この運用結果を踏まえ、50〜60代の方で安定的に運用していきたいなら、新
NISAで債券重視の投資信託を選ぶのはアリだと思います。ただその場合、将来的なリターンはどうしても限られてしまうことも、併せて知っておくといいでしょう。
あとは50〜60代における銘柄選びの他の選択肢として、高配当株投資を検討するのもいいでしょう。国からの年金では足りない老後の生活費を、配当金で用意していく「じぶん年金」を作ることができますからね。
◆高配当株投資にはどれだけ必要?
仮に新
NISAの成長投資枠で高配当株投資を行った際、月○円の配当金を受け取るには、いくらの投資元本が必要かを考えてみましょう。高配当ETFの代表格であるVYMなら、配当利回りは年3%が目安となります。
まず月5000円、つまり年間で6万円の配当金を受け取るなら、6万円÷3%=200万円の投資元本が必要です。次に月1万円、つまり年間で12万円の配当金を受け取るなら、12万円÷3%=400万円の投資元本が必要に。そして月2万円、年間で24万円の配当金を受け取るなら、24万円÷3%=800万円の投資元本が必要に。
最後に月3万円、年間で36万円の配当金を受け取るなら、36万円÷3%=1200万円の投資元本が必要となります。そのため、新
NISAの成長投資枠1200万円をすべて高配当株投資で埋めたなら、毎月3万円が税引き前で受け取れることになります。ただ前述のように新
NISAでは米国株・米国ETFへの配当金に対して国内課税(約20%)は非課税となりますが、米国課税(10%)はかかってきます。
そうすると、VYMから税引き前で3万円の配当金があっても、米国課税10%は引かれて、手元に残るのは月2万7000円になります。このようなイメージで、配当金をじぶん年金として、老後資金の足しに考えるといいでしょう。
◆50〜60代でよくある投資の失敗例とは
50〜60代の新
NISAにおける投資戦略が分かってきたところで、よくある失敗例も知っておきましょう。運用できる期間が若い人に比べて短いという焦りからか、私の元にも50〜60代の方から投資で失敗したという相談をしばしばいただきます。
まずは代表的な失敗例として、自分がよく分かっていないものに投資してしまうことがあります。投資商品でいうと、たとえば暗号資産やFX、また個別株などですね。いずれも短期間で高いリターンを得られるかもしれないという話から、中身がよく分からなくても飛びついてしまう人が後を絶ちません。
ただ、これらの商品自体への投資が絶対ダメというわけではなく、本当にその商品の仕組みや注意点を理解しているかが大事です。「自分がよく分かっていないものには投資しない」とは
資産運用における格言ですが、誰かが勧めてきたからという安易な発想で投資しないように気を付けてください。
また、先ほどリスクとリターンの話をしましたが、これらは表裏一体の関係にあります。つまり、短期間で得られるかもしれないリターン(利益)が大きいほど、すぐに大損してしまう恐れもあります。
◆「早く、大きく儲けたい」はキケン
「50〜60代で投資を始めたから、早く利益を出して大きく儲けたい」と考える方も多いですが、新
NISAにおける投資はあくまで時間をかけてコツコツと続けていくことが大切なのを忘れないでください。
また、50〜60代でまとまった資金を新
NISAの投資に回そうという方も、まずは月数千円〜数万円の少額投資からスタートすることをおすすめします。
せっかくだから退職金も使って大きな金額で始めたいと思うかもしれませんが、その後に暴落が起きて狼狽売り(株価が急落する様子を見て、保有している株式を慌てて売却してしまうこと)してしまったら、目も当てられませんからね。
投資に慣れてきた段階で、少しずつ新
NISAの投資額も増やしていけばいいので、慌てず余裕を持って始めていきましょう。
<TEXT/小林亮平>
【小林亮平】
1989年生まれ。横浜国立大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。同行退社後、ブログやSNSで
NISAやiDeCoなど
資産運用の入門知識を発信。現在はYouTube「BANK ACADEMY」の運営に注力しており、YouTubeのチャンネル登録者数は70万人を超える。「超初心者でも理解できるよう優しく伝える」をモットーに、自作のイラストを駆使した丁寧な解説が好評を得ている。著書に『これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生』(KADOKAWA)がある