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J-CASTニュース
―― 「山陰新幹線を実現する国会議員の会」の会長を務めています。議連としても、(山陰新幹線の)作り方は柔軟に考えていかないといけない、ということですね。
石破: そうあるべきだと思います。だって山陰新幹線って、今のままいけば22世紀ですよ?そのころ日本は人口半分。そのときにフル規格の新幹線走らせてどうすんの?という話です。東海道新幹線は、のぞみ、ひかり、こだま合わせれば1時間に10数本走っていますね(編注:「のぞみ」だけで1時間あたり片道最大12本運行可能)。山陰新幹線はそんなに走りますか?
―― 走ったところで...。
石破: そんなに意味ないよ?だったら単線新幹線というのもあるかもしれない。ただ、単線新幹線なら工費が半額になるわけでもないらしいですね。だったら在来線の近代化の方がよほど早い。単線新幹線でも、やはり並行在来線の問題が発生します。この点も、もう少し真面目に考えた方がいいですね。
―― 北陸新幹線は24年3月に金沢-敦賀間が開業します。新幹線開業前は1本でつながっていた北陸本線が、日本海側だけでも、えちごトキめき鉄道、あいの風とやま鉄道、IRいしかわ鉄道、ハピラインふくいと4社に分かれることになります。ネットワークが分断されて利便性が下がったり、運賃が上がったりする問題が出てきます。
石破: そうだと思います。北陸新幹線は大阪まで行かせなければしょうがない。西九州新幹線も、今のままだと(編注:新鳥栖-武雄温泉が未開通で、博多-長崎が直通していない)ほとんど意味がない...と言っちゃいけませんが、直結させるべきでしょうね。かつて「新幹線リレー号」というものが上野-大宮間に走っていました。東北新幹線が大宮から先開業したときに(編注:1982年に大宮-盛岡間で開業)、やがて直結させるという構想のもとに走ったのであって、今の西九州新幹線はまだ見通しが立たない。どうしたら佐賀県が納得できるようなアイデアを示せるか、ということに更なる努力が必要でしょう。
―― 「基本計画路線」の中で進捗が早かったのがリニア中央新幹線ですが、静岡県の川勝平太知事は、湧水をめぐる問題を理由に慎重姿勢を示しています。こういった声は、どうすれば説得できるでしょうか。
石破: 分かりませんなぁ。全然分かりません(苦笑)。私はリニアそのものが何の意味があるのかよく分からない。そう思ってる人は実は多いんじゃないの?東海道新幹線ができたときも、相当に計画自体に批判がありました。大蔵省(当時)では「昭和の三大馬鹿査定」と言われたそうです。戦艦大和、青函トンネル、東海道新幹線(編注:諸説あり。伊勢湾干拓を含める場合もある)。ただ、当時は東海道線が飽和状態だったし、日本経済が伸びていく時代だった。東海道新幹線の構想にはものすごく先見性もあったわけですが、リニアというのは本当にいるのかね?と思ってる人って、実はいっぱいいませんか?
―― 新しい技術に不安を持っている人もいるかもしれませんね。
石破: それは、そんなもんです。「のぞみ」ができたときも、「そんなもの走らせて大丈夫か」みたいなこと言う人もいましたし、新しい技術は常にリスクがあるものです。その上で、リニアというものに意味がないとは言いませんが、東京-大阪間が1時間で結ばれて、それがどうしたの?という人は多いのではないでしょうか。
―― 「のぞみ」だと東京-新大阪で2時間半。微妙な短縮幅でしょうか...?
石破: そうだと思いますけどね。大体、税金を1円も入れないって話じゃなかったんですか?
―― 当初はJR東海が自腹(自己資金)で建設する計画でした。
石破: いつの間に財投を使う話になったんです?(編注:安倍晋三首相(当時)が16年7月の記者会見で全線開業を最大8年間前倒しすることを表明し、政府は財政投融資を活用して3兆円をJR東海に貸し付けている)。そこはおかしくないだろうか、と思うんですね。
―― 実は、過去の国会答弁を検索すると、14年11月14日の参院・地方創生に関する特別委員会で、地方創生担当相として「非常に災害に対して強い乗り物であるということ、そしてまた東海道新幹線に仮にダメージが生じたときにそれを代替する、そういうような機能も持つもので」などと答弁しています。これは立場上おっしゃらざるを得なかった、ということですね。
石破: それは言わざるを得ないですね。それはね。
―― そういうところ(災害時の代替機能)を踏まえても、なかなか作る意味は怪しい、ということですね。
石破: それ(リニア)が日本全体にどういう意味を持つんですか、という検証が十分なされていないのと、1企業が1企業としておやりになるのであれば「それはどうぞ」という話ですが、いつの間にか国費が使われる話になっていますし、どうなんでしょうね。そのお金があるんだったら、北海道の鉄道の近代化にもっと使ったらどうなんですか?例えば、JR北海道って本当に気の毒だと思っているんです。あの過酷な自然環境で、ほとんど電化が進んでない北海道の鉄道で、あの重いディーゼルをぶっ飛ばせば、そりゃ、ああなりますよ(編注:JR北海道では、設備の老朽化にともなう安全投資の負担が経営を圧迫している)。(経営安定基金で運用益が出せたのは)まだ金利が高かった時代の話で、その頃の金利で運用すればやれたでしょうけど、今これだけ金利が下がっていて、別にJR北海道の努力が足りないとか、労使関係がうまくいってないとか、そういう要素はないとは言わないけれど、リニアを作るお金があるんだったら、北海道の鉄道近代化の方がよっぽど意味があったと思いますけどね。(第2回へ続く。1月5日掲載予定です)
石破茂さん プロフィールいしば・しげる 衆院議員。1957年生まれ、鳥取県出身。慶應義塾大学法学部卒業後、三井銀行(現・三井住友銀行)入行。1986年、全国最年少議員として衆院議員に初当選。現在12期目。自民党では幹事長、内閣では防衛大臣、農林水産大臣、地方創生・国家戦略特別区域担当大臣などを歴任した。