水分不足が肥満を招くとの研究結果があるように、人体の大半を占める水分と脂肪との間には密接な関係があるとされており、積極的に水を飲んで減量を目指す「水
ダイエット」が奨励されることもあります。しかし、インターネット上などで見られる「水を飲むとやせる」という言説の一部には誤りがあると、専門家は指摘しています。
Weight loss: drinking a gallon of water a day probably won’t help you lose weight
https://theconversation.com/weight-loss-drinking-a-gallon-of-water-a-day-probably-wont-help-you-lose-weight-211311
体重を減らしたいなら毎日たくさん水を飲むべきだとよく言われており、インターネット上には「1日に1ガロン(約4.5リットル)もの水を飲むべき」というアドバイスさえあります。
一方、イギリス・アストン医科大学の臨床栄養学者であるデュアン・メラー氏は、水
ダイエットに関するいくつかの主張には科学的な証拠がほとんどないとして、主な誤解である「カロリー燃焼」と「食べ過ぎ防止」の2点について解説しました。
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◆誤解1:水はカロリーの消費を助ける
標準体重の若者14人を対象とした小規模な研究では、500mlの水を飲むと安静時のエネルギー消費が約24%増加することが示されました。
これはめざましい効果に思えますが、実は効果が続くのはたったの1時間でした。そのため、体重70kgの人が500mlの水を飲んでも、ビスケット4分の1枚相当の20kcalしか消費されないとのこと。若者8人が参加した別の実験では、冷蔵庫で冷やした水を飲んだ時しかエネルギー消費量が増加せず、増加量もわずか4%だったと報告されました。
冷たい水を飲んだ時に消費エネルギーが増える理由について、メラー氏は「水を体温に戻すときに体がより多くのエネルギーを使ったか、増加した体液を腎臓でろ過する際により多くのエネルギーが必要となったかのどちらかでしょう」と推測しています。
このように、水を飲むと確かにエネルギーが消費できるものの、その影響は微々たるもので、1日1.5リットルの水を余計に飲んでも消費カロリーはパン1枚分以下しかありません。また、上記の研究はすべて健康な若者が対象だったので、中高年など他のグループではどうかを確かめるにはさらなる研究が必要だと、メラー氏は述べました。
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◆誤解2:食事中に水を飲むと食欲が抑制されて体重が減る
胃の中に水が入っていれば食べ物が入るスペースが少なくなるので、食べる量を減らせるという説明には一理あるように思えます。実際に、55人の太りすぎの中高齢者(55〜75歳)が参加した研究では、水を500ml飲むと体重が減少することが示されました。
メラー氏によると、体調不良の人や食欲不振の人には、食前に飲酒しないよう指導されることがあるとのこと。これは、食事の前に飲酒してしまうと食べられる量が少なくなりすぎてしまい、栄養が不足してしまうおそれがあるからです。
しかし、食欲を持て余している人に対する効果は未知数です。例えば、若者と高齢者に食事の30分前に水を500ml飲んでもらった研究では、60〜80歳の高齢者が食前に水を飲むと12週間で2kg体重が減少しましたが、21〜35歳の若者は水を飲んでも体重が減りませんでした。
実は、この研究は参加者に実験内容を伏せる盲検化が行われていないため、参加者がなぜ水を飲むのかに気づいてしまった可能性があるとのこと。そうなると、参加者が研究者の期待に応えようと食べる量を減らしてしまった可能性が排除できません。
また、水と食事についての研究の多くは1日のうち1回の食事量しか見ていない場合が多いため、水を飲むと食欲が抑制できるという質の高いエビデンスを示す研究はほとんどありません。このことからメラー氏は「水には食欲を減退させる効果があるかもしれませんが、長期的な体重の変化にはつながらないようです」と述べました。
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◆その他の水と食欲についての役立つ情報
メラー氏によると、人が満腹になったと感じるのは、食べ物が入って胃が膨れることで伸展受容器が刺激され、満腹だというホルモンが分泌されるからだとのこと。
しかし、水は液体なのですぐに胃から排出されてしまい、満腹感にはつながりません。より重要なことに、胃には消化されている半固形の食べ物を迂回(うかい)して水を通過させる機能があるので、食事中や食後に水を飲んでも結局すぐに胃から排出されてしまい、あまり満腹感を長持ちさせる役は立たないとメラー氏は述べました。
水だけを過剰に飲んでも食事の量や体重を減らせないかもしれませんが、食物繊維など他の物質を水に混ぜたり、野菜スープなどの形で水分を摂取したりすると、胃が空になるのが遅くなり、満腹感を持続させられるという研究結果は報告されています。
メラー氏は末尾で、「水は直接体重を減らさないかもしれませんが、私たちが選択できる最も健康的な飲み物なので、減量の一助にすることは可能です。甘い炭酸飲料やアルコールなどの高カロリー飲料を水に置き換えれば、1日に摂取するカロリーを簡単に減らすことができ、
ダイエットにも役立つでしょう」とまとめました。