パクチーを「どんな料理にも入れたい」とこよなく愛する人がいる一方、「カメムシみたいな匂いがして食べられない」という人もいます。
パクチーの好き嫌いが真っ二つに分かれる原因には遺伝的な違いがあることが、
DNA検査会社の調べにより判明しました。
Cilantro Love and Hate: Is it a Genetic Trait? - 23andMe Blog
https://blog.23andme.com/articles/cilantro-love-hate-genetic-trait
Why do some people think cilantro tastes like soap? | Live Science
https://www.livescience.com/health/food-diet/why-do-some-people-think-cilantro-tastes-like-soap
同じ食べ物でも好きな人と嫌いな人がいるのはよくあることですが、その多くは同じ味を感じています。その典型的な例が唐辛子で、誰もが辛いという刺激を感じますがそれを好むかどうかは人によりけりです。
ところが、
パクチーの場合は風味を識別する
遺伝子によって感じる味が異なることが、
DNA検査会社・23andMeの大規模研究により判明しました。
![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/9/8/98ae3_88_20f4b33a64cb78397074afced533b7f4.jpg)
まず、23andMeの研究チームは数千人を対象に
パクチーの好みに関する調査を行い、
パクチー嫌いに関連する一塩基多型(SNP)、つまり個人間における
DNAの塩基配列の違いをいくつか特定しました。
そのうちの1つは、嗅覚受容体「OR6A2」という受容体をコードするもので、
パクチー特有の風味をもたらすアルデヒドと特異的に結合するものでした。アルデヒドの中には「フルーティーでグリーン」と形容されるものもあれば、「石けんみたいな刺激臭」と表現されるものもあります。
また、23andMeの調査では
パクチーの好みは遺伝する可能性が高く、民族によっても異なることも判明しました。具体的には、
パクチーを「石けんのような味がする」と嫌う人の割合は、ヨーロッパなどに住むアシュケナージ系ユダヤ人が約14%、南ヨーロッパや北欧の人々が約13%、アフリカ系アメリカ人やラテン系アメリカ人が約9%だったのに対し、東アジア人では約8%、南アジア人では約4%しかいませんでした。
![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/9/f/9fb35_88_29efda42b9b76398d93bd58b0154e3b9.png)
これについて、ペンシルベニア州立大学の食品科学者で味覚の専門家のジョン・ヘイズ氏は、「
パクチーを石けんのような味だとあまり感じない文化圏では、
パクチーを料理に使う傾向が強いのでしょう」と述べました。
英語圏では「石けんっぽい」と形容されることが多い
パクチーの風味ですが、このような表現が定着する前は「虫みたいな臭い」と言われていました。
パクチーと食文化について論じた2023年9月の研究によると、1997年に発刊された植物辞典には「新鮮な
パクチーを砕くと、ナンキンムシやカメムシのような不快な臭いを放つ」と説明されていたとのことです。
遺伝子によって味覚が左右されるケースは、
パクチーだけではありません。例えば、嗅覚受容体「OR7D4」の遺伝的変異によっては、アンドロステノンというホルモンに敏感になります。そのため、この変異を持っている人は去勢されていないオスの豚の肉を食べると臭みを感じてしまう可能性があります。
他にも、ケールや芽キャベツのような苦い野菜、あるいはホップの苦味が効いたビールが好きになるかどうかを決定する味覚受容体「TAS2R38」や、グレープフルーツやキニーネ、サッカリンの好みを左右する味覚受容体「TAS2R31」などがあります。
生まれつきや民族的な要因が強い
パクチーの好き嫌いですが、何度も接するうちに慣れることが可能とのこと。ヘイズ氏は、「生物学は運命ではありません」と話しました。