今回のリニューアルオープンにあわせて、「RICOH BIL TOKYOエグゼクティブアドバイザー」という新たな肩書もついたリコー 代表取締役会長の山下良則氏は、「顧客接点の多くは、販売会社であるリコージャパンや、保守サービス部門が中心となっていたが、RICOH BIL TOKYOでは、リコーの技術部門や経営幹部も一緒になって、お客様やパートナーと共創を行う場にしたいと考えている。対話や会話をしながら、気がついていない課題に気づいてもらうこと、課題解決や改革の鍵を握る経営幹部とリーダーシップについての考え方や姿勢を共有すること、そして、AIをはじめとした最新技術の活用について検討する場にしたい」と述べ、「リコーは、デジタルサービスの会社に向けて、軸足を移している最中だが、お客様との対話で気がつくことが多く、それによって、先手を打つことができる。リコーにとってもRICOH BIL TOKYOは大切な共創の場になる。私自身、この拠点で執務を行う時間を多くしたいと考えている」と述べた。
RICOH BIL TOKYOは、2018年に、リコージャパンの田町事業所に開設し、これまでに860社が利用した実績を持つ。だが、リコーのデジタルサービスによって解決できた課題は56%に留まり、残りの44%は既存のデジタルサービスの範囲では解決が困難であったり、価値を実現できずにPoC止まりに終わったりしてしまったという。
リコー リコーデジタルサービス ビジネスユニット カンパニープレジデントの入佐孝宏氏
リコー リコーデジタルサービス ビジネスユニット カンパニープレジデントの入佐孝宏氏は、「これらの解けない課題を解決することが、リコーが目指す『はたらくに歓び』を実現することになる。そのためには課題をしっかりと聞くことができる共創の場が必要であり、同時に解けない問題を、AIなどの新たな技術を使って解決することが必要になる。AIと共創の掛け合わせで、新たな価値と創造を生み出す場が、新たなRICOH BIL TOKYOになる。日々、進化していく拠点になる」とした。
新たなRICOH BIL TOKYOは、JR品川駅港南口から徒歩6分の品川シーズンテラスの18階にあり、約1000平方メートルを使用。従来は、一部屋だけを使用した16坪(約50平方メートル)の規模であったことに比較すると大幅に拡張したことがわかる。
リコーの菊地室長は、「新たなRICOH BIL TOKYOは、創造力を掻き立てる拠点になる。また、お客様の対話から、新たな問いを生み出せる拠点にしたい」と語る。
RICOH BIL TOKYOのロゴは、山をイメージしており、施設内の部屋などにも、登山に関する言葉が使われている。共創DXの実現を登山にたとえ、ビジョンに共感する人とともにパーティーを組み、未踏の山の頂を目指し、経験から道筋をつけたり、新たなルートを開拓したりし、目の前に開けた景色を見て、さらに、次の登山につなげるというサイクルを表現し、演出しているという。
RICOH BIL TOKYOのロゴマーク
創造力を掻き立てる拠点を目指す
RICOH BIL TOKYOの様子を見てみよう。
RICOH BIL TOKYOは、品川シーズンテラスの18階にある
エントランスでは、流木アートが置かれている。サステナブルの社会を表現していという。流木は目を細めると達筆な「心」という文字にも見えるという都市伝説も用意されている。また、真っ白な空間としているのは、新たなものを創出していくという姿勢を表現。頭のなかをリセットして、RICOH BIL TOKYOに入れるようにする狙いもある
リコーでは、顧客接点力を活かした100以上の業種別顧客価値シナリオを用意しているが、RICOH BIL TOKYOでは、業界ごとに25件以上の顧客価値シナリオを紹介。建設業におけるファシリティマネジメントの無人化を目指す画像認識AI技術や、クラウド型の業務改善プラットフォーム「RICOH kintone plus」、自然言語処理AIでデータ分析を行うサービス「仕事のAI」を活用した営業ワークフロー改善の事例など、来場する業種業務に合わせて解決事例を紹介しながら、顧客固有のソリューションの共創につなげる。
具体的には、建設では、「デジタルツインを活用した現場調査・維持管理」、「デジタルツインを活用した現場の安全衛生管理」、「ベクトル検索を活用した建設図面/工程作成支援」、「プロジェクションマッピングを活用した墨出し作業効率化」、「遠隔臨場検査」をデモストレーションできるようにしているほか、流通では「視聴データ計測を活用した販促コンテンツの棚サイネージ配信」、「AIカメラ+インカムを活用した店舗異常検知と作業者間コミュニケーション」、「Chatbot Service + OpenAIを活用した商品POP生成」、「働くAIを活用したパレットトラッキング」を展示している。また、ヘルスケアでは、「第六感デバイスを活用した要介護者との円滑なコミュニケーション」、「ケアマルシェによるセンシングデータを活用した介護記録作成支援」、「画像AI+LLMによる介護帳票電子化と介護記録の分析」を展示。製造では、「デジタルツインを活用した食品製造の衛生チェック」、「360°LiveStreaming工場の遠隔監視」、「ベクトル検索を活用した設計技術相談」を、自治体向けには「AI-OCR + kintoneを活用した申請書提出ワークフローの省力化」、「独自LLMを活用した議会答弁案の生成」を紹介できるようにしている。
対話が可能な空間版ChatGPT。RICOH BIL TOKYOの建設中の画像データや、使用された部材データなどを生成AIが学習。画像を見ながら、白い天井のサイズを聞くとAIから適切な答えが返ってくる様子をデモストレーション。今後は、メンテナンス情報などを学習させて、ベテラン保守員のノウハウを伝承できるようにする
リコーの山下会長は、「RICOH BIL TOKYOのリニユーアルにあたり、富士通やKDDIの共創拠点を訪問したが、時田社長(富士通)や高橋社長(KDDI)と話をして感じたのは、自らが成長の途上段階にあるという意識がないと議論にならず、その意識を持つことの大切さを知ったことだった。そこで、私自身が、ここ(RICOH BIL TOKYO)に席を置かなくてはならないと考えた」としながら、「1社だけの共創拠点では、やはり営業っぽくなる。たとえば、富士通やKDDIの共創拠点とつなげ、輪になれば、世の中が変わり、日本が元気になる。そうした拠点にしていきたい」と述べた。
山下会長が描くRICOH BIL TOKYOの進化の姿のひとつには、共創拠点同士が共創するという新たな挑戦が含まれているようだ。