中華ファミレスチェーンで、すかいらーく傘下のバーミヤンも、本格中華がリーズナブルに楽しめるファミリーレストランである。バーミヤンは1986年に開業し、どの店に行っても同じ味というチェーンとしての統一性を遵守した店づくりになっている。
各店が均一の味で低価格の料理を提供するために、マニュアル化した手順のもとでパートさんが主に調理を行っている。セントラルキッチンで下準備された半加工品や下味調理された食材を店舗の厨房で最終加工し、お客さんに提供している。他業態に比べて冷凍食材を使用しないなど、鮮度を重視したメニュー作りもされている。
現場への調理指導は、各店舗の端末へ調理手順を動画配信するシステムが配備されたり、技能検定制度を整備されたりするなど教育訓練は徹底されている。DXにも積極的で、タッチパネルによるオーダーシステム、配膳ロボットによる料理提供、セルフレジも今年の上半期中に全店で完備する計画で省力化投資にも力を注ぎ、効率化を追求しているようだ。
定着した配膳ロボットだが、通常、人の接客だとお客様が歩くと従業員がお客様に道を譲るものだが、配膳ロボットが来ると客のほうが配膳ロボットに道を譲るのは見ていて滑稽だ。でも、伸びては困るラーメンや泡が消えたら価値が減る生
ビールを配膳ロボットに運ばせるのはいかがなものだろう。効果と効率を考え運ばせるものを考えたほうがいいと思う。
◆店舗数は倍近く多い
餃子の王将 すかいらーくは、外食売上ランキング3位で「外食御三家」といわれて高度経済成長期を支えた外食の代表企業のひとつである。
ガスト(1272店舗)やバーミヤン(354店舗)などお手頃価格で幅広い利用動機に対応し、全国に多店舗を展開するファミリーダイニング事業と、しゃぶ葉(282店舗)など、専門性が高く、外食ならではの豊かな体験や価値を提供するカジュアルダイニング事業の両輪で、顧客の多様化する外食のニーズに対応している(店舗数は2024年3月時点)。
両店の違いを筆者の視点で見比べてみたい。店舗数は
餃子の王将729店(2024年1月時点)、バーミヤン354店(2024年3月時点)であり、店舗数は倍の差がある。100席程度の大型標準タイプ店で郊外型が中心のバーミヤンに対して、規模も立地もさまざまな
餃子の王将。家族連れで行くのは、ゆったりと落ち着いた雰囲気でくつろげるバーミヤンを好む人も多いが、近くにあまり店がないといった不満があるようだ。
◆顧客満足度を高める「QSC」とは
店舗経営で、顧客満足度を高めるために重視するのは、QSCである。Qは品質、Sはサービス、Cはクリーンリネスである。Qの品質において商品力と価格のリーズナブル性は、甲乙つけがたく思えるが、
裏メニューなどメニュー以外のカスタマイズ化は
餃子の王将のほうが柔軟性もあり、聞き入れてもらえて満足感が増す。バーミヤンは料理提供のほとんどを配膳ロボットが担っており、ホールに店員さんも少ないので言いにくい点は否めない。
Sのサービス(接客)においては、
餃子の王将は気さくでフレンドリー感があり特に違和感はないが、バーミヤンのほうが丁寧で気配りのある接客であろう。
Cのクリーンリネスは、店内の清掃の質を表し、特に衛生的、見た目の清潔感が問われるが、従業員の制服の着こなしも含め整理・整頓・清潔・清掃は、バーミヤンのほうに軍配が上がっている気がし、
餃子の王将に行く客は、あまりそこまで要求しないように感じる。
上記のように、ターゲット客やメニュー内容は似ている両社だが、中華料理店だけの単一事業で市場を深耕してシェアを高める
餃子の王将と、複数の業態を開発して複数ブランドのシナジー効果を得ながら、また多角化のリスクを分散するバーミヤン。異なる経営路線の両社の事業展開を、今後も興味を持ちながら見ていきたい。
<TEXT/中村清志>
【中村清志】
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan