあれこれ講じたくなる心理は分からなくもないが、さすがにそれはやり過ぎとの声が出て、結局、その集客策はナシになった。
親しかった和食さと本部の社員に聞くと、そういった事情もあって、平日のディナーはどうしても客席が埋まらず、店内に活気がなさ過ぎて、次のお客さんが入りにくいという雰囲気を打破したかったそうだ。そして、店内の賑わいを演出するために食べ放題メニューをスタートしたのであるとのこと。
お客さんが店に入りやすくする方法のひとつとして、店内にお客さんがいなければ入りにくいから、ある程度、店内にお客さんを埋めて賑やかさを演出しなければならない。店内がガラガラだったら、この店は美味しくないんじゃないかとお客さんは連想される。チェーンとしてのブランド力で安心感を与えることができても限度がある。
◆絶対にお得感がある和食メニュー
極端に言えば、食べ放題メニューをロスリーダー(収益を度外視して極端な低価格で販売する目玉商品)として集客し、それ以外のメニューを召し上がるお客さんから利益を確保するということも可能である。和食独特のメニューで天婦羅、ステーキ、茶碗蒸し、にぎり
寿司や天丼、お吸い物、うどんやそばなどのフルコースもあるからだ。この価格で食べ放題とは絶対にお得感があるが、お店側からすると有難いのではないだろうか。