豚肉はよく加熱しなければならない食材のひとつですが、ベーコンなら「加熱して食べてください」と書かれていない限りそのまま食べても問題ないとされています。ベーコンを加熱が不十分な状態で食べた男性の脳から
寄生虫が発見された事例が、
アメリカで報告されました。
American Journal of Case Reports | Neurocysticercosis Presenting as Migraine in the United States - Article abstract #943133
https://amjcaserep.com/abstract/index/idArt/943133
Parasitic worms found in man's brain after he likely ate undercooked bacon | Live Science
https://www.livescience.com/health/viruses-infections-disease/parasitic-worms-found-in-mans-brain-after-he-likely-ate-undercooked-bacon
ベーコンが原因で脳にサナダムシが寄生してしまったのは、
アメリカに住む52歳の男性です。この男性は、元から片頭痛の既往歴がありましたが、頭痛の頻度と重症度が突然激化し、通常の治療の効果が出なくなったため、医師の診察を受けることになりました。
そして、医師が男性の脳をCTスキャンしたところ、脳のさまざまな場所に嚢胞(のうほう)があることが判明。ただちに緊急入院させて磁気共鳴画像装置(MRI)でさらに詳しくスキャンした結果から、男性は脳に有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)、つまりサナダムシが寄生した神経嚢虫症だと診断されました。
![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/b/5/b531b_88_7f79df4d4e51d6087fcc91403eb69c90.jpg)
男性に寄生していたのは、豚を中間宿主とするサナダムシで、主な感染経路は加熱が不十分な豚肉や、サナダムシに寄生された人の便で汚染された飲食物です。サナダムシの卵や幼虫を摂取すると、腸内でサナダムシの幼虫が嚢胞を形成する条虫症(囊虫症)となりますが、脳などの神経系に嚢胞ができた場合は神経嚢虫症と診断されます。
嚢虫症は豚を主な食料源としている国や衛生環境が劣悪な地域で一般的ですが、海外旅行や移民の増加などにより、
アメリカなどの先進国でも見られるようになってきています。
しかし、この男性は最近どこかに旅行したり農場を訪れたりしたことがなく、近代的な住宅に住んでおり、これと言ったサナダムシへの曝露(ばくろ)歴がありませんでした。
その一方で、男性は火が通っていない「ソフトなベーコン」を食べる習慣があると話しました。そのため、男性はまずベーコンを食べて条虫症を発症し、その後トイレできちんと手を洗わなかったことで今度は神経嚢虫症になったのだろうと、医師らは結論づけました。
アメリカ食品医薬品局(FDA)は豚肉をカ氏145度(セ氏約63度)以上まで加熱するよう推奨しています。ベーコンは硬化剤により火が通っていてもピンク色なことがあるため、温度がわかりづらいですが、
アメリカの農務省は「カリカリになるまで調理されていれば安全な温度に達しているはずです」としています。
脳にサナダムシが見つかった男性は、抗
寄生虫薬による
寄生虫の駆除と抗炎症薬による治療が功を奏し、頭痛も改善されたと医師らは論文に記しました。
また、医師らは「古典的な曝露や旅行以外で神経嚢虫症に感染することは非常にまれであり、
アメリカではそのような症例は存在しないと考えられていました」と指摘した上で「この症例は、明らかな危険因子がなくとも、既存の神経病理的な疾患の症状が変化した場合や治療管理の変更が必要になった場合には、神経嚢虫症を疑うべきであることを示しています」と結論づけました。