ポメラのコンセプトとは何か。ズバリ「テキスト入力のみに特化したツール」。キーボードとディスプレイを備えたデバイスでありながら、インターネットには接続できない。そのため、動画の視聴はおろかTwitterやFacebookを使うこともできない。LINEもだめ。メールすら使うことすらできない。表計算とも写真の表示とも無縁だ。徹頭徹尾文章を書くこと「だけ」にこだわりぬいた道具。それが
ポメラだ。
はっきり言って、
ポメラはPCの代替にはならない。使う人と用途を選ぶ。
ポメラでテキストファイル以外の資料を参照することはきないし、文書作成の合間にメールをチェックすることもできない。ディスプレイは今時珍しいモノクロ。大きさは7インチしかない。しかし、キーボードの大きさや配置、打ち心地はすばらしい。特段書くことがなくても、ただただ打っていたいような気にさせる出来だ。周囲の雑音には見向きもせず、ひたすら内なる思いを文字として受け止め文章を作成することだけをサポートする。
デジタルデトックスという言葉がある。デトックスとは「解毒」を意味する。毎日デジタルデバイスに囲まれて生活を送っている現代人に対して、しばらくそうした機器から離れてリフレッシュしてみては、という提案だ。確かに情報に振り回され、あわただしく生活を送る我々にとって、そういう時間は必要なのかもしれない。しかし、解毒の対象はデジタル機器ではない。インターネットだ。すべての「毒」はインターネットからもたらされる。なかには「薬」もあるわけだが、デトックスの対象はネット接続だ。
ポメラはインターネットとは無関係に機能する。インターネットデトックスにぴったりのツールだ。ユーザーとして一番向いているのは作家だろう。創作活動を一切妨げず、文章を紡ぐことだけをひたすら支援する。0から1を生み出す活動には大きな苦痛が伴う。誘惑も多い。ちょっと動画を見てみるか、ちょっとメールをチェックするか、ちょっとニュースを見てみるか……一切応えず沈黙を守るのみ。すがすがしい。
電子文具市場で、
キングジムはトップシェアメーカーだ。この1年も安定的に首位を走り続けている。一番の売れ筋はBoogie Board。手書きの電子メモともいえる製品だ。同社の電子文具で販売台数のおよそ8割を占める。一方
ポメラは1割前後。一見ニッチな製品に見える。しかし販売金額では逆転。
ポメラが4割から5割を占める。同社電子文具の稼ぎ頭は、実は
ポメラなのだ。新製品について、立石幸士 執行役員 開発本部副本部長兼電子文具開発部長は「文章を書くための機能だけをひたすら極めた自信作。初号機以来、ずっと支持いただいているのは、作家の方をはじめとする本当に文章を書く方々。ただ、PCやタブレットと併用し、議事録などを素早く入力する用途にも使ってほしい」と話す。また、今後の製品については「今回の新製品は、登場までやや時間がかかりすぎた。今後はもう少し発売の間隔を短くしていきたい」と意気込みを語った。(BCN・道越一郎)