巨大な天体が崩壊した際に形成されると考えられている
ブラックホールは、あまりに大きな質量で時空がゆがみ、光すら脱出ができない天体です。そんな
ブラックホールを用いて過去や未来へのタイムトラベルは可能なのか、オーストラリアカトリック大学の科学哲学者であるサム・バロン氏が解説しています。
Are black holes time machines? Yes, but there's a catch
https://theconversation.com/are-black-holes-time-machines-yes-but-theres-a-catch-195418
ブラックホールとは、巨大な恒星が崩壊する際に形成される、質量が非常に大きな天体です。地球や太陽といった天体と同様に、
ブラックホールにも重力があり、重力は天体の質量が大きいほど強くなるとされています。
ブラックホールの重力は非常に強く、光でさえも脱出が不可能で、
ブラックホールを外から見ると真っ黒に見えます。
理論物理学者のアルベルト・アインシュタインが発表した一般相対性理論では、巨大な物体ほど周囲の空間が引き伸ばされ、曲げられるとされており、巨大な物体は空間に谷のようなものを形成すると考えられています。そのため、別の物体が近づくと、その物体は空間の谷に落ちてしまうとされています。
ブラックホールのような巨大な天体に近づくと、その天体に向かって物質が落ちていきます。形成された谷の側面は天体に近づくにつれてどんどん険しくなっていき、光でさえも抜け出せなくなるほどの急勾配になる点を「事象の地平面」と呼びます。
ブラックホールによって空間が引き伸ばされると、時間も引き伸ばされると考えられており、巨大な物体の近くにある時計は、物体から遠い時計よりも進みが遅くなるとされています。
ブラックホールの近くにある時計は、地球上にある時計に比べて非常にゆっくりとした動きになり、
ブラックホールの近くの1年は、地球上では80年に相当するとのこと。
そのため地球の未来を見たい場合、
ブラックホールの近くを飛行して、その後地球へ戻ることで、未来へのタイムトラベルは可能であると考えられています。
一方で、時間を大きく曲げ、時間を巻き戻すことが可能と考えられている
ブラックホールを用いた過去へのタイムトラベルは、理論的には可能とされていますが、
ブラックホールによる過去へのタイムトラベルにはいくつかの障害があります。1つ目は、
ブラックホールが形成された以降の過去にしか戻れない点です。バロン氏は「恐竜が絶滅した後に
ブラックホールが形成されたのならば、恐竜が生息していた時代まで戻ることは不可能です」と述べています。
2つ目は過去へのタイムトラベルを行う場合には、事象の地平面を超えなければならない点です。過去のある時代に
ブラックホールから脱出するためには事象の地平面の外に出る必要があり、光よりも高速で移動することが求められるとのこと。
3つ目は人間や
宇宙船などのあらゆる物質が「スパゲッティ化」してしまう点です。事象の地平面を超えると、物体はスパゲティの麺のように平たく引き伸ばされてしまい、最終的には原子の列が渦を巻いて
ブラックホールに落ちていくとされています。
バロン氏は「
ブラックホールの時間をゆがめる特性について考える事は楽しいですが、当分の間、過去へのタイムトラベルは空想の領域にとどめておく必要があります」と述べています。