6月の次の活動は9月で、その次はカタールW杯である。本大会へ向けた「テスト」のタイミングは、6月しかない。新戦力を呼ぶなら「いま」しかないわけだが、これまで招集してきたメンバーの「テスト」もしなければならない。フランクフルトでヨーロッパリーグ優勝を果たした鎌田大地、PSVで好パフォーマンスを維持した堂安律を、どのようにチームに組み込むのかだ。
最終予選突破を後押しした4−3−3のシステムで、彼らふたりをどのように起用するのか。インサイドハーフかウイングでの起用になるのだろうが、インサイドハーフを含めた中盤は遠藤航、田中碧、守田英正の3人を動かすのは現実的でない。彼ら3人だから機能していると言える。
そう考えると、鎌田の起用についてはシステム変更がベターだ。4−2−3−1のトップ下に置いたほうが、鎌田自身も特徴を発揮できる。
4−3−3の右ウイングに当てはまられる堂安は、4−2−3−1なら「3の右」が適正ポジションだ。このシステムでは、久保建英をトップ下や右サイドで使うこともできる。原口元気や柴崎岳も使いやすい。
FW陣のテストも必要だ。大迫勇也が不在の今回は、3トップ中央で古橋亨梧、浅野拓磨、上田綺世、前田大然をテストできる。とりわけ、スピードや背後へのランニングに特徴のある古橋、浅野、前田は、大迫の出場時とは攻め筋が変わってくる。彼らの強みをどのように引き出すのかを、攻撃陣の組合せとともに探っていくべきだ。
唯一の初選出となった伊藤洋輝は、最終ラインの序列を変える可能性を秘めている。20年夏にボランチからCBにコンバートされた彼は、ジュビロ磐田でもシュツットガルトでも3バックの左CBを定位置としてきたが、日本代表では4バックの左CBの候補になる。冨安健洋のポジションだ。
伊藤の起用に目途が立てば、冨安を右SBで起用することができる。あるいは、レフティーでロングレンジのキックに定評のある伊藤を、左SBに置くこともできるかもしれない。
同サイドのウイングが三笘薫の場合、左SBには攻撃参加よりも守備のリスク管理が求められる。最終予選で中山雄太が担った役割で、伊藤なら同じ仕事をこなすことができるだろう。
右SBで招集された菅原由勢も、複数ポジションでプレーできる。スピードに乗った攻撃参加が特徴の彼は、CBやウイングにも対応する。彼らふたりがいることで、最終ラインはもちろんその他のポジションの選択肢も増やすことができる。23人という限られた人数で戦うW杯では、彼らのようなポリバレントなタイプは貴重だ。
海外組については、今オフに所属先を変える選手がいるかもしれない。南野拓実の去就には国内外の多くの視線が集まっており、守田はサンタ・クララからスポルティングへのステップアップが噂されている。期限付き移籍先でプレー中の板倉滉や三苫が、新シーズンはどのクラブでプレーするのかも注目だ。さらにレアル・マドリーからレンタル中の久保は、マジョルカに留まるのか──。
オフにクラブを変える選手にも、クラブを変えない選手にも、プレータイムを確保できるのかという不確定要素がつきまとう。日本代表で主力と見なされる選手が、所属クラブで十分にプレーできないことも、森保一監督は想定しておかなければならない。
そうやって考えていくと、本大会までに確認しておくべき項目は決して少なくない。最終予選を戦ってきたグループをさらに磨き、競争力を高め、オプションを見定めることが、今回の6月シリーズのテーマになるはずだ。
※イビチャ・オシムさんとドラガン・ストイコビッチの対談に基づいた原稿の3回目は、次回更新分とさせていただきます。